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シャンピニオンの効果とその作用

シャンピニオンは、日本で「マッシュルーム」という名前で親しまれているハラタケ科ハラタケ属のキノコです。シャンピニオンにはミネラルやビタミン、食物繊維が豊富に含まれており、腸内環境の改善や消臭効果、高血圧予防などの効果が確認されています。
ここでは、シャンピニオンの効果・効能や作用のメカニズム、上手に摂取する方法などをまとめました。

シャンピニオンとは

シャンピニオンはハラタケ科ハラタケ属のキノコ。日本でも良く食されている「マッシュルーム」のことです。シャンピニオンというのはヨーロッパでの呼び名なので聞きなれない人が多いかもしれませんが、世界で一番生産量が多いキノコでもあります。和名ではツクリタケやセイヨウマツタケとも呼ばれています。

一般的に、直径約2~4cmの幼菌の時に収穫されることが多いのですが、成熟が進むと傘の部分が平らに開いていき、大きいものでは約20cmに成長します。[※1]

シャンピニオンの品種は、ホワイト種、オフホワイト種、クリーム種、ブラウン種の4つに分けられます。味が濃厚なのがブラウン種、最もポピュラーなのはホワイト種、缶詰などの加工品に利用されるのがクリーム種です。[※2]

シャンピニオンには、カルシウムやカリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラルのほかに、ビタミンB1やB2、ナイアシン、葉酸、パントテン酸といったビタミン類、たんぱく質、食物繊維が豊富に含まれています。

含有する成分のはたらきによって、腸内環境の改善や消臭効果、免疫力の強化、高血圧の予防に効果があるといわれています。

また、シャンピニオンから抽出されたエキスにもさまざまな効果が報告されています。シャンピニオンエキスには、NK細胞(免疫細胞の一種)を活性化したり、慢性腎不全の進行を抑えたりするはたらきがあることがわかっています。

現在は飲料や健康食品などに利用されており、今後は代替医療分野での利用も期待されています。

シャンピニオンの効果・効能

シャンピニオンには、以下のような効果・効能があります。[※3][※4]

■腸内の環境を整える

腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを整え、腸内環境を整えてくれます。

■口臭や体臭・便臭の抑制

腸内環境が整うことで体内毒素の生成が抑制されるため、口臭や体臭、便臭が抑えられます。

■免疫力の強化

シャンピニオンエキスによって、免疫細胞の一種であるNK細胞が活性されることが報告されており、免疫力の強化につながるといわれています。

■高血圧の予防

シャンピニオンに含まれる成分・エリタデニンのはたらきによって、高血圧の予防効果が期待されています。

■がん予防

シャンピニオンによってNK細胞が活性化されることで、がんの発生を予防することが期待されています。

■慢性腎不全の進行を抑える

シャンピニオンエキスには、慢性腎不全の進行を遅らせる効果があることが確認されています。

■むくみの解消

シャンピニオンに含まれるカリウムを摂取することで、むくみの解消につながります。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

シャンピニオンエキスには、口臭や体臭、便臭などを消臭する効果があります。[※3]

腸内で悪玉菌が増殖して腐敗すると、悪臭のガスが発生します。このガスが口臭や便臭の原因です。

シャンピニオンには、腸内環境のバランスを整える成分が含まれているため、腸内の善玉菌が増えて悪玉菌が減少します。腸内環境が整うと悪臭ガスの発生頻度が減少するため、口臭や体臭、便臭の改善につながります。

また、シャンピニオンエキスは腎機能の指標とされる血液中のクレアチニン濃度の上昇を抑えるはたらきが報告されており、慢性腎不全の進行を抑制する効果も期待されています。

シャンピニオンには、エリタデニンと呼ばれる成分も含まれています。このエリタデニンは、シャンピニオンとしいたけだけに含有する成分です。

シャンピニオンの傘に多く含まれているエリタデニンは、血圧を調整する作用や血中コレステロール値を下げるはたらきがあるため、高血圧の予防・改善効果が期待されています。[※4]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

シャンピニオンは、以下に該当する人におすすめです。

  • 腸内環境を整えたい人
  • 口臭や体臭を抑えたい人
  • 免疫力を高めたい人
  • 高血圧を予防したい人
  • がんを予防したい人
  • むくみを改善したい人

