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ココアの効果とその作用

子どもから大人まで親しまれているココアは、近年、健康食品として注目され介護施設や医療現場でも用いられています。ココアに含まれるカカオポリフェノールにはさまざまな健康効果があり、またミネラルも豊富に含まれるとされているからです。今後ますます、ココアの健康効果が注目されそうです。

ココアとはどのような食品か

ココアにはカカオポリフェノール、苦味成分であるテオブロミン、不溶性食物繊維のリグニン、そのほかのミネラルが豊富に含まれています。なかでも近年注目されているカカオポリフェノールは、ココアの原料となるカカオ豆に含まれているポリフェノールのこと。植物性食品のなかでもカカオポリフェノール含有量が最も高いという研究報告もあります。[※1]

これらの成分には抗酸化作用、便秘改善、抗菌、ストレス抑制など様々な効果が期待できるとされ、医療の現場でもココアが活用されています。[※2]

ココアの効果・効能

■動脈硬化を防ぐ効果

動脈硬化はLDL(悪玉)コレステロールが活性酵素によって酸化されることにより血流が悪くなった状態のことをいいます。

ココアに含まれるカカオポリフェノールにはLDLコレステロールの酸化を抑制する働きがあるとされており、動脈硬化を防ぎ、心疾患や脳卒中をも予防する効果が期待されています。[※3]

■ストレス改善の効果

ストレスを感じると副腎皮質ホルモンのバランスが崩れコルチゾールというストレスホルモンが分泌され、その過程で体に強いストレスを与える活性酸素が発生します。この活性酸素を分解してくれるのがカカオポリフェノールであり、それにより、コルチゾールの分泌が抑制されるのです。[※4]

また、ストレスは血管を収縮し血液循環を悪くします。収縮された血管が拡張された際にも活性酸素が発生してしまいます。ですがテオブロミンには血管を拡張させる効果があり、活性酸素を抑制することでストレス改善につながります。[※3]

■便秘改善の効果

ココアには食物繊維であるリグニンが豊富に含まれています。リグニンは水に溶けず水分を吸収する不溶性食物繊維ですので、消化吸収されずに腸内に移行して便の量を増やし、大腸を刺激して排便をスムーズにさせます。

■美肌の効果

しみやそばかすは紫外線が原因とされています。紫外線を浴びると活性酵素が増え、皮膚の細胞を壊され、メラニン色素が作り出されます。

カカオポリフェノールは皮膚の細胞を守り、しみ・そばかすのもととなるメラニン色素の生成を防いでくれるため、美肌効果が期待されます。

■血圧を下げる効果

オーストラリアの国立統合医学研究所の研究結果によると、ココアに含まれるフラバノールは血管を拡張させ、血液の流れを良くし、血圧を下げる効果がると報告されています。[※5]

■ピロリ菌殺菌の効果

ココアには多くの抗菌効果があるとされています。杏林大学神谷茂教授の共同研究によるとココアの不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸によってピロリ菌が胃内へ留まることを阻止し、増殖を抑制すると報告されています。[※6]また、抗生物質耐性に対しても殺菌効果があるという報告もあります。

■冷え解消の効果

ココアに含まれるテオブロミンは、自律神経を調節し、リラックス効果が期待されます。中枢刺激作用があり、気管支拡張や利尿作用、血管拡張作用があります。この働きにより血液が体の末端まで運ばれることにより、冷え性を改善してくれる効果が期待できます。

その効果は研究でも明らかにされており、ココアの方がショウガと比べて、冷えを抑制する効果が長く持続するとされています。[※6]

どのような作用があるのか

がん化や老化、高血圧、動脈硬化などその他の生活習慣病には生体成分の酸化が深く関係しているとされています。

呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部が活性化された酸素を活性酸素といいます。活性酸素は細胞膜リン脂質やDNAを損傷させて(酸化反応)そのはたらきを低下させます。

その結果、細胞をがん化させる、または動脈硬化のリスクを高めてしまいます。このような病気は酸化反応を抑えることにより予防し、遅延させることができると考えられており、カカオポリフェノールにはその酸化反応を抑制する抗酸化作用があると期待されています。[※6]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

昔からカカオには疲労回復・滋養強壮・精神高揚などの効果が知られています。カカオに薬草を混ぜて様々な病気の治療薬として用いられていました。[※2]その後、嗜好品として世界にココアが広まっていきました。

現代の日本の医療現場では経管栄養の栄養剤に合わせ、ココアが用いられている例があります。経管栄養剤にはデメリットも多く、微量元素が不足することで排便のコントロールができないと問題があげられます。

不足している微量元素を栄養剤へ添加すべきですが、現在の法律では直接微量元素等を添加することは認められていません。そこで考えられたのが、不足している栄養成分を多く含む食品を添加するという方法であり、ココアが用いられその効果を発揮しています。

