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セルロースの効果とその作用

具体的にどんな成分なのかはわからないけれど、セルロースという言葉を見たり聞いたりしたことはある。という方も多いのではないでしょうか?セルロースは、生活のあらゆるところで役立っています。衣類・紙などあらゆる分野の製品にセルロースが使われていますが、食事でたくさんセルロースを摂取することも推奨されています。セルロースとは、一体どのような成分で、どのような効果があるのか、また効率的な摂取の仕方などを紹介します。

セルロースとはどのような成分か

セルロースとは、細胞壁及び繊維の主成分です。天然の高分子化合物の一種で、いくつものβ-グルコース分子とグリコシドが結合して直鎖状に重複しています。また、すべての植物はセルロースを主成分として含んでいて、地球上では最も多く存在する食物繊維だといわれています。もともと、セルロースは、テキスタイル、パルプやセロファンといった工業的な利用もされている成分です。しかし、近年はヘルシーな成分として注目されています。水溶性の食物繊維と溶けない不溶性の食物繊維がありますが、セルロースは不溶性の食物繊維で、無色無臭の物質で腸内で完全に消化してしまいません。しかし[※1]セルロースの1部は大腸内に存在する細菌により分解発酵されたあと、腸内で善玉菌のエサになり腸の働きを改善します。

セルロースの効果・効能

セルロースには以下のような効果・効能が報告されています。

■過食を防ぐ

食物繊維であるセルロースは、水分を含んで胃の中にとどまり満腹感が持続するため、食欲が抑えられ、過食を予防する効果があると言われています。

■血糖値の上昇を防ぐ

さらに、胃から小腸への動きもゆっくりになる為、急激に血糖値が上昇することも抑える働きも。

■便秘の改善

食物繊維であるセルロースは腸内で水分を吸収して膨張し、腸壁に働きかけるため、腸内環境が改善され、腸内のビフィズス菌も増加し便の量が増え、便秘を改善してくれるとも言われています。同時に下痢気味の人にも効果が期待できます。[※2]

■有害物質の体外排出

水に溶けにくいため、有害物質を包んでそのまま体外に排出してしまいます。発がん物質も排出するので、ガン予防にも効果が期待できます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

セルロースは不溶性の食物繊維で、難消化炭水化物です。腸内細菌の働きで発酵分解され熱量が放出されますが、放出されるエネルギー量の定量は決まっておらず、0~2 kcal/g と食品の種類や腸の状況によって変わります。また、発酵分解されるときに、腸内の善玉菌を増加させる機能があり、有害物質、例えば、発がん物質やダイオキシンなどを外に放出します。それだけではなく、腸の動きが活発になるために、[※3]整腸作用に大きく貢献しています。同時にコレステロールも除去するため、コレステロール値を抑える効果を持ちます。セルロースのような難消化炭水化物はエネルギー源と機能せず、生理機能に関わり、体内のメカニズムを整える役割の方が強いようです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

日本人は、1950年代の日本人は食物繊維を平均すると約20g以上摂取していましたが、少しずつ食生活に変化があり、好まれる食事も変わってきました。そのため、日本人が摂取している食物繊維の量は年々少なくなっていくようです。[※4]厚生労働省の調査によると、日本人の食物繊維の摂取量は1日約14gくらいだと推定されています。そのため、便秘の人が多く、また、便秘がちでありながらよく下痢にも悩まされている人が増えています。食物繊維が健康によいとわかっていても、自分で必要量を摂取しているのかどうか判断するのは難しいことです。厚生労働省によると、食物繊維を十分に摂取しているかどうかの目安は、1日に1回、毎日排便がほぼ同じ時間帯にあるかどうかだそうです。そして、理想的な便の量は約150gだと言われています。同時に、便秘気味の人で、腸の働きが良くないと皮膚の状態も悪くなる場合が多くみられます。もしも毎日排便がない状態で、大人ニキビなどの悩みがある人は、セルロースを意識して摂取するようにしましょう。

