名前から探す

ケフィアの効果とその作用

ここでは、さまざまな働きを持つケフィアの詳しい効果効能や、その作用のメカニズムなどをまとめました。ケフィアに関する研究論文や実験などのエビデンス、副作用、注意すべき相互作用なども掲載しています。

発酵乳の一種で、ロシアの南西部にあるコーカサス地方で誕生したとされるケフィア。動脈硬化の予防や免疫力向上、整腸作用といった効果が期待されています。

ケフィアとは

ケフィアとは、ロシア南西部に位置するコーカサス地方で生まれたアルコール発酵乳です。[※1]複数の乳酸菌と酵母の共生発酵によってつくられたもので、舌に感じるピリッとした刺激に加えてさわやかな酸味が特徴です。また、乳酸菌によってつくられる多糖成分により、とろっとした粘性を持ちあわせています。[※2]

世界三大長寿地域といわれているコーカサス地方で伝統的に食べられてきたことから、研究者がケフィアの機能性に注目。その後研究が進められ、ヨーロッパをはじめ世界各国で広く知れ渡っていきました。

ケフィアは、牛やヤギ、ヒツジの乳を加熱・冷却し、ケフィア種と呼ばれる種菌を加えて、まる1日20度の温度で放置したまま発酵させてつくります。その発酵で「ケフィアグレイン」と呼ばれる黄色いカリフラワーのような塊ができたら、そこに加熱、殺菌をした冷却乳を加えて2~3日発酵させたものがケフィアとなります。

日本では、ケフィアという呼び名以外に、発酵したあとの形から「ヨーグルトきのこ」という名でも親しまれており、腸内環境を改善する乳発酵食品として食べられています。

また、日本人は「乳糖不耐症」に当てはまる人が多いとされています。乳糖不耐症とは、乳製品を摂取した後、下痢や腹痛などの症状があらわれる病気で、乳製品などに含有する乳糖を上手に分解・吸収できずに引き起こされる症状です。しかし、ケフィアは、乳酸菌の働きによって乳糖が減少するため、乳糖不耐症の人でも摂取しやすいとされています。[※3]

ケフィアには栄養素が豊富に含まれています。主な栄養素は以下の通りです。[※4]

  • ビタミンB2
  • ビタミンB6
  • ビタミンB12
  • 葉酸
  • ビタミンA
  • 乳酸カルシウム

ケフィアの効果・効能

ケフィアには、以下のような効果・効能があるといわれています。[※5]

■動脈硬化の予防

コレステロール値を低下[※6]させる働きがあるため、動脈硬化の予防につながります。

■整腸作用

乳酸菌を含むケフィアにより腸内の善玉菌が増えて、悪玉菌の働きを抑制。その結果、腸内環境が改善されます。

■免疫力向上

ケフィアを摂取することで腸の環境が改善され、免疫力が高まります。

さらに、ケフィアに含まれるケフィランには、以下のような効果が期待できます。

  • 血圧の上昇を抑える
  • コレステロール値を下げる
  • 血糖値を下げる
  • 肝機能を高める

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ケフィアの効果・効能として注目すべき作用は、「整腸作用」です。[※5][※7]

もともと腸内には、善玉菌と悪玉菌が計100種類、さらに微生物が100兆個以上存在するといわれており、それぞれがバランスを取りあうことで腸内の環境が維持されています。

しかし、何らかの影響で悪玉菌が増殖してしまった場合、腸内菌のバランスが悪玉菌にかたより、腸内環境は悪化。下痢や便秘などの症状が起こります。

腸内環境を整えるためには、善玉菌を優勢な状態にして腸内菌のバランスを整える必要があります。そんな善玉菌の代表として挙げられるのが乳酸菌です。

ケフィアにはその善玉菌である乳酸菌が豊富に含まれています。摂取することで、ケフィアに含まれる乳酸菌がブドウ糖や乳糖を分解して乳酸を生成。酸に弱い悪玉菌は、生成された乳酸によって増殖が抑えられます。このような乳酸菌の作用により、腸内菌のバランスが改善され腸内環境が整えられるのです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ケフィアには、整腸作用に加え、免疫力を高める効果[※5]が期待されています。そのため、腸内環境を整えたい人や免疫力を高めたい人は積極的に摂取すると良いでしょう。