シャンピニオンの摂取目安量・上限摂取量

食品としてのシャンピニオン(マッシュルーム)の摂取目安量や上限摂取量などは、明確に定められていません。

シャンピニオンエキスを配合した健康食品を摂取する際は、製品パッケージに記載されている1日の摂取目安量を参考にしてください。

シャンピニオンのエビデンス(科学的根拠)

シャンピニオンから抽出したエキスを使った臨床試験のエビデンスを紹介します。

■腸内フローラの変化[※5]

日本獣医生命科学大学(旧日本獣医畜産大学)の寺田厚教授らは、被験者9名にシャンピニオンエキスを63日間投与して、腸内細菌を調べました。

試験期間は約60日。その間、シャンピニオンエキス0.5g、1.5gを2週間ずつ投与し、摂取前後の腸内細菌の量を比較しました。0.5g摂取時期と1.5g摂取時期は約2週間あけて試験は行われています。

結果、シャンピニオンエキスの投与期間中は、善玉菌であるビフィズス菌が増加し、悪玉菌のクロストリジウム菌が減少しました。

■体内毒素の減少[※6]

株式会社リコムの浜屋忠生氏は、腸内細菌の試験と同様の方法で、体内毒素の量を測定した結果が発表しています。体内毒素で便臭の元とされるアンモニア・フェノール・スカトール・硫化硫黄などの成分の量を測定。

シャンピニオンエキス投与時には、便臭成分の量の減少が確認されたことから、便臭を防ぐ効果や体内毒素を減らす効果があるとしています。

■腎不全の進行抑制[※7]

腎臓機能の測定には血中にあるクレアチニンという成分の量を計測します。クレアチニンは筋肉を動かすときに使ったエネルギーのカスのようなもので、尿と一緒に排出されます。腎臓の機能が低下していると、クレアチニンが尿と一緒に排出されずに体内に溜まっていくので、クレアチニン値が高いほど、腎臓機能が低下していると判断されるのです。

東京女子医科大学の佐中孜氏らが行った慢性腎不全の患者8名にシャンピニオンエキスを3か月投与した試験では、摂取開始から摂取3か月後のクレアチニン値を一定に保つ結果が示されました。

このことから、シャンピニオンエキスには腎不全の症状が進行するのを抑える効果が示唆されています。

■免疫細胞の活性[※8]

シャンピニオンエキスの開発を行っている(株)リコムは、50歳から80歳の高齢者10名を対象に、シャンピニオンエキス0.4g/1日を1か月投与して、エキス摂取前後の免疫細胞の活性具合を比較しました。

結果、全ての被験者の免疫細胞(NK細胞)が活性化。個人差はあるものの、平均して1.5倍の活性が見られました。

研究のきっかけ(歴史・背景)

古代エジプト時代、野生のシャンピニオンは「神様の贈り物」と呼ばれ、高貴な食べ物として重宝されてきました。

17世紀には、パリ郊外にあるメロン栽培の温床で自然発生していたシャンピニオンが発見され、食用として採集されるようになりました。その後、人工栽培が行われるようになり、ヨーロッパ各地に広まったとされています。

日本では、大正時代ごろに本格的なシャンピニオン栽培が行われるようになり、缶詰を中心に海外へ輸出するようになりました。しかし、戦後は韓国や台湾でシャンピニオンの栽培が盛んになり、日本のシャンピニオン栽培は衰退。

現在日本は、海外輸出用ではなく、国内生鮮市場向けのシャンピニオン栽培を中心としています。

そんなシャンピニオンですが、1987年に機能性食品素材の研究開発を行っている会社が、シャンピニオンの消臭効果を発見。

シャンピニオンエキスの製造技術を開発しました。抽出されたシャンピニオンエキスは、飲料や健康食品などの原料として広く用いられています。

専門家の見解(監修者のコメント)

東洋医学研究所勤務や診療所の所長、内科開院などの経験があり、漢方に関する書籍を多数執筆している鈴木洋医師は、シャンピニオン(マッシュルーム)について自身の著書内に以下のように記しています。

「マッシュルームの抽出物には消臭効果があり、腸内の異常発酵を抑制し、便臭成分のアンモニア、硫化物、インドール、スカトールなどの産生を減少させる」(鈴木洋 著『カラー版 健康食品・サプリメントの事典』より引用)[※1]

