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セラミドの効果とその作用

セラミドは皮膚の角質層に存在する細胞間脂質の主成分で、肌の潤いやバリア機能の向上に役立っています。セラミドの減少は乾燥やかゆみなどの肌トラブルや、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の一因になります。セラミドは機能性表示食品として販売されているものもあり、効果効能のエビデンスが豊富な成分のひとつです。

こすぎレディースクリニック 椎名 邦彦医師監修

セラミドとはどのような成分か

セラミドは皮膚の一番外側にある角質層の細胞膜に多く存在する成分です。細胞と細胞の間にある細胞間脂質を構成する成分のひとつであり、細胞間脂質の実に50%を占める主成分でもあります。
角層細胞がレンガだとすれば、細胞間脂質はレンガとレンガのあいだをつなぐセメントのようなもの。細胞間脂質は脂質と水の両方の性質を持ち、角質層のあいだに規則正しく何層にも重なり配列されています。この構造は「ラメラ構造」と呼ばれ、潤いのある健やかな肌を保つ力に機能しているのです。[※1]
健康な皮膚の場合、セラミドは肌の細胞と細胞の隙間を埋めるようにして規則正しくみっちりと存在していますが、セラミドが少ない皮膚は細胞同士の隙間があき、スカスカな状態です。セラミドが少ない皮膚は、外部からの刺激を受けやすく、皮膚の内側にある水分などが外にでていきやすい状態になります。また、細菌の侵入によりアレルギー反応を起こすと痒みや湿疹などの症状を引き起こします。このセラミドが持つバリア機能は、皮膚の最も重要な役割のひとつなのです。

セラミドの効果・効能

セラミドには次のような効果・効能が報告されています。

■保湿・保水効果

セラミドには脂質でありながら水ともなじむ性質があり、表皮、真皮に存在する水分を肌の外に逃がさない役割をする「保水効果」があります。

■皮膚のバリア機能の向上

セラミドは皮膚のバリア機能の役割を果たし、外からの病原体や異物の侵入から私たちの体を守っています。とくに、セラミドの中でもアシルセラミドは皮膚のバリア機能に特化した成分であることがわかっています。なんらかの原因でアシルセラミドの産生がうまくいかなくなると、バリア機能が損なわれ、難治性皮膚疾患である魚鱗癬(全身の皮膚が赤くなり、魚のうろこ状やさめ肌状になる生まれつきの病気)やアトピー性皮膚炎などの原因となります。[※2]

■健康な髪をつくり出す

髪を作り出しているのは頭皮の細胞なので、頭皮の潤いを保つことが美髪には不可欠です。さらにセラミドは毛髪自体にも存在しており、毛髪のハリ・コシを生み出しています。
毛髪に存在するセラミドは、髪内部の潤いを保ち、キューティクル同士を接着させ整える細胞膜複合体(CMC)の構成に役立っています。 [※3]CMCは加齢、パーマやカラーリング、紫外線などが原因で減少し、乾燥やパサつきといった髪のトラブルを引き起こします。髪のダメージの補修にはCMCの補修が欠かせません。CMCの構成に作用するセラミドは美髪効果も注目されていて、セラミドを配合したシャンプーやトリートメントなどのヘアケア用品も多く販売されています。

ほかにもセラミドは、がん細胞の抑制機能、糖尿病の発症との関連など、さまざまな疾患との関連[※4]も指摘されてきて、研究によりさまざまな効果・効能が明らかにされつつあります。

どのような作用があるのか

セラミドは皮膚の一番表面の層である「角質層」に存在し、細胞と細胞の隙間を埋める役割をしています。外部からの刺激をブロックし、さらに油にも水にもなじむ性質を利用し、脂質の中に水分を閉じ込める働きを担っています。

セラミドは皮膚の細胞間脂質に含まれる分子種の一群を指し、いくつかの種類に分けられます。その中でも皮膚のバリア機能の要とされているのは「アシルセラミド」です。

アシルセラミドは、セラミドの中でも特殊な構造を持ち、皮膚のバリア機能に特化した成分です。アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患は、なんらかの原因によりアシルセラミドの産生がうまくいかなくなることで、引き起こされると考えられています。

