ヒュウガトウキ(日本山人参)の効果とその作用

ヒュウガトウキ(日本山人参)は薬草として古くから用いられてきた植物です。2002年には根が医薬品として規定され、その効果が公的に認められています。ここではヒュウガトウキの効果・効能について紹介。作用のメカニズムや摂取量、間違えやすいイヌトウキとの違いなどの情報をまとめています。

ヒュウガトウキ(日本山人参)とはどのような植物か

ヒュウガトウキは日本に自生しているセリ科の植物です。別名日本山人参ともいわれ、その薬効から医薬品として用いられています。大分県や宮崎県に自生しています。野生のヒュウガトウキは絶滅危惧種に指定されている希少な植物です。

江戸時代には「神の草」と呼ばれるほどだったとの記録もあり、民間薬として珍重されていたようです。

ヒュウガトウキには滋養強壮や鎮静、肝機能向上などの効果を持つ成分が含まれていて、研究によって多くの効果が証明されています。

2002年にはヒュウガトウキの根が、厚生労働省に「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」として追加され、根を原材料にした健康食品の製造は禁止されました。ただ、葉や茎にも同じ有効成分を含有しているため、葉や茎をお茶やサプリメントなどにして流通しています。

■よく混同される「イヌトウキ」との違い

日本山人参と呼ばれる植物にはヒュウガトウキ以外にも「イヌトウキ」と呼ばれるセリ科植物があります。この2種類は形状が似ていることから、以前は明確に区別されていませんでした。

その後研究が進み、含有成分や自生している地域などの違いが判明、イヌトウキとヒュウガトウキは異なるものという結果が出ています。

おもな違いは以下の通りです。

  • イヌトウキ:中国・四国地方に分布。葉・茎・根はサプリメントや健康食品に配合されている。
  • ヒュウガトウキ:大分県や宮崎県に分布。根が医薬品として指定されており、葉や茎はサプリメントや健康食品に使われる。

成分の効果が認められているのはヒュウガトウキだけですが、ヒュウガトウキ含有をうたった健康食品やサプリメントの中にはイヌトウキを使用している製品もあります。製品情報にヒュウガトウキの産地などについて記載があるか、しっかり確認しておきましょう。

ヒュウガトウキの効果・効能

ヒュウガトウキには以下のような効果があるといわれています。

■免疫力を高める

がん細胞やウイルスを排除する免疫細胞を強化し、免疫力を高めるはたらきがあります。

■抗がん作用

がん細胞から出る毒素を抑えてくれるほか、免疫力向上によってがんを排除する効果が期待できます。

■生活習慣病の改善

インスリンのはたらきを助け、抗インスリン作用を持つホルモンの作用を阻害することで糖尿病を予防(改善)します。また、高血圧の原因となる酵素を阻害し、血圧を高めずに維持してくれます。

■動脈硬化や肌荒れの予防

過酸化脂質が体内に溜まるのを防ぎ、肌荒れや薄毛、動脈硬化などの過酸化脂質が原因で起こる症状を予防します。

■アレルギー症状の軽減

炎症を起こす物質の生成を抑え、皮膚炎や気管支ぜんそくなどの症状を軽減するのに役立ちます。

■血行促進

血管を収縮させるノルアドレナリンのはたらきを阻害し、血管を広げて末端まで血液を循環させる効果があります。そのため血行が促進され、肩こりや冷え性などを改善する効果が期待されます。

■滋養強壮

ビタミンやミネラル、アミノ酸が豊富に含まれていることから、細胞を活性化させ、生理機能を正常化してくれます。

■肝障害の改善

ヒュウガトウキに含まれるイソプテリキシンには肝細胞の脂肪代謝を上げる、肝障害の指標となる血中のトランスアミラーゼ(s-GOT、s-GPT)値を維持するなどの作用があります。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ヒュウガトウキには多くの効果・効能があり、それぞれ有効成分のはたらきによって異なるメカニズムで作用しています。

ヒュウガトウキに含まれる成分が、がん細胞を攻撃する免疫細胞(NK細胞)を活性化し、免疫力を高めることがわかっています。そのほか、がん細胞の一種であるトキソホルモンLが出す毒素のはたらきを抑えてくれます。[※4]

ヒュウガトウキが血糖値を改善する作用に関しては、膵臓(すいぞう)細胞のインスリン分泌を促進する、またはインスリンのはたらきを高めて血糖値を下げるメカニズムがあると考えられています。

インスリンがかかわっている肝機能や腎機能の数値も摂取前と摂取後でほとんど変化しないというデータも出ている[※5]ため、臓器に有害事象を起こすことなく、糖尿病の治療中でも安全に利用できる成分と考えられます。

ヒュウガトウキを摂取することで、炎症反応を引き起こすロイコトリエンB4・C4の作用が弱まります。そのため、気管支ぜんそくやアレルギー性皮膚炎、慢性関節リュウマチなどの炎症を軽減する効果が期待できます。[※4]

また、最近では免疫細胞が過剰反応して炎症を悪化させるのを防ぐ、クマリンやポリアセチレンなどの成分が含まれていることも実験からわかりました。[※6]

また、ヒュウガトウキの根から抽出した物質には、血管を収縮させるノルアドレナリンのはたらきを抑制する作用があります。そのため、血行促進の効果が期待でき、[※4][※5]血行不良で起こるさまざまな症状・疾患を改善することができるのです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ヒュウガトウキはさまざまな薬効を持つ成分で、抗炎症作用や血糖値の低下作用などが知られています。特に以下の症状が出ている人はヒュウガトウキのお茶やサプリメントを試してみるとよいでしょう。

