名前から探す

コエンザイムQ10の効果とその作用

サプリメントの成分として知名度の高いコエンザイムQ10。エネルギーの代謝を助ける重要な補酵素として、ヒトのすべての細胞のミトコンドリア内に存在しています。加齢やストレスで減少すると、疲労や老化などの不調の原因になると考えられ、より吸収率のよいサプリメントも開発されています。

こすぎレディースクリニック 椎名 邦彦先生監修

コエンザイムQ10とはどのような成分か

コエンザイムQ10は、ヒトのすべての細胞のミトコンドリアに存在している補酵素です。ビタミンと似た働きをするため「ビタミンQ」や、学名の「ユキビノン」の名で呼ばれることもあります。

体内では細胞のエネルギー源であるATP(アデノシン3リン酸)を作るのに不可欠なで、疲れにくい健康なからだを維持する大切な役割を担います。

コエンザイムQ10は体内で合成されますが、20歳をピークにその生産量は減少していきます。加齢以外にも、過度のストレス、偏った食生活、運動不足などの悪い生活習慣もコエンザイムQ10の減少を加速させます。[※1]

コエンザイムQ10には、酸化型(ユビキノン)と還元型(ユビキノール)の2種類の化学構造があり、体内に存在するコエンザイムQ10のほとんどは還元型の構造で存在します。

そのため酸化型の姿でコエンザイムQ10を摂取した場合は、体内で酸化型から還元型に変換する作業が行われます。体内で酸化型から還元型に変換する還元能力についても、同じく加齢やストレスによって低下することが指摘されています。

以前までコエンザイムQ10のサプリメントと言えば、ほとんどが酸化型でした。しかし、日本の企業である(株)カネカが世界で初めて還元型のサプリメントの開発に成功。[※2]

還元型のコエンザイムQ10は、加齢により酸化型から還元型に体内で変換する能力が低下している、中高年から高齢者の健康維持に役立つことが期待されています。

コエンザイムQ10の効果・効能

コエンザイムQ10には以下の効果が期待されています。

■疲労を回復する効果

コエンザイムQ10はエネルギーを作るうえで重要な役割を担っているため、疲労回復の効果が期待されています。
エネルギーが不足すると、臓器やさまざまな組織の機能の低下につながり、疲労や病気の原因にもなってしまいます。

コエンザイムQ10はすべての細胞のミトコンドリアに存在し、エネルギーを作り出すことで傷ついた細胞の修復をしてくれます。そのため、コエンザイムQ10は、疲れにくい元気なからだを維持してくれると考えられるのです。[※1]

アンチエイジング効果

コエンザイムQ10には優れた抗酸化作用があるとされ、体内で増えすぎた活性酸素の害からからだを守ってくれます。

増えすぎた活性酸素は、さまざまな病気や老化を引き起こし、肌のシミやシワなどの原因にもなります。コエンザイムQ10は、若々しくハリのある肌を保つためにも、大切な存在です。[※1]

エネルギーの産生と抗酸化という、人間が健康に生きるうえで重大な役割を担うコエンザイムQ10。

不足すると、慢性的な疲れやだるさ・肌の衰え・風邪を引きやすくなるなど、さまざまな不調の原因になると考えられます。

健康的なからだのためには、コエンザイムQ10がミトコンドリア内でしっかりと働いていることが重要なのです。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

コエンザイムQ10には、エネルギーを生産する補酵素としての働きがあります。

ヒトの生命活動を支えているエネルギー源となるのはATP(アデノシン3リン酸)と呼ばれる物質です。ATPの材料は、食事から摂取された糖質や脂肪・アミノ酸で、それらの栄養は細胞内のミトコンドリアでATPに合成されます。

コエンザイムQ10はすべてのミトコンドリア内に存在し、ATPの合成がスムーズに進められるように働く、円滑油の役割をしています。

コエンザイムQ10が不足するとATPがうまく合成されず、エネルギー量が減少してしまいます。[※3]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