食事で摂取した食べ物が腸内の悪玉菌に分解されると、悪臭の原因となるアンモニアや硫化水素、インドールなどの毒素が発生します。

シャンピニオンエキスには、その毒素の生成を抑制するはたらきがあり、口臭や体臭、便臭を抑える効果があることが報告されています。

また、鈴木氏はシャンピニオンの免疫機能を高める作用についても解説しています。

「腸内細菌を正常化し、血中アンモニアやクレアチニン、尿酸の値を低下させ、NK細胞の活性を高め、免疫機能を増強するといった作用のあることが報告されている」(鈴木洋 著『カラー版 健康食品・サプリメントの事典』より引用)[※1]

健康効果が期待されるシャンピニオン(マッシュルーム)を普段から摂取するほか、シャンピニオンエキスを含む飲料・健康食品などを摂取してみてはいかがでしょうか。

シャンピニオンを上手に摂取するには

シャンピニオンは、調理する際に水で洗うと香りがとんでしまいます。シャンピニオンについている土や汚れは、渇いた布やペーパータオルなどで取り除くと良いでしょう。

シャンピニオンは、丸ごとソテーにしたりオーブンで焼いたりするとうま味が出てくるため、美味しくいただけます。

ただし、シャンピニオンに含まれるパントテン酸は熱に弱いため、加熱すると約半分ものパントテン酸が壊れてしまいます。

パントテン酸を効率よく摂取するには、生でサラダにして食べるのがおすすめです。

調理方法だけでなく、選び方や保存方法も大切です。シャンピニオンを選ぶときは、肉厚でかさが開きすぎていないもの、そして軸が太いものを選びましょう。

シャンピニオンを丸ごと保存する場合は、ラップに包む、またはジッパー付きのポリ袋に入れて冷蔵庫で保存してください。スライスしたシャンピニオンは、切り口が変色しないようにレモン汁をかけて冷凍保存すると良いでしょう。[※9]

相乗効果を発揮する成分

口臭予防のサプリメントには、シャンピニオンエキスと渋柿エキスが一緒に配合されているものが多く見られます。

渋柿エキスには防腐効果があるため、シャンピニオンエキスと一緒に摂ることで消臭予防効果が高まると考えられます。

シャンピニオンの副作用

シャンピニオン、またはシャンピニオンエキスに関する副作用の報告・被害事例は見つかりませんでした。

まだ安全性に関する情報が少ないため、摂り過ぎないように注意しましょう。

注意すべき相互作用

シャンピニオン、またはシャンピニオンエキスに関する相互作用の報告・被害事例は見つかりませんでした。特定の医薬品や漢方薬、サプリメントを服用中の人は、シャンピニオンエキスを摂取しても問題ないか医師・薬剤師にご相談ください。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 鈴木洋 著『カラー版 健康食品・サプリメントの事典』(医歯薬出版株式会社 2011年2月発行 p90)
  2. ホクトきのこ総合研究所 著『[改訂版] きのこ検定 公式テキスト』(実業之日本社 2016年11月発行)
  3. 『すぐわかる免疫力の高め方』(主婦の友社 2016年10月発行)
  4. 渡辺尚彦 ほか『薬なしで血圧を下げる!』(扶桑社 2017年12月発行)
  5. 寺田厚「シャンピニオンエキス摂取による腸内フローラおよび腐敗産物の影響」(第21回日本食品微生物学会抄録集 2000年10月11日 21巻 p90)
  6. 浜屋忠生 「Bio‐M(シャンピニオンエキス)の開発とその利用 Bio‐Mの臨床例 高齢入院患者に対するBio‐M経口投与による便臭,便性への影響と病室内環境の変化について」(食品と開発 1995年1月 第30巻 p41-p44)
  7. 佐中孜 ほか「保存期腎不全患者におけるシャンピニオンエキスの尿毒症物質、腸内菌叢および糞便性状に及ぼす影響」(応用薬理  76 (5/6) 109-115 (2009))
  8. (株)リコム「NK細胞活性増強作用」
  9. 吉田企世子 監修『春夏秋冬 おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典』(株式会社エクスナレッジ 2009年9月発行 p58)