ココアの摂取目安量・上限摂取量

摂取目安量、上限摂取量共に特に定められていませんが、生活習慣病などの健康効果を期待するには、1日にカカオポリフェノール200~500mgぐらいを摂取すればよいとされています。ココア1杯(ピュアココア約5~10g)がその量となります。[※2]

また、ポリフェノールは吸収されるのが早く、摂取してから半時間ほどで効果が出始めます。ですが、そのぶん効果は長い時間持続されない[※11]ため、何回かに分けて飲むことでより長く効果が期待されます。

ココアにはカフェインやテオブロミンが含まれています。その量は微量であるため、妊娠中の方やこどもにも適切な量であれば問題はないとされています。

テオブロミンはカフェインよりも弱い作用だと考えられていますが、影響が懸念されるため妊婦・授乳中の女性や子どもは、多く飲むことは注意しなければなりません。[※8]

ココアのエビデンス(科学的根拠)

■動脈硬化を改善する効果について
お茶の水女子大学生活環境研究センターの近藤和雄、桜井智香らによる研究では次のようなことがわかりました。

健常男性12名にカカオマス35gを摂取させたグループともう一方のグループ健常男性9名には1日に36gのココアを飲用させ、ココアによるLDL被酸化能に与える影響カについて実験が行われました。その結果いずれにおいてもLDL被酸化能は有意に高まり、ココアの抗酸化作用の有効性が明らかにされました。[※9]

■肥満を改善する効果について
愛知学院大学心身科学部健康栄養学科講師上野有紀による研究では次のようなことがわかりました。

マウスの白色脂肪細胞における炎症に対してカカオポリフェノールが作用し肥満に対し有効性があるのか実験が行われました。

その結果、カカオポリフェノールが脂肪組織における炎症や酸化ストレスに関わる遺伝子群の産生を抑制することが示唆されています。[※10]

■ストレスを改善させる効果について
ストレスに関係する神経伝達物質のなかでもセロトニンは、精神の安定に関わる物質であり、セロトニンが増加することで脳が活性化し、ストレスが緩和されるとされています。中村学園大学教授青峰正裕はカテキンに注目し、カテキンがセロトニンの放出にどのような影響を及ぼしているか研究が行われました。

その結果カテキン類がセロトニン放出に有意に関係していることが明らかとなりました。その中でもエピカテキンは他に比べて100倍以上の効果を示したとされています。カカオマスにはそのエピカテキンが多く含まれており、カカオマスを含むココアを摂取したことでセロトニンの増加が期待され、ストレスを緩和させる可能性があるとされています。[※11]

■便秘を解消させる効果について
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センターで行われた臨床実験、及びマウスを使用した実験では、創傷治癒促進の効果、便通改善の効果、急性期患者の血液中亜鉛濃度回復の効果、インフルエンザ発症軽減の効果などといった効果が明らかにされてきました。[※6]

便秘の問題では経腸栄養の患者に対し、亜鉛や鉄、その他微量元素、さらには食物繊維まで多く含む食品として注目されたのがカカオマスでした。カカオマスを補助食品として添加するにはココアが最も良いとされました。

経腸栄養剤へココアを添加開始して1週間ほどで便の状態が良くなり、規則正しく排便されることが判明されたといいます。つまり経腸栄養剤へのココアの添加は患者の排便コントロールを改善することができたとされています。[※12]

■冷え性改善の効果について
滋賀県立大學教授灘本知憲はココアの形態、摂取方法などいくつかの異なる条件でココア飲料による冷え改善の有無の検証を行いました。

ヒトを対象にピュアココア、脱脂ココアを用いて5通りの方法で行われました。その結果、ピュアココアは飲む温度に関わらず、上半身、下半身共に抹消部位の冷えの抑制が示唆されています。その効果は実験終了後70分まで続いたとされています。

また脱脂ココアよりもピュアココアの方が効果が得られることも明らかにされています。これらはカカオポリフェノールによる血管拡張作用によるものとして確認されています。[※12]

研究のきっかけ(歴史・背景)

医療現場におけるココアの効用について研究をされたのは埼玉医科大学の間藤卓准教授です。
重症外傷の患者さまが食事を全く摂らず、唯一食べていたのがチョコレートでした。驚くことに毎日チョコレートだけを食べ続けていたその患者さまの傷がどんどん良くなってきたことから、カカオには創傷治癒を促す効果があるのではないかと研究を始めたとされています。

研究の結果、創傷治癒促進の効果や便通の改善、血流促進、その他多くの効果が発見されたとされています。その後、カカオを効果的に摂取するにはココアが良いとされ、医学的な効果と共に患者さまのQOLの向上に用いられています。[※12]

専門家の見解(監修者のコメント)

間藤卓准教授はカルシウムやマグネシウム、鉄分、亜鉛などのミネラルが豊富であり、さらに不溶性食物繊維であるリグニンが多く含まれているココアは健康効果の高い食品であると評価しています。