コエンザイムQ10はもともと体内に存在するものを補っているため、摂取すれば無理なく体内で利用されると考えられています。

とくに還元型コエンザイムQ10については、体内で変換する必要がないため、年齢が高めの方にも効果が実感しやすいと言われています。

加齢やストレスにより慢性的な疲労感や不調を感じている人は、コエンザイムQ10を補うことで改善効果が得られるかもしれません。

また、エネルギーの産生に関わることから、激しいスポーツをする方にもおすめされる成分です。

コエンザイムQ10の摂取目安量・上限摂取量

コエンザイムQ10の1日の摂取量などは定められていませんが、一般的に考えられる摂取量については、30~300mgとバラつきがあります。

これは、コエンザイムQ10がもともと体内に存在する安全性の高い成分であるがゆえ、上限量が定めにくいことが理由です。

アメリカではサプリメントとして1日1200mg以上を推奨する商品もあるほどです。[※4]また、摂取する人の年齢や健康状態、ストレスの状態などによって、必要な量が異なるという理由もあります。

健康維持の目的であれば、30mgが目安量と考えられ、スポーツをしている人や高齢の方はもっと多めの摂取(60~100mg)が必要とする意見もあります[※1]。自分の年齢、健康状態を踏まえ、適切な量を見極める必要がありそうです。

ちなみに、医薬品(ユビデカレノン)として、うっ血性心不全症状の改善のために利用されるコエンザイムQ10の1日に認められている用量は30mgとなっています。[※4]

コエンザイムQ10のエビデンス(科学的根拠)

エネルギーの産生や抗酸化作用を持つとされるコエンザイムQ10ですが、疲労回復や美容効果についてのエビデンスは不足していて、一部ではコエンザイムQ10の健康効果をうたうサプリメントの摂取に懐疑的な見方もあるようです。[※5]

国の食品安全委員会の資料にも、サプリメントなどの食品でコエンザイムQ10に関して、

「大量または長期継続的に摂取した場合の生体内におけるCoQ10本体の合成・代謝系等に与える影響に関する資料は、現在提出された資料では不足している」

(厚生労働省 食品安全委員会 評価書 コエンザイムQ10 より引用)[※4]

との記載があります。

しかしその一方で、コエンザイムQ10の新しい効果も発見されています。

2017年資生堂の研究チームは、コエンザイムQ10に加齢臭の原因物質であるノネナールを抑える効果があることを発表しました。

実験では、65~74歳の女性を対象に6名ずつのグループに分け、酸化型コエンザイムQ10を100mg含むカプセル、還元型コエンザイムQ10を100mg含むカプセル、どちらのコエンザイムQ10も含まないカプセルをそれぞれ毎日摂取させました。

4週間後に洗浄した手を袋に20分間入れてノネナールの量を測定。その結果、酸化型・還元型どちらのコエンザイムQ10を摂取したグループにも、ノネナールの濃度の低下が認められたということです。[※6]

コエンザイムQ10には皮膚の表面ではなく、からだの中から放出される加齢臭の抑制をする効果が示唆され、今後の加齢臭などのにおいケアに役立つことが期待されます。

また、スイスのチューリヒ大学病院のSandor医師は、コエンザイムQ10が片頭痛の予防に有効である可能性を発表。

コエンザイムQ10(100mg)の水溶液を1日3回3か月投与したところ、プラセボ群に比べて、コエンザイムQ10を摂取したグループに、片頭痛の発作頻度の改善が認められたということです。[※7]

研究のきっかけ(歴史・背景)

1957年Mortonらは、ラットの肝臓中から物質を単離し、「ユビキノン」と名付けました。同じ年、Craneらは牛の心臓細胞のミトコンドリアから単離した、電子伝達系に不可欠である補酵素を発見し、コエンザイムQと命名。翌1958年にユキビノンとコエンザイムQが同じ物質であることがわかり、アメリカのFolkers博士によってその化学構造が明らかにされました。[※8]

コエンザイムQ10の工業的な化学合成に世界で初めて成功したのは、日本の日清製粉(現在の日清ファルマ)です。[※9]現在でも、世界で使用されているほぼすべてのコエンザイムQ10は、日本製であると言われています。

