ココナッツオイルの効果とその作用

2013年頃から少しずつ、そして2014年に一気にブームになったココナッツオイル。ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸が、認知症に効果、免疫力を高める効果、減量効果などがあるといわれています。ココナッツオイルに含まれる成分それぞれにどのような作用があるのか、説明していきましょう。

ココナッツオイルとはどのような成分か

ココナッツオイルとは、ヤシ科「ココヤシ」の果実(ココナッツ)の胚乳層を圧搾して採油した油脂です。また、ヤシ油とも呼ばれています。

含まれている脂質は、約90%以上が飽和脂肪酸であり、そのなかでも約60%もの割合で中鎖脂肪酸が含まれています。オイルに含まれる中鎖脂肪酸にはラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸があります。

ココナッツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸には強い抗菌作用や抗酸化作用、ケトン体の合成などの作用があります。

ココナッツオイルの効果・効能

ココナッツオイルには次のような効果があるといわれています。

■免疫力のアップ

人が生活している環境のなかに、たくさんのウイルスや細菌類が存在しています。ストレスや身体的疲労が溜まると、人はウイルスや細菌類に感染しやすくなります。また、疲労物質である活性酸素によっても感染することが考えられます。これは、人の免疫力が低下していることが原因です。

免疫力を向上させるためには、活性酸素を抑制する抗酸化作用のある栄養素を摂ることが必須といわれています。

またウイルスや細菌類に感染した際も同様に、その働きを抑制する栄養素を摂取することが予防につながります。

ココナッツオイルには、細菌の働きを抑制し免疫力を高めるラウリン酸が含まれています。ラウリン酸は母乳や牛乳に含まれています。

母乳で育った赤ちゃんは病気になりにくいといわれていることから、ココナッツオイルを摂取することによってラウリン酸を体内に取り込み、免疫力を向上させることができると考えられます。[※1]

■記憶力低下の抑制

人は加齢に伴う記憶力の低下がおきます。また、現在の日本は、少子高齢化となり高齢化社会のなかで、様々な問題や課題があります。

高齢化社会の課題のひとつは、認知症を発症する人が多いと考えられることです。認知症の全体の約6割を「アルツハイマー型認知症」が占めます。症状としては、記憶障害、判断力の低下、見当識障害、行動・心理症状などがあります。

このような症状のある認知症の改善に役立つ可能性があると研究解明されているのが、肝臓で中鎖脂肪酸が代謝する際に生じる「ケトン体」です。[※2]

記憶の機能を司るのは脳のエネルギー源はブドウ糖ですが、アルツハイマー型認知症になるとこのブドウ糖を上手にエネルギー源として使うことが難しくなり、認知症を発症します。

ケトン体がブトウ糖の代わりに脳のエネルギー源となることで、アルツハイマー型認知症の改善する効果が期待できることがわかってきています。

そのほかでは、認知症ではない健常な高齢者の認知機能向上の研究もされ、こちらにも効果が期待できると考えられています。[※3]

■減量効果

老若男女関係なく、生活習慣病、生活習慣病予備群が問題視されています。最近では小学生の頃から肥満が深刻化しているケースもあるほどです。

内臓脂肪型肥満が原因であるメタボリックシンドロームは、食事や運動といった生活習慣の改善が必要不可欠。

日清オイリオの研究レポートによると、中鎖脂肪酸を習慣的に摂取することで、体内で効率的に脂肪を利用しやすくなるとあります。

生活習慣や運動習慣を見直し、同時に中鎖脂肪酸を多く含むココナッツオイルを使用することで、体脂肪が減少し、減量の効果が期待できると考えられます。[※4]

■美容効果

ココナッツオイルといえば、女性誌などでもつねに特集が組まれるほど、その美容効果が注目されています。とくにそのアンチエイジング効果には大きな期待が集まっています。

前述の記憶力低下の抑制でも記述しているケトン体には、活性酸素を無害化する働きあることがわかっています。

活性酸素は、人が活動する上では体内に生じてしまう物質です。さまざまなものを酸化させ酸化反応による体の衰えが老化です。この酸化を防ぐ酵素の働きを活性化させることができます。[※5]

