グリコーゲンの効果とその作用

グリコーゲンは、複数のブドウ糖が結合した多糖類で、通称動物性デンプンと呼ばれる成分です。集中力向上や疲労回復などの効果があることから、体を鍛えている方やアスリートに注目されています。

ここでは、グリコーゲンの詳しい効果・効能や作用のメカニズム、専門家の見解、摂取目安量などを解説していきます。

グリコーゲンとはどのような成分か

グリコーゲンとは、多数のブドウ糖が複雑に結合した多糖類の成分です。別名動物性デンプンとも呼ばれています。[※1]牡蠣やホタテ、動物の肝などに豊富に含まれており、グリコーゲンそのものを摂取することが可能です。

ほかにもグリコーゲンのもととなるブドウ糖は、米やパン、イモ、麺などの炭水化物に多く含まれています。炭水化物を摂取することでブドウ糖(グルコース)が吸収され、エネルギー源になります。余ったグルコースがグリコーゲンとして貯蔵されます。

取り入れたグリコーゲンは、主に肝臓と筋肉に貯蔵されます。肝臓に蓄えられるグリコーゲンの量は、肝臓の重さの10%ほど。筋肉に貯蔵されるグリコーゲン量は筋肉の1%ほどと言われています。

ただし筋肉は全身あるため、全体量で比較すると、肝臓に蓄えたグリコーゲンの約2倍の量を貯蔵することが可能です。[※2]

グリコーゲンの効果・効能

グリコーゲンには、以下のような効果・効能があると言われています。[※1]

■疲労回復

人は糖質が不足すると疲れやすくなり、疲労した状態が続くと日常生活にまで支障をきたしてしまいます。糖質であるグリコーゲンを体内へ取り入れることで、溜まっていた疲労を回復して、疲れにくい体を維持することができます。

さらに、グリコーゲンは必要に応じてブドウ糖に再度分解されるのが特徴です。分解される時に熱が発生しますが、その熱が体温を上昇させる効果を発揮してくれます。

■血糖値の調節

グリコーゲンには、血糖値を一定に保つ作用があります。血糖値が下がってしまうと、イライラや不安感などの精神面だけでなく、動悸、手足の震え、冷や汗などの症状を引き起こすことも。

体内で蓄えられたグリコーゲンがブドウ糖に分解されて血液中に送り出されることで、血糖値を調節してくれます。その働きによって血液中の糖の減少を抑え、血糖値低下時に起こりやすい症状の発生を防いでくれるのです。

■集中力を高める

脳にとって唯一のエネルギー源とされているのがブドウ糖です。そのブドウ糖の供給源であるグリコーゲンは、脳の働きを安定化させて記憶力や集中力を高める効果があります。

糖質が足りなくなると脳はエネルギーを失い、集中力や記憶力が低下してしまいます。食事などによってブドウ糖を補給することで、脳の働きを保ってくれているのです。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

米や麦などの炭水化物に含まれる糖質は、消化によってブドウ糖(グルコース)に分解され、小腸粘膜から吸収されたのちに肝臓へ運ばれます。

その後血液とともに運ばれたブドウ糖は、体の各組織でエネルギーの源として使われるのです。その際に余ったブドウ糖はグリコーゲンとなり、筋肉や肝臓に蓄えられます。[※3]

筋肉に貯蔵されたグリコーゲンは「筋グリコーゲン」と呼ばれており、運動する際のエネルギー源として使用されます。体内にあるグリコーゲンの約8割が筋グリコーゲンとして筋肉に貯蔵されることから、運動を行う際の重要な役割を担っています。

ただし、筋肉に貯蔵できるグリコーゲンは1,000kcalほど。貯蔵できる量が少なく、すぐにエネルギーとして使用され早く消費してしまうため、トレーニング時や運動時にこまめにエネルギー補給する必要があります。

エネルギーが補給できない場合は、たんぱく質をエネルギー源として消費するため、運動するたびに筋肉が削られていくことになります。

一方肝臓に蓄えられるグリコーゲンは「肝グリコーゲン」と言われており、主に脳へのエネルギー供給として使用。ほかに血糖値を維持する働きも担っています。

運動によりたくさん筋肉を使う場合は筋グリコーゲン、脳にエネルギーや栄養を送るために使用されるのが肝グリコーゲンと覚えておくと分かりやすいでしょう。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

グリコーゲンには、血糖値を調節する働きや疲労回復、集中力を高める効果があるとされています。そのため、溜まった疲れを解消したい方や脳の働きを活性化させて集中力や記憶力を高めたいという方は、積極的に摂取すると良いでしょう。[※1]

また、普段から体を鍛えている方も摂取したほうがよい成分。トレーニング時にパワーを発揮するには、エネルギーを満たしておくことが必要です。糖質を摂取することで肝臓や筋肉でグリコーゲンに変化。エネルギー源として蓄えられたのち、必要に応じて消費されていきます。

運動強度が高ければ高いほど、体の中で使われる糖質の比率がアップ。筋肉を作る材料として必要なたんぱく質も合わせて摂取することで、よりトレーニング効果を上げることができます。[※4]

グリコーゲンの摂取目安量・上限摂取量

グリコーゲンの一日の摂取目安量について、厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では設定されていません。ただし、グリコーゲンのもとである炭水化物の目標量は、男女ともに全年齢においてエネルギー必要量の50~65%とされています。[※5]

グリコーゲンのもととなる炭水化物は糖質です。過剰摂取してしまうと、エネルギーとして消費しきれずに中性脂肪となり、体内に蓄積されて肥満のもとになります。[※6]

