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シナモンの効果とその作用

シナモンは何千年も昔から使用されてきた世界最古の香辛料のひとつです。独特の強い香りを持っているシナモンは、現代では料理やお菓子に利用されることが多いですが、生薬としての働きも注目されています。ここでは、シナモンの特徴や効果・効能、副作用などをご紹介します。

シナモンとはどのような食品か

シナモンはニッケイ属の複数の樹木の内樹皮から作られている香辛料で、多くの種類があります。代表的な芳香成分にはサフロール、シンナムアルデヒド、オイゲノールなどがあります。

中国発祥のカッシア・シナモンはアメリカやカナダで多く販売されており、他の国々で多く販売されているのは、スリランカ発祥のセイロン・シナモンです。[※1]

シナモンは特に料理の味付けや香り付けに使われており、香りが強いことから、『スパイスの王様』とも言われています。

アジアの古代医学では風邪や下痢、気管支炎などの治療にも用いられてきましたが、今日では、食欲不振、胃腸障害、糖尿病などのサプリメントとして利用されています。漢方名では「桂皮」と呼ばれています。

発熱、吐き気、月経関連の症状緩和などにシナモン(桂皮)を薦めている漢方薬学者もいるように、一定の効果が認められている成分です。[※2]

シナモンの効果・効能

シナモンの主成分は強い香りがある桂皮アルデヒドですが、アロマオイルに加工するとより香りが高まり、体調を整えたり、気持ちを高ぶらせたりするなどの効能が期待できます。

シナモンの香りを嗅いだり、シナモンを使用した料理を食べたりすることで胃液の分泌が促され、消化が進んで食欲増進につながります。

桂皮アルデヒドは血管内のたんぱく受容体を活性化させる働きがあり、血管の健康状態を改善し、血流を良くするため冷え性はもちろん、免疫力の向上やダイエット効果も期待できます。

ドイツの医療関連機関であるコミッションEは、食欲減退や消化関連の症状にシナモンが有用であると認めています。[※2]

シナモンに含まれているプロアントシアニジンという成分は、抗酸化物質として注目され、リンゴ未熟果実、ブドウ種子、松樹皮などに由来するものが食品や化粧品の成分として利用されています。[※3]

ビタミンCの働きを活発にし、身体の結合組織や毛細血管系の健康を促進するため、アンチエイジング効果も期待できます。

また、2017年1月24日に千葉大学がインフルエンザの予防効果が期待できるシナモンを使用したマスクの実用化に乗り出すことを発表しました。2020年には年間100万枚の販売を目指すとしています。[※4]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

毛細血管は内側と外側の二重構造になっており、Tie2(タイツー)という分子で繋がっているのですが、Tie2は年齢を重ねると減少していき、それにより血管の外側が壊れてしまいます。

しかし、シナモンに含まれている桂皮アルデヒドは、Tie2の働きを活性化させて毛細血管の健康を保つ作用や、血管拡張効果などがあります。これにより、毛細血管が減少することで起こるさまざまな不調の改善やアンチエイジングに繋がります。

シナモンは伝統医学においては長年、気管支炎の改善などに用いられてきました。現在では、食欲不振、便秘軽減、最近は特に糖尿病に効果があると期待されています。[※1]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

シナモンが「スパイスの王様」と呼ばれる理由のひとつに、豊富な栄養素が含まれることが挙げられます。ビタミンB群のほか、鉄分、カルシウム、亜鉛、マグネシウムなどの女性が不足しがちなミネラル類を多く摂取できます。

シナモンには「シンナムアルデヒド」というファイトケミカルの一種である成分が含まれています。シンナムアルデヒドはシナモン特有の香り成分で、毛細血管の修復や老化防止効果、抗酸化作用、解熱作用、殺菌作用、さらには血糖値を抑える働きといったさまざまな健康・美容効果が期待できます。

そしてシナモンに含まれるプロアントシアニジンは抗酸化物質としての効果もあります。[※3]シナモンは健康維持・改善のほか、美容やアンチエイジングに力を入れたい方にもおすすめです。

また、シナモンの独特な強い香りは、ストレスなどによる精神疲労を軽減する効果も得られます。そういう意味でシナモンは、なにかと心の負担の大きい現代人の強い味方と言えるでしょう。

シナモンの摂取目安量・上限摂取量

シナモンに含まれているクマリンという成分は、過剰摂取すると肝障害が誘発されるということがわかっています。そのためドイツのドイツ連邦リスクアセスメント研究所が、耐容一日摂取量を、体重1キログラム当たり0.1ミリグラムと定め、注意を促しました。

平成19年度に東京都は、市販のシナモンスパイスやシナモンを含む食品のクマリン含有量について、実態調査を行い、その結果から、体重50キログラムの成人の一日許容量(人が生涯にわたり摂取しても健康上に問題がないとされる一日当たりの摂取量)を計算しました。

セイロン・シナモンは364.6グラム、菓子では253.3グラム、カシアで1.5グラム、そしてサプリメントでは1.9グラム、という結果でした。

このことから、普通の食生活をしていればシナモンによる健康面への影響は心配ないと言えますが、サプリメントでは、成分が濃縮されているため、耐容一日摂取量を超えてしまう可能性もあります。