皮膚の老化、筋肉や内臓の老化、体の機能全般の老化などに抗酸化物質として作用します。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ココナッツオイルは、飽和脂肪酸の種類のなかでも中鎖脂肪酸を多く含んでいます。中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸とは代謝経路が違い、摂取すると直接肝臓に運ばれて効率よく代謝されます。

すなわち、すばやくエネルギーに変換され体内に蓄積されにくいということになります。「体脂肪がつきにくい体質」になることによって、ダイエット効果があるとされています。[※6]

さらに脳への作用もわかっています。体内(血中、肝臓)のブドウ糖を使い切った場合には、中鎖脂肪酸の分解過程で代謝産物として「ケトン体」が生成されます。この「ケトン体」が脳のエネルギー源として活用されます。

人は認知症などを発症すると脳のエネルギー源であるグルコースが使えなってしまうのですが、その代わりのエネルギー源になるのが「ケトン体」であるといわれています。

その他には、飽和脂肪酸の一種であるラウリン酸は唾液に含まれる酵素によって、体内でさまざまなウイルスや細菌類から体を守る抗菌物質モノラウリンに変化し、免疫力を高めます。

また、モノラウリンは腸内に存在する善玉菌を活性し腸内環境を整える効果もあります。[※7]

カプリル酸、カプリン酸は抗菌作用があり、腸内のカンジダ症や口腔内のカンジダ症などに有効で医薬品の原料にもなっています。

ここで少し専門的な話になりますが、脂質の特性について説明していきましょう。

脂質は炭素数で分類されています。炭素数が4~6のものを短鎖脂肪酸、8~12のものを中鎖脂肪酸、14以上のものを長鎖脂肪酸といいます。

短鎖脂肪酸は、大腸から吸収され粘液の分泌や腸内環境作り、腸の蠕動運動の促進などの働きがあり、バターや牛乳、酢などに含まれています。

中鎖脂肪酸は、一般の油と比べて分解されやすく短時間でエネルギーになり、ココナッツオイルやパーム油、母乳、ヤギ乳などに含まれています。

長鎖脂肪酸は、脂肪組織や筋肉・肝臓に運ばれ、必要に応じて分解や貯蔵されます。動脈硬化や肥満、心臓疾患の予防になり、オリーブオイル、エゴマ油、アマニ油、青魚(DHA、EPA)などに含まれています。

脂肪酸の種類のよっても、それぞれの大切な働きがあります。長鎖脂肪酸は一般的に知られている効果では、DHAは脳の神経細胞を活性化し神経伝達をスムーズにする、EPAは血液をサラサラにするなどです。そして、必須脂肪酸といって体に必要な脂肪酸は長鎖脂肪酸です。

ココナッツオイルは、植物油でありながら、体内に脂肪として貯蓄されにくく、肝臓に運ばれすぐにエネルギーとして分解される、そして、ケトン体の材料になる飽和脂肪酸のなかの中鎖脂肪酸を多く含有している、極めて健康効果が高い食品といえるでしょう。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

会社などの健康診断で肥満と診断された人、余分な脂肪を落としたい人、運動が苦手で食習慣から見直しが必要な人などに摂取してもらいたい成分のひとつです。

人は、自分が思うよりも多くのストレスを抱え込んでいることが多いものですが、そのストレスは、体の循環や代謝などにも大きな影響を与えます。

ココナッツオイルを日常的に摂取することで、このストレスにより発生する活性酸素を抑制、病気のリスクが回避できる可能性があります。

近年では、糖尿病の予防効果やがん細胞を死滅させる効果があるとの研究報告もありますが、医療機関を受診されている人はかかりつけ医との相談の上で摂取するようにしましょう。

ココナッツオイルの摂取目安量・上限摂取量

ココナッツオイルとしての摂取目安量や上限摂取量はありませんが、飽和脂肪酸としての目標量は設定されています。目標量は、1日の総エネルギー量のうち、7%以下です。

例えば、50代男性の場合は、1日のエネルギー必要量は2450キロカロリーとされるため、7%で換算すると171.5キロカロリーです。オイルが1gあたり9キロカロリーなので、これをココナッツオイルに換算すると19g/日となります。

