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ヒスチジンの効果とその作用

ヒスチジンは子どもの成長には欠かせない必須アミノ酸で、大人でも皮膚の健康や、脳の健康などに役立っていることがわかっています。

ヒスチジンとはどのような効果効能があって、どのような食品に含まれているのか確認してみましょう。子どもから大人まで必要なアミノ酸ですので、不足することで起きる症状も紹介します。

ヒスチジンとはどのような成分か

ヒスチジンはアミノ酸の一種です。ヒスチジンはギリシャ語で組織という意味を持っています。成人は体内で合成することができますが、子どもは合成できないため、発育期の子どもには準必須アミノ酸とされてきました。

しかし、大人にとってもヒスチジンが不足すれば体内の窒素バランスが乱れることが明らかになり、大人でも必須アミノ酸として指定されました。[※1]

ヒスチジンは、特に子どもの成長には欠かせないアミノ酸です。しかし、発育期は体内で合成できないため、食事から摂取する必要がある栄養素です。[※1]

大人になると体内で合成できるようになる、唯一の必須アミノ酸であり、体内の様々な箇所で健康を保つ作用を発揮します。

ヒスチジンの効果・効能

ヒスチジンには、摂取・合成により体内に入ることで次のような効果が期待できます。

■発育期の成長

ヒスチジンは子どもの発育に必要で、不足すると皮膚へ湿疹などの影響が出ます。また、発育期にはヒスチジンの合成能力がまだ低いうえに、代謝が活発なため、食事から適切なヒスチジン摂取をしなければなりません。

さらに、ヒスチジンはヘモグロビンの合成にも関わっており、不足すると貧血にかかりやすくなります。[※2]

■慢性関節炎の痛みを軽減

ヒスチジンはヒスタミンの合成に必要なアミノ酸です。ヒスタミンは外部からの刺激や薬によって発生し、血管を拡張させる働きがあります。血管内の成分を患部に届け、慢性関節炎の痛み軽減効果が期待できるでしょう。[※1]

■食欲を抑える効果

ヒスタミンには血管拡張だけでなく食欲抑制効果も期待できます。食べ物をよく噛んで食べることでヒスタミンが合成され、脳に作用し満腹中枢を刺激する働きがあるためです。

■脂肪燃焼効果

そのため、ヒスチジンには、ダイエットの補助としても注目が集まりサプリメントにも使用されています。ただし、直接摂取するとアレルギーを引き起こす可能性が高く、食事からヒスチジンという形で摂取して、脳内でヒスタミンに変わる必要があります。[※3]

■脳の健康を保つ

ヒスチジンには脳虚血疾患の影響で脳細胞が死滅するのを抑制する働きが確認されています。[※1]

■精神の安定にも影響

さらにヒスチジンは、精神の安定にも関係していることがわかっています。ヒスチジンは脳内の神経伝達物質として働いており、十分に摂取しているとヒスタミン神経系が正常に働きます。その結果、不安行動の改善が期待できるとされます。[※4]

■抗疲労作用

ヒスチジンには、「頭が冴えない」、「注意力が低下する」といった脳の疲労や頭の疲れを緩和する作用があることが報告されています。[※10]

どのような作用があるのか

ヒスチジンは人の体を構成するアミノ酸の一種で、細胞内のたんぱく質代謝に使われます。ヒスチジンのすべてがたんぱく質代謝に使われるのではないので、食品を通してヒスチジンが過剰摂取されることもありません。実際に動物にヒスチジンを過剰に投与しても、体内に蓄積されることがなかったという報告もあります。

ヒスチジンは、小腸粘膜から吸収され、体を構成する成分へと変わっていく性質を持ち、生育期では体内で作用するL-ヒスチジンが合成できないため、この経路で摂取しなければなりません。[※5]

また、ヒスチジンから変換される、ヒスタミンはアレルギー症状を起こす原因として知られており、花粉症の症状もヒスタミンの影響かによるものと言われています。

とはいえ、ヒスタミンによるアレルギー症状は人体の防御反応のひとつで、摂取抑制によるアレルギー症状の緩和は、医師によるものや薬剤投与でなければ、その他の健康を害するため推奨されません。