商品に記載されている摂取目安量を守ることが大切です。[※5]

シナモンのエビデンス(科学的根拠)

シナモンには、シンナムアルデヒド、オイゲノール、プロアントシアニジン、フェノール酸、タンニン、カテキンなど、多くの成分が含まれていますが、これまでの動物を使った実験では、抗菌、抗バクテリア作用や潰瘍の治療への効果などが明らかになっています。

胃潰瘍の原因とされるヘリコバクターピロリ菌などに対する有効性や、アップルジュースにシナモンを加えるとジュースの中のバクテリアを殺す働きがあるという、抗バクテリア作用の研究報告もあります。

また、シナモンが糖尿病患者の血糖値を制御するという報告もあります。米農務省は、MHCPというシナモンに含まれる成分が、インスリンのグルコース代謝を20倍増大すると発表しています。

MHCPはある酵素を活性化することで脂肪細胞のインスリンに対する反応を向上させ、この酵素がインスリンと脂肪細胞を結合させます。

シナモンはこのプロセスを抑制しようとする酵素の働きを抑えます。[※2]

研究のきっかけ(歴史・背景)

世界最古のスパイスであるシナモンは、世界中で古い歴史を持ちます。エジプトでは紀元前4000年頃から防腐剤としてミイラを保存するために使われたり、儀礼などにもシナモンを使用したりしていたと言われています。[※6]

また、古代ギリシャでは、特に王侯貴族に重宝され、最高の贈り物とされていました。

日本に伝わったのは8世紀前半頃で、中国から生薬として伝来し、江戸時代の1716~1735年頃には樹木として日本に伝えられました。

専門家の見解(監修者のコメント)

シナモンと糖尿病の関係について、牧田AGEクリニックの牧田善二院長は次のようにコメントしています。

「シナモンは、血糖値を下げる作用が科学的に認められた唯一の食品と言っていいでしょう。

糖尿病は一度かかったら治らない不治の病です。
これは何年も不摂生が続く間にインスリンを作り出す膵臓の機能が、回復不能な状態にまでダメージを受けるからです。

だからといって、悲観する必要はありません。
後に戻れなくても、先に進まなければいい。
合併症を起こすまで悪化しなければいいのです。

高血糖は比較的容易に解消できますが、糖尿病の3大合併症である糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害は治癒が困難だからです。

そこで、何よりもたいせつになるのが、血糖値やヘモグロビンA1cを常に安全圏にコントロールすること。
そのためのメソッドの一つとして、シナモンは実に頼りになるのです。」

(ケンカツ!『【糖尿病】HbA1cを下げて糖尿病の合併症を予防する「シナモンコーヒー」の効果』より引用)[※7]

シナモンを摂取するには

香辛料のひとつであるシナモンを毎日の食生活の中に取り入れている人は多く、カレー料理、シナモンロール、シナモンクッキー、アップルパイ、チャイ、ミルクティー、コーヒーなど、シナモンは幅広く料理やスイーツ、ドリンクなどに使われています。

シナモンの成分は加熱しても変質はすることはないため、料理で熱を加えても温かい飲み物に入れてもその効果は変わりません。

そのため、温かい料理から冷たい料理まで、幅広いレシピに利用できます。コーヒーやココアにサッと入れてもかまいませんし、アイスクリームやケーキにかけても美味しく頂けます。ホットワインにシナモンを入れて飲むと、体が芯から温まるので冷え性の人におすすめです。

相乗効果を発揮する成分

シナモンはどんな食品と組み合わせても、有効成分が阻害されことはありません。自由な食べ合わせで摂取しても問題はありません。

シナモンと特に相性が良いのは「コーヒー」との組み合わせです。血糖値やヘモグロビンA1cを安全圏にコントロールする効果がシナモンにはあり、コーヒーには、糖尿病による死亡リスクを軽減させる効果があると言われています。

ですからシナモンとコーヒーの組み合わせは糖尿病予防においては最善のカップリングと言ってよいでしょう。手軽に試せるのもうれしいポイントです。

毎日1杯づつでもシナモン入りのコーヒーを飲めば効果も持続するので、食事の前後や、仕事・勉強の合間に飲むと良いでしょう。[※7]

シナモンに副作用はあるのか

シナモンは、香辛料として大昔からさまざまな料理や菓子などに使用されてきましたが、最近では健康面の効果にも注目されており、サプリメントなど健康食品としても利用されています。

シナモン自体は、適量を摂取していれば副作用の心配はありませんが、問題は、シナモンを過剰に摂取した場合です。

近年、シナモンの独特の香りの成分のひとつであるクマリンという物質を過剰に摂取することで、肝障害が誘発されるということが明らかになりました。

私たちが日ごろ口にするような一般的な料理などに使われるシナモンの量は少量なので危険性はありませんが、通常の食品よりも成分が多く含まれているサプリメントや健康ドリンクなどを服用する場合は、クマリンを過剰に摂取してしまう可能性があるので、注意が必要です。[※5]