コエンザイムQ10は、アメリカでは20年以上前からサプリメントとして販売されていました。日本では1974年から心筋梗塞や狭心症などの心疾患や、脳出血、代謝改善などの治療薬として利用され、サプリメントとしての認可は遅れていました。

2001年に食薬区分が見直され、日本でもようやくコエンザイムQ10が食品として認められて、サプリメントや飲料として市場に出まわるようになりました。

優れた抗酸化作用を持つため効果を実感しやすいとの評判がたち、たちまち人気のサプリメント成分として地位を築きます。

現在コエンザイムQ10は食品分野だけにとどまらず、化粧品に配合される形でも市場に出まわっています。

専門家の見解(監修者のコメント)

東京工科大学のホームページ内のインタビューで、同大学の応用生物学部の学部長である山本順寛教授は次のように述べています。

「健康長寿に役立つ物質とはどのようなものでしょうか?生命活動に不可欠だが、加齢とともに減少してしまうものだが、体外から摂取することによりさまざまな体感が得られ、さらに副作用がないものだと思います。

これらの条件を全て満たすものはそうあるものではありません。CoQ10は、高齢化社会には欠かせない物質だと思います」

(東京工科大学 「健康と長寿の可能性を握るコエンザイムQ10」より引用)[※10]

山本教授は今後の展望について、

「まずは、CoQ10の吸収・輸送のメカニズムを明らかにするすることです。」(原文ママ)(引用)[※10]

だと明かしています。

高齢化社会である日本人の健康寿命を伸ばすためにも、今後の研究が進み、科学的検証に基づいたコエンザイムQ10の効果やそのメカニズムが明らかになることが期待されます。

コエンザイムQ10を多く含む食品

ヒトのあらゆる細胞に含まれているように、コエンザイムQ10は幅広い種類の食材に含まれています。動物性の食品では、イワシ、豚肉、牛肉、鶏肉などに、植物性の食品では、大豆、ブロッコリー、バターなどにとくに豊富です。[※1][※11]

ただし、コエンザイムQ10はもともと水にはほとんど溶けず、体内で吸収されにくいと考えられています。

サプリメントで摂取する場合は、体内の状態と同じである還元型のコエンザイムQ10や、吸収を高めるように工夫された包接体のコエンザイムQ10を選んでみるとよいでしょう。

相乗効果を発揮する成分

コエンザイムQ10は脂溶性で、油に溶ける性質をもちます。そのため、油と一緒に摂取すると吸収率が高まると考えられます。コエンザイムQ10を豊富に含むイワシを油に漬けた、オイルサーディンは、そのままではもちろん、トーストに乗せたりパスタに和えたりと、幅広い料理に使えるのでおすすめです。

また、コエンザイムQ10と同じく抗酸化作用の持つビタミンEを一緒に摂取することで、相乗効果により、体内のサビを防ぐ抗酸化作用がより高まることが期待されます。

ビタミンEは、かぼちゃやパプリカなどの緑黄色野菜、ナッツ類、魚や卵などに豊富に含まれますので、これらの食品と組み合わせ、油を使って調理することで、優れた抗酸化作用を持つメニューになります。

コエンザイムQ10の副作用

現在まで、コエンザイムQ10が原因とされる明らかな健康被害は確認されていません。

ただし、厚生労働省の安全委員会の指針では、健康食品としての成分は、原則として医薬品の場合に認められている量を超えないようにするべきとあります。[※4]

コエンザイムQ10が、医薬品として認められている量は1日30mgです。もしもそれ以上の量が含まれているサプリメントなどの食品を摂取する場合は、商品に記載されている使用上の注意をよく読み、気になる症状が表れた場合は、ただちに使用を中止しましょう。

医薬品との相互作用

コエンザイムQ10を摂取することで、血中コレステロール降下薬であるスタチンの副作用(横紋筋融解症)を予防する可能性が示唆されています。

スタンチンはコレステロールだけではなく、コエンザイムQ10の合成も抑制してしまうため、スタンチンの副作用が発現する原因のひとつとして、コエンザイムQ10の減少が挙げられます。

スタンチンを服用する場合、コエンザイムQ10を積極的に摂取することが、副作用の予防に効果的だと言われています。[※12]