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ホップの効果とその作用

ビールの原料として知られるホップはさまざまな効果や効能を持つ成分です。リラックス効果や食欲増進作用、生活習慣病の予防など、ホップの力が解明されています。
ここでは、ホップの効果・効能、作用などを摂取量や上手な摂取方法など、科学的根拠などとともに解説します。

ホップとはどのような成分か

ホップは、植物の一種です。アサ科の植物フルムス・ルプルス、和名では「カラハナソウ」と呼ばれます[※1]。ビールなどでよくホップという言葉を聞くかもしれませんが、ビールに含まれているのはこの植物の受粉前の毬花の部分になります。

ホップは、ビールの独特の匂いや苦みとして感じることができます。また、ビールの泡立ちをよくしたり、鮮やかな色合いを与えたり、さらには、雑菌が繁殖しないようにするなどの役割も果たしていて、ビールの製造にホップは欠かせない存在です。

ホップは薬用ハーブとしても人気があります。ハーブの世界では、ホップが安眠効果を持つことや排尿を促すといった効果が活用されています。

これはホップに優れた鎮静効果があり、中枢神経に働きかけて緊張などを和らげてくれるためだと考えられています。[※2]

ホップの効果・効能

ホップにはさまざまな効果や効能があります。たとえば、食欲増進の効果は、ビールなどからも想像できるでしょう。

ほかにも、生活習慣病や花粉症の予防やダイエットを促進する効果などの効能があると言われているのです。

また、女性特有の悩みにも効果的と考えられています。女性はホルモンバランスの関係や月経によってイライラや生理痛、不眠などに悩まされる人も多いですが、ホップを取り入れることで、生理痛の緩和や不安、緊張をやわらげることが可能です。

さらに、ホップ自体はリラックスの効能があるハーブとしても活用されています。ストレスをやわらげたり、不眠を改善したり、神経が原因で起きる病気などを防ぐ役割があります。

中世のヨーロッパでは育毛効果や鎮静効果を得る目的でポップが使われていた、という記述も残っています。さらにインドのアーユルベーダ、中国の古くから伝わる医学では不眠治療に使われるなど、古くから広い地域で活用されてきた植物なのです。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ホップが体にさまざまな効果・効能をもたらす理由は、ホップに含まれる有効成分が多岐に渡るからだと考えられています。例えばホップにはフラボノイド、フムロン、イソフムロン、ルプロン、アスバラギン、エストロゲン物質などが含まれているのです。

不眠を改善する効果のメカニズムとしてはこのフムロンという成分が中枢神経に働きかけて、緊張を緩和するからだと考えられています。

またビールの苦味成分であるイソフムロンには抗酸化作用があり、ホルモンバランスを整えたり、自律神経を整えたり、血行を促進する作用が報告されています。[※11]

ホップといえばビールを想像し、食欲増進効果を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、これもホップの苦味が胃を刺激することや、少し甘い香りが神経を和らげることなど、複合的な働きによるものだと考えられています。

胃や嗅覚を刺激することで、消化をよくし、ストレスをやわらげ食欲を増進してくれるのです。また、ビールを飲むとトイレが近くなるという人も多いと思いますが、これはポップに含まれるフムロンに利尿効果が認められていることとも関係しています。[※2]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ホップはリラックス効果が期待される成分です。不安、不眠、ストレス、生理痛、更年期障害のイライラなども緊張した状態で症状が悪化しますので、そのような時にハーブティーとしてホップのお茶をいただくと緊張が緩むのを助けてくれるのでしょう。

アルコール好き、ビール好きの人は、同じような効果効効能をビールに期待するかもしれませんが、ビールにはアルコールが入っています。アルコールは眠りにつくまでの時間を短縮させる作用がありますが、睡眠の後半を障害することが有名です。[※12]

また少量のアルコール摂取はリラックスに有効ですが、過剰になると心拍数や呼吸数は増加してしまいます。つまりアルコールによってホップを摂取する場合、適量であればアルコールとの相乗効果が期待できますが、飲みすぎるとホップの効能が相殺されてしまうということになります。

リラックスや不眠といった問題のためにホップを利用したいとかんが得るのであれば、お茶からの摂取の方が望ましいでしょう。

ホップの摂取目安量・上限摂取量

ホップは摂取目安や上限目安が決まっているというわけではありません。しかしながら、うつ症状のある方が悩む方は摂取量に注意が必要です。ホップには鎮静作用があるため、多量に服用しすぎないようにしましょう。[※2]

また、ホップはビールに入っていることでよく知られていますが、ビールのカロリーは決して低いとは言えません。ホップを多く摂取したいからと言ってビールを過剰に飲むことは、カロリーの点でも、アルコール摂取の点でも、体によいとは言えません。