また、摂取することでコレステロール値を下げて動脈硬化を予防する働きも持っているため、動脈硬化の予防を行いたい人にもおすすめです。

ケフィアの摂取目安量・上限摂取量

ケフィアの1日の上限摂取量は定められていません。

しかし、健康に良いからといって食べ過ぎには注意しましょう。適度な量の摂取を心がけてください。

ケフィアのエビデンス(科学的根拠)

東京家政学院大学の海野 知紀氏や風間 麻衣子氏らによって、ケフィアを摂取した際のヒトの便通に及ぼす影響に関する研究が行われました。

健常な女子学生を対象に、ケフィアを摂取したときの便通に及ぼす影響を調査。その結果、ケフィアを摂取しない2週間の非摂取期に比べて、ケフィアを摂取した2週間の摂取期のほうが、排便日数と排便回数が増加する結果となりました。

このことから、ケフィアを摂取することで、便通を改善する可能性があると報告されたのです。[※8]

また、千葉大学大学院薬学研究科では、ケフィアに含まれるケフィランの抗アテローム発生効果の調査が実施されました。 高コレステロールな食事を摂取したウサギに対して、8週間にわたってケフィアを与えたところ、大動脈の動脈硬化指数をはじめ、過酸化脂質量や肝臓コレステロール量が減少。この研究結果から、ケフィアには高コレステロールや、動脈硬化の予防、抗炎症作用などがあることが示唆されました。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ケフィアは研究によってつくりだされた成分ではなく、コーカサス地方で自然に生まれたものです。ケフィア誕生の経緯は厳密にはわかっていませんが、コーカサス地方の山岳民族が飼育していた牛やヤギ、ヒツジのミルクが発酵して偶然生まれたという説が濃厚です。その歴史はとても古く、紀元一世紀頃から始まったといわれています。

コーカサス地方の山岳民族には、ヤギの皮でできた袋にミルクを入れて持ち歩き、発酵させて飲むという独特の文化がありました。ミルクが減ったら新しいミルクをつぎ足し、発酵させて飲むという流れの繰り返しです。この一連の流れから、ケフィアグレインが生まれたのではないかと考えられています。山岳民族は馬に乗って移動するため、袋のミルクはほどよくゆられ、自然とかき混ぜられていたのでしょう。

ケフィアに関する研究論文がはじめて発表されたのは1867年。発表を行ったのは旧ソ連の医学者・ツホーギン氏です。[※10] その後、旧ソ連の総連邦酪農科学研究所に所属していた、リパトフ教授によるケフィアの有用性の研究発表によって、コーカサス地方で重宝されてきたケフィアが、世界中に知れ渡るようになりました。パトフ教授の発表が行われたのは1978年、パリで開催された「第20回国際酪農会議」というイベントです。[※11]

「第20回国際酪農会議」以降、ケフィアはヨーグルト以外の発酵乳として瞬く間に注目を集めるようになり、各国で研究が進められるようになりました。4年後の「第21回 国際酪農会議」でもケフィアを使った臨床試験の成果が報告され、出席者には試飲が配られたそうです。

それから30年以上の月日が流れた現在もなお、酪農学者や専門家はケフィアの研究を進めています。

専門家の見解(監修者のコメント)

食品科学や応用分子細胞生物学、応用生物化学などを研究している九州大学大学院の照屋 輝一郎助教。照屋助教はケフィアの研究を行い、以下のように述べています。

「ケフィア成分は脂肪細胞におけるエネルギー代謝を促進することにより、抗メタボリック症候群効果を示すことも期待された」
(細胞制御工学教室ホームページ「抗メタボリックシンドローム効果を持つ機能性食品の開発 ー発酵乳ケフィアー」より引用)[※12]

整腸作用や、免疫力向上の働きを持つケフィアですが、ケフィアに含まれるさまざまな成分によって、抗メタボリック症候群効果が期待できるとの見解です。

現在もケフィアの成分や、効果に関する研究が進められています。さまざまな成分を豊富に含んでいるため、これからの研究結果によっては、ケフィアの成分を含む機能性食品の開発がさらに進むでしょう。