ココナッツオイルは、100gで921キロカロリー、大さじ1杯(12g)で111キロカロリーです。したがって大さじ1杯で、目標量の摂取量に近い数値になります。

トーストにバター代わりに使ったり、コーヒーなどに入れたり、炒め物に使用することもできます。でもいくら体にいいからといって、摂りすぎには気をつけなければなりません。

18歳未満の目標量は設定されていませんが、目標量がないわけではないので、18歳以上の数値を参考にして摂り過ぎないようにコントロールしてください。[※8]

ココナッツオイルのエビデンス(科学的根拠)

国立精神・神経医療研究センター神経研究所と株式会社明治の共同研究グループによって、「ケトン食で認知症ではない高齢者の認知機能向上可能性」という研究成果が発表されています。

ケトン体の生成が高まるように中鎖脂肪酸油が配合された特別な粉ミルクを用いて行われました。

対照食(長鎖脂肪酸油に置き換えたミルク)と比較した結果、中鎖脂肪酸油が配合されたミルクのほうが、認知機能テストの成績は高いという結果が出ました。[※3]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ココナッツオイルは、食品としてだけでなく、アユールヴェーダ治療薬、フィリピン伝統医療治療薬食品といった伝統薬として利用されてきた歴史があります。

飽和脂肪酸を多く摂取した場合、血液中のLDLコレステロールの増加、動脈硬化性疾患、心筋梗塞のリスクが増加する…。この研究報告によって、一時期飽和脂肪酸を多く含むココナッツオイルは体に悪いと摂取を避けるべきだという情報が広まった時期もありました。また、研究者に対しての批判もあり、研究者自身が身を引いてしまいました。

しかし、医学界では有用性が認められていたため医学的専門誌などでは発表されていました。[※5]

専門家の見解(監修者のコメント)

ブレインクリニック院長の今野裕之先生によれば

『中鎖脂酸は分解されると"一部が"「ケトン体」という物質に変化します。このケトン体がアルツハイマー病においては非常に重要な役割を果たします。[※9]

(認知症ねっと 今野先生コラム「食事で認知症予防第2回:ココナッツオイルと中鎖脂肪酸と認知症」より引用)
とコラムのなかで解説されています。

単なる流行でココナッツオイルを摂るのではなく、中鎖脂酸が人体に与える影響などを理解した上で、味や香りだけでなく、機能で油を選ぶようにすると良いと思います。

ココナッツオイルの使い方

ココナッツオイルの使い方ですが、含有されている中鎖脂肪酸から生じるケトン体をつくる目的であれば、1日大さじ2杯を摂取するようにしましょう。

そのほか毎日の食習慣に取り入れる方法には以下のようなものがあります。

  • コーヒーや緑茶などに入れる
  • トーストに塗る
  • クッキーなど菓子の材料に使う
  • ヨーグルトやスムージーに入れる
  • 炒め物の油として使う

相乗効果を発揮する成分

コーヒーと一緒に摂ることで、含まれるポリフェノールやカフェインの抗酸化作用、利尿作用などとの相乗効果が期待できます。

ココナッツオイルに副作用はあるのか

副作用ではないですが、ココナッツオイルの成分のなかには長鎖脂肪酸も含まれているので過剰に摂取した場合は、体脂肪の蓄積の可能性もあります。また、人によっては腹痛や下痢、痒みなどをおこす場合もあるので摂取量に気をつけて取り入れていきましょう。

アレルギーは出にくいといわれていますが、一部では交差反応によるアレルギー反応があったと報告が上がっています。上記の症状が出た場合は医療機関の受診を受けることも考えてもいいでしょう。

また、ココナッツオイルであっても油脂類には変わりありません。大量摂取した場合には、カロリーオーバーにもなり、肥満やメタボリックシンドロームになる可能性もでてきます。摂取する場合は、十分に気をつけましょう。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 新しい実践栄養学 栄養学博士 落合敏/主婦の友インフォス情報社
  2. 日経グッティ
  3. 国立精神・神経医療研究センター
  4. 日清オイリオ MCTサロン
  5. ココナッツオイル健康事典 白澤卓二/誠文堂新光社
  6. ヘルスケアライブラリ
  7. サプペディア
  8. 日本人の食事摂取基準2015年版【PDF】
  9. 認知症ねっと
  10. セラミドスタイル