アシルセラミドが皮膚のバリア機能に重要だということは以前から認められていましたが、生体内でのアシルセラミドの生合成に関わる酵素の実体は長年不明でした。しかし、2017年に北海道大学の研究により、アシルセラミド合成酵素(PNPLA1)を発見することに成功[※2]しました。皮膚のバリア機能を高めるアシルセラミドの分子機構の全容が解明されたことで、今後の新たな皮膚疾患治療薬の開発も期待されています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

乾燥肌や敏感肌によるさまざまな肌トラブルを抱えている人、肌のアンチエイジングが気になる人などにセラミドは役立つ成分です。加齢による肌のかさつきやシワなどは、年齢を重ねることで減少したセラミドの不足が関係しています。体質や加齢によるトラブル以外に、食器用洗剤を使う人や水仕事をしている人に起こりやすい「主婦湿疹」と呼ばれる手肌の荒れなどにもセラミドは有効です。主婦湿疹は洗剤によりセラミドが溶けだし、肌のバリア機能が低下することが一因で起こりますので[※1]、長期に渡って手荒れに悩んでいる人にもオススメです。さらにセラミドは頭皮や毛髪にも存在しているので、髪や頭皮のパサつき、フケや痒みなどの悩みを抱えている人にもおすすめです。

現在国民の約10人に1人がアトピー性皮膚炎ともいわれていますが、未だに根治可能な原因療法が存在しないのが実情です。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚のバリア機能が低下しているために炎症がおこりやすくなると考えられており[※5]、セラミドの作用による皮膚バリア機能の促進が大変重要になります。

セラミドの摂取目安量・上限摂取量

セラミドは化粧品などで外用する以外に、サプリメントなどで経口摂取することが可能です。セラミドの摂取量の上限は今のところ定められておりません。
日本製粉が発表した臨床データによると、経口摂取による皮膚の保湿効果が現れるのは、米由来のセラミドで1日0.6mg以上、トウモロコシ由来のセラミドで1日2mg以上[※6]ということです。サプリメントを開発している各メーカーで独自のデータが発表されていますし、商品によって含有量も異なりますが、概ね1日1〜2mgの継続摂取で効果が感じられるというのが一般的です。サプリメントを使用する際は参考にしてみるとよいでしょう。

セラミドのエビデンス(科学的根拠)

セラミドは保湿外用薬として、とくにアトピー性皮膚炎に対する有用性についての多くのエビデンスが提示され、効果が明らかにされています。[※7]

また、以前までサプリメントなどの経口摂取によるセラミドの効果については消極的な見方がありましたが、研究が進み、その効果が実証されてきています。
東洋新薬の研究によると、乾燥による肌荒れ、または痒みを自覚する健常成人男女を対象に、米由来グルコシルセラミドを含む食品を1日1食、12週間継続摂取させたところ、上腕部の角層セラミド量の増加が認められたことを報告しています[※8]。経口摂取によって肌の保湿効果を示す研究はこれまでもありましたが、上記の研究により、経口摂取による角層セラミド量の影響も確認されたのです。

研究のきっかけ(歴史・背景)

セラミドはスフィンゴ脂質の一種ですが、この脂質群を1884年に最初に発見したのは、ドイツの医生化学者Johann L.W.Thudichumです。スフィンゴという名前は一分子中に糖、脂肪酸、有機塩基を持つこと、その分子の不思議な性質から、ギリシャ神話の「スフィンクス」が由来とされています。1980年の中頃までセラミドは生体膜の構成成分としてしか認識されていませんでしたが、1985年以降数多くの研究報告がされるようになりました。[※9]
とくに近年の研究により、セラミドの中でもバリア機能の要とされるアシルセラミドの分子機構の全容が解明された[※2]ことは、注目すべきことです。これにより、アトピー性皮膚炎や魚鱗癬などの根本的な治療が難しいとされていた皮膚疾患の治療薬の開発が期待されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

セラミドはアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の治療に加えて、加齢や外部刺激などが原因で起こるさまざまな肌トラブルに対する有効成分として注目されています。