ケフィアを上手に摂取するには

腸内環境を整える働きや、免疫力を高める作用があるケフィアは、一般的なスーパーではなかなか手に入りません。しかし、通信販売などでケフィアの種菌を購入でき、自宅でつくることが可能です。

ここでは、簡単なケフィアのつくり方をご紹介します。

【用意するもの】

  • 牛乳
  • ケフィアの種菌

【つくり方】

  1. 1.使用する容器をレンジで温め消毒する
  2. 2.容器に牛乳とケフィアの種菌を入れ、よく混ぜる
  3. 3.温度が25度くらいの場所で24時間発酵させる
  4. 4.24時間経過しできあがったら冷蔵庫で冷やす

完成したケフィアは、一般的なヨーグルトと似た味になりますが、多少酸味を感じる場合があります。そんなときはジャムやはちみつ、グラニュー糖などをかけると食べやすくなります。

相乗効果を発揮する成分

腸内環境を改善するためには、善玉菌が過ごしやすい環境に整える必要があります。ケフィアの整腸作用を高めたい場合は、乳酸菌に加えてオリゴ糖や食物繊維を一緒に摂取すると良いでしょう。

ケフィアに含まれる乳酸菌は善玉菌で、消化・吸収を促進させたり、免疫力を高めたりしながら腸内環境を整えてくれます。[※13]

オリゴ糖や食物繊維は、善玉菌の栄養源となるので、摂取することで善玉菌が増殖。相乗効果によって便秘解消が期待できます。

リンゴやハチミツなどにもオリゴ糖が含まれているので、組み合わせて食べてみても良いでしょう。

ケフィアに副作用はあるのか

今のところ、ケフィアの重大な副作用は報告されていません。

ただし、自宅でケフィアをつくる際は、安全面を考えて衛生管理に十分に注意しましょう。雑菌が混入したり、温度管理が行き届いていなかったりすると、食中毒を引き起こすおそれがあります。つくるときはもちろん、管理するときにも雑菌が入らないように気をつけてください。[※14]

注意すべき相互作用

ケフィアは、免疫機能を抑制する免疫抑制薬との相互作用が懸念されています。[※6]

酵母菌や細菌などが含まれるケフィアですが、通常免疫システムは体内の酵母菌や、細菌を制御し感染を防止します。

免疫抑制の薬と併用した場合、酵母菌や細菌由来の感染症を引き起こすおそれがあります。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 日本ケフィア株式会社「ケフィアとは?」
  2. 辮野義己「ケフィール粒の乳酸菌叢」 (日本醸造協会誌=Journal of the Brewing Society of Japan 93(3))【PDF】
  3. 日本ケフィア協会「ケフィアQ&A」
  4. 日本ケフィア協会「ケフィアに含まれる栄養素」
  5. わかさの秘密「ケフィア」
  6. 「健康食品・サプリメント成[成分]すべて ナチュラルメディシン・データベース」 (一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター編 同院書院 2012年10月 p245「ケフィア」)
  7. 日本ケフィア協会「ケフィアの成分」
  8. 海野 知紀、風間 麻衣子 他「ケフィア摂取がヒトの便通に及ぼす影響」(東京家政学院大学紀要 第50号 2010 年)【PDF】
  9. Graduate School of Pharmaceutical Sciences,Chiba University「Kefiran reduces atherosclerosis in rabbits fed a high cholesterol diet.」J Atheroscler Thromb 2010 Sep 30;17(9):980-8. Epub 2010 Jun 11.【PDF】
  10. 日本ケフィア協会「ケフィアに関する研究発表」
  11. 日本ケフィア協会「ケフィアの語源と歴史」
  12. 細胞制御工学教室HP「2. 抗メタボリックシンドローム効果を持つ機能性食品の開発 ー発酵乳ケフィアー」
  13. 「あたらしい栄養事典」 (田中明、蒲池桂子 株式会社日本文芸社 2016年12月 p16-17)
  14. 一般社団法人日本サプリメント協会「ケフィア(ヨーグルトきのこ)」