中性脂肪が増えると生活習慣病のもとになることもあるため、注意が必要です。炭水化物は適度な量を摂取するようにしましょう。

グリコーゲンのエビデンス(科学的根拠)

エネルギー源として筋肉や肝臓に蓄えられるグリコーゲン。アスリートからも注目を集めており、グリコーゲンローディングという体内のグリコーゲン量を増やす食事法が提唱されています。なぜなら、グリコーゲンの量はパフォーマンスに影響するからです。

筋肉内のグリコーゲンの貯蔵量が多いほど、長い時間動けるようになり、スピードも落ちにくくなります。[※7]アスリートにとって高いパフォーマンスを保ったまま動けるのは大きな武器になるため、グリコーゲンローディングが提唱されているのです。

健康的な体作りといえば、たんぱく質が主役と思われがちですが、エネルギーとなるグリコーゲンも重要。運動後は、糖分も摂ることが望ましいとされています。

特に激しい運動の後は、急速なグリコーゲンの補給が必要です。グリコーゲン入りのドリンクや炭水化物などで早めに補給してあげましょう。[※8]運動直後にたんぱく質や糖質を素早く補給することで、疲労回復の速度も早まります。

研究のきっかけ(歴史・背景)

グリコーゲンが発見されたのは1856年のフランスでした。生理学者のクロード・ベルナールが、動物の肝臓に多糖類が蓄えられていることを見つけたのが始まりです。

肝臓に多くの多糖類があるということは、肝臓で糖が作られていると結論づけられました。それまで、動物は糖を体内で作ることができないと言われていたため、これは大きな発見となったのです。[※1]

日本でのグリコーゲンは、江崎グリコ株式会社が販売を行っているキャラメル菓子「グリコ」と一緒に語られることが多い成分です。

キャラメルの「グリコ」には牡蠣から抽出したグリコーゲンが含まれており、その開発を行ったのが江崎グリコ株式会社の創始者です。

牡蠣の煮汁を調査したところ、グリコーゲンをはじめ鉄分やカルシウムなどが豊富に含まれていることを発見。その当時チフスにかかった息子に煮汁に砂糖をプラスしたものを与え続けたところ、みるみる元気になっていったことから、「グリコ」の誕生へと結びついたとされています。

当時の子どもは栄養不足と言われていましたので、子ども達の健康を守りたいと、グリコーゲンをお菓子のキャラメルに混ぜて販売を開始。今でも変わらず幅広い世代から愛される栄養菓子には、こんなルーツがあったのです。[※9]

専門家の見解(監修者のコメント)

日本でも珍しい、グリコーゲンの研究に特化している食品メーカーの江崎グリコ株式会社。調査・研究を行っている中で、グリコーゲンの新たな役割を発見したそうです。

「グリコーゲンは肝臓や骨格筋に多く貯蔵されているのですが、皮膚にもグリコーゲンが存在しており、加齢と共に少なくなっていくんです。」(引用元:グリコーゲンを極めたグリコの本気度がすごい!)[※9]

と、江崎グリコ健康科学研究所の研究員、古屋敷隆さんは述べています。調べを進めた結果、グリコーゲンには保湿と紫外線ダメージから肌を守る働きがあることが分かったのです。

そこで、グリコでは独自開発した植物性グリコーゲンの「バイオグリコーゲン」を使った化粧品を開発。ゆくゆくは、食品にもバイオグリコーゲンを使用して、より純度の高いグリコーゲンを届けたいと考えているとのことです。

グリコーゲンを多く含む食べ物

グリコーゲンは食品から摂取することができます。グリコーゲンを豊富に含んでいる食品は以下の通りです。

  • 牡蠣
  • ホタテ
  • しじみ
  • レバー
  • 馬肉

牡蠣やホタテ、しじみなどはグリコーゲンを直接摂取でき効率よく体内に取り入れることができますが、エネルギー源の材料となる糖質(炭水化物)もしっかりと摂取することが大事です。

特に激しい運動や筋トレを行う人は、エネルギー源になる糖質と筋肉の材料になるたんぱく質を合わせて摂るようにしましょう。[※4]

一緒に摂るべき成分

グリコーゲンを含む糖質を効率よくエネルギーに変換するには、ビタミンB1を摂取する必要があります。グリコーゲンのもととなる炭水化物(主食)だけではなく、ビタミンB1を含む食材も一緒に食べるようにしましょう。ビタミンB1はウナギや豚肉、玄米、穀類の胚芽、柑橘類などに多く含まれています。

普段から運動や筋トレを行っている人がグリコーゲンと一緒に摂るべき成分はたんぱく質です。運動後にグリコーゲンとたんぱく質の両方の成分を摂取することで、体の回復をサポートすることができます。

運動後の筋肉は傷付いた状態です。エネルギーも使ってしまっていますから、車でいえばあちこちぶつかってガソリンも切れてしまっているようなもの。

そこで、筋肉のもとになるたんぱく質とエネルギーであるグリコーゲンが役立ちます。運動直後に両者を一緒に摂ることで、早い回復が望めます。

グリコーゲンに副作用はあるのか

グリコーゲンそのものに副作用は確認されていません。しかし、グリコーゲンの筋肉貯蔵量を増やすグリコーゲンローディングは、段階を踏まずに行うと、心電図異常や胸痛、代謝の急激な変化が起こる恐れがあります。

急に本格的なグリコーゲンローディングを開始するのではなく、自分に合った方法なのか1~2回試しておくのが良いでしょう。[※10]