ヒスタミン自体は食事から摂取しても意味がなく、ヒスチジンとして摂取して、脳の手前にある血液脳関門を通過しなければ有効な働きをしないことも報告されています。[※3]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ヒスチジンは、必須アミノ酸のひとつであるため、すべての人が摂取することが望ましいです。なかでも、成長に関する働きを持つうえに、体内合成ができない点から子どもには積極的な摂取が必要です。

子どもの必須アミノ酸の平均必要量は、2007年のWHO、FAO、UNUにより示されています。少なくとも生育期となる17歳までは小児の必要量を目安に、摂取を心がけてください。ヒスチジンの必要量は年齢が上がるに伴い、体内で合成できることも関係して減少していきます。

大人の場合は、皮膚疾患への作用があることから、皮膚に関する悩みのある方には摂取が推奨されます。また、ヒスチジンが不足していると窒素出納がマイナスとなり皮膚疾患が発生してしまうこともわかっており、問題がない方であってもある程度の摂取量は確保しておきべきでしょう。[※6]

ヒスチジンはヘモグロビンに多く含まれており、貧血症状がある方にも有用な成分です。[※2]他にも不安症状やダイエットに対しても一定の効果が認められており、多様な人におすすめの成分と言えそうです。

ヒスチジンの摂取目安量・上限摂取量

ヒスチジンの平均必要量は、小児と大人とで大きく異なります。

たんぱく質必要量(g/kg体重/日)に対するアミノ酸の必要量(mg/kg体重/日)は、0.5歳が22mg、1~2歳は15mg、3~10歳は12mg、11~14歳は12mg、15~17歳は11mgです。

18歳以上の子どもや成人の場合は、10mgのヒスチジンが必要とされます。

また、窒素出納の関係から活動量が多く食べる量が多ければ、十分なたんぱく質は得ることができますが、運動不足の方や高齢者などは、食事に注意する必要があるでしょう。他にもストレスや喫煙、飲酒などでも必要なたんぱく質量が変わるため、個人におけるたんぱく質摂取量にも注意が必要です。[※6]

ヒスチジンのエビデンス(科学的根拠)

ヒスチジンは動物には必要なアミノ酸であることから、L-ヒスチジンという名前で動物用医薬品にも使われています。また、食品添加物として、L-ヒスチジンやL-ヒスチジン塩酸塩の使用も認められています。いずれも、過剰摂取による健康影響の報告はないため、多くの場で利用されている成分です。

さらに育児用調整乳等にもL-ヒスチジンは添加され、人に対する医薬品ではアミノ酸輸液、経口、経腸栄養剤としての活用もされています。[※5]

ヒスタミンの精神に対する安定性作用は、低ヒスタミン食を与えたマウスで調査があります。この結果では、神経ヒスタミン系の活動が下がり、不安行動の増加となることがわかっています。[※4]

ヒスタミンの働きは食欲を抑制する働きが確認されています。ヒスタミンはヒスタミンH1やH3受容体を通し、満腹中枢に働きかける物質です。肥満ラットでは視床下部のヒスタミン含有量が低下しており、肥満ラットに胎児ラットの視床下部を移植すると改善が認められます。さらに、ヒスタミンがラットの学習機能や記憶再生に関与していることも実験によりわかっているなど、多分野で研究が進んだ成分です。[※7]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ヒスチジンや返還後のヒスタミンは、脳内の神経伝達物質として機能していることが知られていました。しかし、アレルギーや胃潰瘍を引き起こす物質として、あまり注目を集めてこなかった歴史を持ちます。

ヒスタミンの原料となるヒスチジンの摂取量は減らすべきだと推奨された時期もありましたが、近年ではヒスタミンは脳内によい働きをもたらすことが知られるようになりました。