間藤卓准教授によると
「重症患者だけでなく、一般の医療にも応用でき、今後ますます医療に占める割合が高まると考えられる老人医療や在宅介護などの分野においても期待できる」

「また、ココアはおいしく嗜好性にすぐれ、摂取量が容易で、薬品などにすればはるかにコストパフォーマンスも良好である」[※12]

と述べています。

ポリフェノールは主に苦みや渋み成分として、甘いチョコレートやココアを作る際、不要なものとして除かれ、これまで注目されてきませんでした。しかし、その不要とされていた成分に、人間の健康を守る力が秘められていました。

お茶の水女子大学生活環境センターの近藤和雄、桜井智香らは、

「疾病予防、健康維持、健康増進のために、抗酸化物の摂取は重要となっている。抗酸化物の摂取の上でココア・チョコレートの果たす役割は少なくない。」

と述べています。[※10]

ココアを効果的な飲み方

◎ピュアココアを選ぶ
【ピュアココアとミルクココアの比較】(100あたり)
ピュアココア 271kcal
糖質42.4g/食物繊維23.9g
ミルクココア 412kcal
糖質80.4g/食物繊維5.5g[※13]

ピュアココアは砂糖やミルクパウダーなどの添加物が含まれていないため、健康やダイエットには低カロリーで抑えられるピュアココアをおすすめします。
また、ココアは香りからもさまざまな効果が期待されています。ピュアココアはカカオ本来の香りをより感じられるためさらにおすすめします。

◎ホットココアの作り方
分量(1人分)
・ピュアココア   小さじ2(約4g)
・牛乳もしくは水  少量
・牛乳        140cc
(砂糖を入れる方は小さじ2(約6g))

① 鍋に、ピュアココア、少量の牛乳または水を加え、弱火でなめらかになるまでよく練ります。
※ココアパウダーには油分が含まれているため、練りがあまいとダマになって焦げたり、仕上がりの味が粉っぽくなったりするので注意が必要です。

② 中火にし、牛乳を少しずつ加え、よくかき混ぜます。沸騰直前に火からおろし、カップにそそぎ入れます[※14]

◎ピュアココアを使ったレシピ
材料(パウンドケーキの型1台分)
・ビターチョコレート 100g
・絹ごし豆腐 150g(1/2丁)
・牛乳 150cc
・ピュアココア 20g
・バター 15g
・グラニュー糖 60g
・卵 1個

作り方
① ボールにチョコレートを溶かします。ココアは牛乳で溶かしておきます。
② 絹ごし豆腐はキッチンペーパーに包み、電子レンジでおおよそ3分温めて水分をとります。
③ 卵以外の材料をボールに入れてなめらかになるまで混ぜ、次にといた卵を何回かに分けて入れます。
④ 型に流しいれ、170°に予熱しておいたオーブンで20分ほど焼きます。
⑤ 粗熱をとり、冷蔵庫で一晩冷やしたら完成です。

相乗効果を発揮する成分

◎はちみつと一緒に
はちみつもビタミンやミネラル、ポリフェノールが豊富に含まれる栄養価の高い食品です。ココアと同様、疲労回復に整腸作用、老化や病気の予防、創傷治癒促進、美肌効果までさまざまな効果が期待されています。

はちみつをココアと一緒に飲むことでその効果がより期待できると考えられます。また、はちみつは天然甘味料ですので砂糖よりも少量で十分な甘味を感じることができます。カロリーが気になるという方にはおすすめです

◎オリゴ糖と一緒に
オリゴ糖は人工的に作られた甘味料です。砂糖よりは甘味は弱いですが、低エネルギーであり血糖値や中性脂肪の上昇を抑える効果があります。[※7]

オリゴ糖は特定保健用食品にも認められています。ビフィズス菌を増殖させる働きがあるため、腸内環境を整えてくれます。難消化性であり、消化吸収されず大腸まで届くので便秘改善に効果的とされています。[※15]

そのため、健康やダイエットにはピュアココアがいいと前途でも述べましたが、少し甘さが欲しいという方にはオリゴ糖を少し入れて飲むと良いでしょう。

ココアに副作用はあるのか

ココア自体の副作用は認められていませんが、カカオフラバノールやカカオ含有成分には、血小板凝集を阻害する可能性があるとされており、出血障害のある人は、過剰に摂取すると出血のリスクが高まる可能性もあるとされています。[※7]

また、ココアには利尿作用、興奮作用があるカフェインやテオブロミンも含まれていますので過剰な摂取は控えましょう。

ココアには脂質が多く含まれているため、カカオポリフェノールの効果だけに注目してしまうと、脂質やエネルギーの過剰な摂取となり、生活習慣病の原因となってしまいます。注意が必要です。