ホップのエビデンス(科学的根拠)

ホップは、1000年以上も昔から栽培されているため、研究結果や科学的根拠は多くあります。特にビールメーカーによる研究成果は注目しておきたいところでしょう。味や風味の研究はもちろんのこと、ホップの効果や効能についても多くの結果が明らかになっているためです。

大手ビールメーカーのキリンでは、ホップ由来の成分に、血糖値上昇を抑えたり、脂質や悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増加させたりする役割があることを発見しています。[※3]

さらに、キリンが学習院大学と共同開発したホップの研究では、ホップから生成されるイソα酸には、アルツハイマー病の改善に役立つ可能性があることを明らかにしていまし。イソα酸に海馬の働きを改善する働きがあることが分かり、認知機能の低下に対しても効果的に作用することが確認されました。[※4]

ただし、これらはビールの効果ではないので誤解のないようにしましょう。

また、効果や効能、作用としてよく知られているものも、多く裏付けが出ています。たとえば、不眠症患者にホップの錠剤を28日間摂取させる研究では、2週間ほどで改善が見られるようになったことや[※5]、更年期障害の調査において、閉経後の女性に12週間ホップを摂取させたところ、改善が見られたなど[※6]、実験によるよい結果も多く見られます。

ホップは単に香りや苦みなどを楽しめるだけでなく、健康にもよい効果が期待できることが明らかになっています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ホップはビールの定番素材として多く知られていますが、もともとは西アジアの原産とされ、8世紀半ばに本格的に栽培がはじめられたのではないかと言われています。ただし、当初からビールには使われていたわけではなく、栽培されていただけだと言われています。[※7]

その後9世紀にホップがビールに取り入れられ、12世紀初頭には、ホップの特性に注目されるようになりました。15世紀にはホップの入ったビールが多く見られるようになり、研究、開発が進むようになりました。

研究は今でも続けられており、たとえばビールメーカーのサッポロでは新種のホップの開発も行われています。2008~2014年にかけて3種のホップを作ることに成功しています[※8]

キリンでは100年ほど前から日本産のホップの開発に努め、農家との共同開発に力を入れています[※9]。ビールメーカーを中心に今後も多くのホップの開発、研究が進められていくことでしょう。

専門家の見解(監修者のコメント)

ホップにまつわる研究はビールメーカーが多いですが、ビールメーカーにかかわらず、多くの研究者が注目しています。農学や医学などの観点からも、ホップは興味深い植物であると言えるでしょう。

たとえば、サプリメントアドバイザーでもある南恵子氏は、ホップのことを次のように述べています。

「ビールは大麦から作られるため、古くから液体のパンと呼ばれ、炭水化物はもちろん、様々なビタミン、ミネラルが、他の酒類と比べると多く含まれています。

また淡色のビールよりも、黒色(焙煎した麦を使用)の方が、ビタミンB群やミネラルの量が若干ですが多く含まれています。

古代エジプトでも、ピラミッド建設に働く人のための強壮剤として飲まれたり、皮膚病の塗り薬などにも活用されたりしており、ヨーロッパには回復期の病人の食事向けにつくられたビールもあり、消化吸収のよい栄養源とされていたそうです。」(NR・サプリメントアドバイザー 南恵子 「女性にやさしいビールの効用」より引用)[※10]

ホップを含むビールは昔から様々な効果が期待され、親しまれてきたことがよく分かります。特にビールは、日本を含む世界中で親しまれており、リラックスや味わいの魅力以外にも、たくさんの効果が期待できるということでしょう。

取りすぎは禁物ですが、適量の摂取は健康にもよい効果をもたらしてくれるでしょう。

ホップを多く含む食べ物

ホップを含む代表的な食べ物としてよく知られているのは、やはりビールでしょう。ビールメーカーではこだわりのホップを多く作ったり、研究したりしています。

またアルコールが飲めない人、アルコール抜きでホップを楽しみたい人はホップティーがオススメです。ホップティーはハーブティー専門店やお茶の専門店などで取り扱いがあります。ちなみにハーブティーで飲んでビールに近い苦味と香りがあります。

相乗効果を発揮する成分

ホップと相乗効果を持つ成分は、今のところ明らかになっていません。ただしハーブティーとしては飲みやすくするためにレモン、はちみつ、オリゴ糖、紅茶とブレンドするのがおすすめとされます。

ホップに副作用はあるのか

ホップの接種による副作用の心配は少なく、今のところ報告もされていません。しかし、強い鎮静作用があるため、うつ症状を持つ人やうつ病の既往歴がある人は使用を避けたほうがよいとされます。

また、乳がんや子宮内膜症といったホルモン感受性疾患がある人も摂取には注意が必要とされています。