近年の研究では、必須アミノ酸として認められたことからも、人体の働きに大きな影響を持つことがわかってきています。この過程で、成長に関連することが認められていたため、子どもにヒスチジンを摂取することが望ましいと「準必須アミノ酸」とされるようになりました。

しかし、その後ヒスチジンが不足すると成人で窒素出納が低下し皮膚疾患がみられることから[※6]、1985年より必須アミノ酸となります。

専門家の見解(監修者のコメント)

多用な効果・作用を持ち、働きも多岐にわたるヒスチジンですが、なかでも安定性の研究についても東北大学医学系研究の教授である谷内氏より報告が行われています。

「マウスに与えるヒスチジン量を減少させることで、神経ヒスタミン系の活動が低下し、不安様行動の増加につながることが明らかとなりました。今後、ヒトにおけるヒスチジン摂取の重要性が明らかとなれば、新たな創薬やサプリメント開発につながることが期待されます。(東北大学大学院医学系研究科機能薬理学分野 教授 谷内 一彦「不安の改善には食事による十分なヒスチジン摂取が有効」より引用)」[※4]

ヒスチジンは子どもの成長に関わる必須アミノ酸であるだけでなく、ヒスタミンの原料にもなり、心の不安を取り除くことが実験でわかっているようです。アレルギーを抑制するために抗ヒスタミン剤が使われることがありますが、ヒスタミンの発生は必ずしも人体に悪い影響を与えるだけではないと言えるでしょう。

ヒスチジンを多く含む食べ物

ヒスチジンはカツオやマグロなどの魚類に多く含まれています。他にも牛肉や鶏肉、ハム、チーズなどにもヒスチジンが多く含まれる食品です。[※1]

特に食品でヒスチジンが多く含まれているのは、マグロ、カツオ、サバ、サンマ、ブリなどの青魚や、鶏のむね肉や豚の赤身肉、乳製品、大豆食品となっています。

魚のなかでもカツオは100gあたり2,500mgもヒスチジンが含まれており、サバにも100gあたり1,250mg含まれているのが特徴です。[※3]

相乗効果を発揮する成分

アミノ酸は単体で働くのではなく、20種類のアミノ酸をバランスよく摂取することで、効率良くアミノ酸代謝が起きます。そのため、体内で合成できない必須アミノ酸に関しては、健康を保つために積極的に摂取することが望ましいです。

体で使われるアミノ酸には、食事から摂取したたんぱく質と、体の組織が分解してできたアミノ酸があります。これらが混ざりあったものがアミノ酸プールです。体のたんぱく質は常に合成と分解を繰り返します。

食品中に含まれるアミノ酸は、必須アミノ酸が含まれているものが有用で、動物性たんぱく質や大豆は必須アミノ酸を多く含むため、アミノ酸補給に欠かせません。

ただし、大豆以外の植物性たんぱく質は必須アミノ酸の量が少ないもののその他の健康に関する効果を持つ成分が含まれていることも多いため、動物性と植物性の両方をバランスよく摂取することが必要です。[※8]

ヒスチジンに副作用はあるのか

ヒスチジン自体は安全性が示されていますが、[※1]ヒスチジンが多く含まれる魚類を多く摂取すると、ヒスタミンが多くなりヒスタミン食中毒になる危険性が指摘されます。

ヒスタミン食中毒は、蕁麻疹、血圧低下、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛などの症状が出る食中毒です。摂取直後から1時間くらいでこれらの症状が出るため、もし不調を感じた場合は速やかに医師の診察を受けましょう。[※9]

また、葉酸が不足している人がヒスチジンを摂取した場合、ホルムイミノグルタミン酸蓄積の恐れがあるため注意が必要です。ホルムイミノグルタミン酸は、ヒスチジンの代謝中間体となっています。[※1]

生まれつきヒスチジンアンモニアリアーゼが欠損した場合、ヒスチジン血症になります。1万人に1人の割合で発生しており、血中ヒスチジンが上昇すると知能障害や言語障害を招きます。