北海道大学大学院の先端生命科学研究院、五十嵐靖之教授は、セラミド研究会のホームページにて次のように述べています。

「さまざまなスフィンゴ脂質の生体における重要な役割が、細胞のシグナル伝達、アポトーシス、生体膜ドメイン構造などとの関連で、近年だんだんと明らかになってきました。
中でもセラミドや糖セラミドは皮膚組織や神経系の組織に多く存在し、これらの組織の機能に深く関わっていることが明らかになり、またがん細胞の抑制機能、糖尿病の発症との関連など種々の疾患との関連も指摘されてきております。
又植物由来の糖セラミドが機能性食品や化粧品の素材として一部市場に出るなど、その応用開発研究も急速に進められつつあり、これは日本だけでなく海外でも同様の進展が見られるようになってきました。」[※4]

セラミド自体の研究の歴史はそれほど古くありませんが、多くのエビデンスが出てきており、治療薬としてはもちろん、サプリメントなどの健康食品、機能性表示食品、化粧品などで今後も幅広く利用されていくことでしょう。

セラミドを多く含む食べ物

セラミドを多く含む食品には、こんにゃく・ワカメ・ひじき・黒豆・小豆・大豆・お米(米ぬか)・小麦(小麦胚芽)などがあります。
さまざまな食品に含まれるセラミドですが、通常の食品から摂取できる量はそれほど多くなく、効率的にセラミドを取り入れるためには、サプリメントを利用することが望ましいといえます。

サプリメントや化粧品に使用されるセラミドには、米・トウモロコシ・こんにゃく・ミルクなどから抽出した「植物性の天然のセラミド」、主に馬の脊髄などから抽出した「動物性の天然セラミド」、酵母を利用し生成され、人の肌がもともと持っているセラミドと同じ構造で合成された「ヒト型バイオセラミド」、石油原料からセラミドに似た構造の保湿成分を化学合成した「合成セラミド(疑似セラミド)」の主に4つの種類があります。それぞれ価格や浸透性などが異なり、メリットデメリットがありますが、用途としては、合成セラミドは化粧品にのみ使用可能、植物セラミドは化粧品以外の食品にも使用可能でと成っています[※9]

相乗効果を発揮する成分

セラミドには肌の保水効果が期待されますが、肌の健康を保つためには、十分な潤いを維持することでバリア機能を強化することが大切です。そこで効果的な3大成分といわれているのが、セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンです。
ヒアルロン酸は保水性に優れた糖質の一種で、体内で皮膚や目などに存在しています。みずみずしくハリのある肌を保つ役割があり、皮膚の中では主に真皮に多く含まれています。[※10]
コラーゲンは、体を構成するタンパク質の一種です。ハリのあるみずみずしい肌を支える役割を担い、皮膚の真皮の約70%をコラーゲンが占めています。[※11]
ヒアルロン酸とコラーゲンはともに皮膚の真皮に存在していますが、セラミドのバリア機能が崩れると、外部からの刺激や細菌が真皮にまで侵入してしまい、真皮に存在するヒアルロン酸やコラーゲンもダメージを受けてしまいます。そのため肌の乾燥を予防するためにはそれぞれ単品で補うよりも一緒に補い、バリア機能を高めながら保湿していくことが効果的と考えられます。
サプリメントや化粧品にはセラミドにヒアルロン酸やコラーゲンをバランス良く加えたものも数多く市販されていますので、それらを利用してみるのもひとつです。

セラミドに副作用はあるのか

アレルギーや副作用など、セラミドによる健康被害は今のところ報告されていません。

現在セラミドのサプリメントは「機能性表示食品」として販売されているものも多くなっています。機能性表示食品とは、安全性の確保を前提とし、科学的根拠に基づいた機能性が、事業者の責任において表示されるものです[※13]。それだけセラミドの機能性についてはエビデンスが多くあるということです。
何よりセラミドはもともと人間の肌に存在する成分で、皮膚の生まれかわり(ターンオーバー)によっても日々合成されていますから比較的安全性の高い成分であるといえるでしょう。しかし、加齢、ストレス、誤ったスキンケアなどで20歳以降からはセラミドの合成量も減少するため、やはり年齢を重ねた人こそセラミドを内側・外側から補う必要があるのです。