  • 熱が出やすい
  • アレルギー体質
  • 血糖値が高め
  • 食欲がない

ヒュウガトウキの摂取目安量・上限摂取量

ヒュウガトウキは粉末として使われることが多い植物です。ヒュウガトウキ粉末の使用量は、1日あたり1,260mgと定められています。[※7]

目安量を超えて摂取した場合の安全性については確認されていないため、適量を守って摂取するようにしてください。

ヒュウガトウキのエビデンス(科学的根拠)

ヒュウガトウキには多様な効果があります。そのなかでも科学的根拠が提示されている、抗糖尿病作用についての研究をまとめました。

株式会社資生堂は、ヒュウガトウキの血糖値低下作用と血行促進の効果を明らかにしています。

資生堂が行った実験では、ヒュウガトウキを細かく砕いた根を2型(成人型)糖尿病患者と、血糖値が高い健康な人に1か月摂取させています。

その結果、糖尿病患者と健康な人のどちらも空腹時の血糖値が低下しました。

さらに実験後、健康な人の血流速度を調べたところ、ヒュウガトウキを摂取する前と比べて血流速度が上がり、血行が良くなったことがわかっています。[※5]

ヒュウガトウキの糖尿病改善にかかわる研究は、ほかの研究者も行っています。

近畿大学薬学総合研究所の二宮清文准教授は、マウスを使った実験で、ヒュウガトウキに含まれる成分が糖尿病治療に効果を調べました。

実験では生後10週間のマウスにヒュウガトウキを2週間摂取させ、その後20時間絶食させてからブドウ糖(1g/kg体重)を与えています。実験後に、ヒュウガトウキを摂取しなかったマウスとの違いを比較しました。

結果として、ヒュウガトウキを2週間与えたマウスでは、摂取しなかったマウスに比べて糖の分解・消費が抑えられることがわかりました。

このことから、ヒュウガトウキは糖尿病治療に役立つ効果が期待されています。[※8]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ヒュウガトウキが発見されたのは江戸時代。その時代の文献によると、1845年に本草学者の賀来飛霞(かくひか)によって見つけられたことがわかっています。その頃はヒュウガトウキではなく、高千穂地方の方言で「ウヅ」と呼ばれていました。

その後100年を経て、薬効に注目した人たちがイヌトウキ・ヒュウガトウキを含む山人参を栽培するように。1964年には尾鈴山で山人参が採れたという記録も残っています。

1971年にはウヅが山人参の新種として発表され、ヒュウガトウキと名付けられました。この頃からイヌトウキと明確に区別されるようになったそうです。

現在はヒュウガトウキの研究も進み、さまざまな薬効が発見されています。

しかし研究が進むにつれてヒュウガトウキの偽物も多く出回るようになったため、ヒュウガトウキを栽培している高千穂地方では「高千穂郷日向当帰研究会」を設立。本物のヒュウガトウキを提供する取り組みをしているそうです。

専門家の見解(監修者のコメント)

ヒュウガトウキに関してはいろいろな研究者が見解を述べており、その効果についても言及しています。

統合医療臨床情報センターの理事長を務める水野修一 医師は、自身の著書の中で以下のように述べています。

「九州には、ヒュウガトウキという薬用植物があります。この植物は、世界で宮崎県と大分県の山岳地帯にしか自生していません。よく調べてみると、これこそ不老長寿の妙薬であろうと考えられるほどの、すぐれた薬用植物なのです。」
(Google books「ヒュウガトウキのすべて: 東洋医学で学ぶ健康づくり」より引用)[※9]

ヒュウガトウキの効果は多くの研究によりわかってきており、抗がんや抗炎症など幅広い薬効があるとして注目されている成分のひとつ。根は医薬品認定されるほどの効果を持っていることから、葉や茎にも同様の効果が期待できると考えられているようです。

現在も研究が行われていることから、今後もヒュウガトウキから新たな作用が見つかるかもしれません。

ヒュウガトウキの利用方法

ヒュウガトウキは葉や茎、根まで利用できる植物です。根は医薬品に指定されているため食用としては使えませんが、葉や茎はお茶やサラダなどにして摂取できます。

生で食べようと思っても一般の市場には出回ることがほとんどないため、ヒュウガトウキを錠剤や粉末にしたサプリメントなどを活用すると良いでしょう。

以下に自宅でできるヒュウガトウキの活用方法を3つ紹介しているので、手に入った際は試してみてください。

■お茶

ヒュウガトウキの葉を水で洗い、陰干しして乾燥させます。乾燥したらフライパンで炒ったのちにお湯で煮出すと、お茶として楽しめます。ヒュウガトウキのお茶には抗ストレス・抗酸化作用があるといわれており、さまざまな病気の予防に役立ちます。少し苦味があるので、はちみつなどを混ぜると飲みやすくなります。

■食用

茎は皮をむいて刻み、葉は食べやすい大きさに切ります。切ったヒュウガトウキを生野菜に混ぜるだけで、簡単にサラダがつくれます。

■入浴

生か乾燥させた茎や葉をよもぎと一緒に煎じることで、入浴時に使える煎じ液ができます。この煎じ液を浴槽に対して約1L入れることで、ストレス解消や疲労回復の効果が期待できます。

相乗効果を発揮する成分

ヒュウガトウキはニシギキ科サラシア属の植物と併用することで、抗肥満効果を得られるという研究があります。

さらに、ヒュウガトウキとサラシア属植物を使った抗肥満薬は従来の合成医薬品よりも安全性が高く、十分な効果を得られることがわかっています。[※10]

ヒュウガトウキの副作用

ヒュウガトウキの葉や茎の摂取に関して、一般的には安全とされています。[※7]

ただし妊娠中・授乳期間中の使用については、安全性が確認されていません。どんな影響が出るかわからないため、なるべく摂取しないように注意してください。