セルロースの摂取目安量・上限摂取量

アメリカやカナダで、生活習慣病患者の摂取量などから、[※5]食物繊維摂取量を割り出す試みがされています。それによると、セルロースだけではなく、食物繊維全体として成人で1日に24gが理想的と言われています。これは、水溶性食物繊維であるペクチンなども含んだ総合的な数値です。ただし、この数値が必ずしも理想的であるという保証も、日本人の体質にも合うという保証もありません。そのため、厚生労働省では、食物繊維摂取量は極端に多い量にならない範囲で、できるだけ多くの食物繊維を摂取するようにすることを推奨しています。具体的には日本人の食事摂取基準(2015年版)によれば、18~69歳では1日あたり男性20g以上、女性18g以上とされています。不溶性繊維であるセルロースは、基本的には、消化されることなく、体外に出て行ってしまいます。そのため、副作用などの可能性が低いため、特に上限摂取量というのはないと思って大丈夫です。しかし、長い間、便秘がちであったり、下痢気味であったりする人が、整腸作用があるからといきなり大量のセルロースを摂取すると、反対に腸にダメージが起きてしまうかもしれません。ですから、セルロースを摂取するときは、水溶性食物繊維とのバランスを考え、水分を十分に摂りながら、ご自最適なセルロースの摂取量を見つけていきましょう。

6. セルロースのエビデンス(科学的根拠)

不溶性食物繊維であるセルロースは安全無害な食品で、整腸作用などが期待でき、生活習慣病の予防も期待できるため、たくさん食べる方がよいのですが、現代人の生活では摂取量が減少しています。そのため、精製されたセルロースをあらゆる食品に添加していくことで、食物繊維を摂取していく方法が研究されています。たとえば[※6]「アビセル」と呼ばれる物質は、精製し乾燥したセルロースです。セルロースそのものは無味ですから、どのような食品に添加しても問題はありません。アビセルは、ソフトクリームやアイスクリーム、ケーキ、パン類など、食物繊維が不足しやすい生活をしている人が好んで食べるようなものに添加され、繊維不足が解消できます。そして、セルロースの保水性に注目して作られたのが[※6]「セキセル」です。水分を吸い込み弾力のある食感を与えることに成功しました。セキセルを利用して作られる食品は、かまぼこなどの練り製品・ハンバーグ・ソーセージ類などです。以前はこのような食品には増量剤として、あまり好ましくないものが使われていましたが、セルロースを利用したセキセルで、食品の安全性は改善されていると言えるでしょう。

研究のきっかけ(歴史・背景)

セルロースは、炭水化物の1種として、[※7]フランスの生化学者であるアンセルム・パヤン(英語読みペイヤン)が1837年から1842年の間に発見されたようです。当時はまだセルロースだけを単体で抽出できず、リグニンやペクチンと化合した状態でのみの観察でした。セルロースの発見は、当時は食べ物としてではなく、繊維を持つ素材として興味を持たれました。繊維の発見から、19世紀に入ってからパルプの工業化が始まり、紙を安価で大量に作られるようになったのです。セルロースは安定した素材で、水にも溶けず、無味無臭であるため、医薬品添加物として現在よく使われています。整形が簡単であることもあって、錠剤を作るときの結合材としても重宝な素材です。その他、水を濾過するためにも使われようとしています。セルロースは、水に混入した、大腸菌・ウイルス・人体に有害な毒素なども濾過してしまうことが可能であると言われ、東京大学でも研究が続けられています。

専門家の見解(監修者のコメント)

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所の高橋陽子氏による『繊維質と食物繊維』には、食物繊維とエネルギーの関係について下記のように述べられています。

「従来,食物繊維はエネルギー源にならないと考えられていたが,実際は,消化されない食物繊維の一部が腸内細菌により発酵分解されて短鎖脂肪酸とガスになるため,エネルギー量はゼロにはならない.また,食物繊維はタンパク質,脂質,炭水化物(糖質),ビタミン,ミネラルに次いで,ヒトに不可欠な第六の栄養素として数えられるようになっている.

食物繊維は水に溶けない不溶性(water-insoluble dietary fiber ; IDF)と水に溶ける水溶性(water-soluble dietary fiber ; SDF)に大別される.一般的に食物繊維は,食物の咀嚼回数や消化液の分泌を増加させたり,便通や腸内環境を改善したりするが,不溶性と水溶性で異なる生理作用もある.不溶性食物繊維は保水性が良く,便量の増加や腸の蠕動運動の促進,脂肪や胆汁酸,発物質等の吸着・排出作用がある。」[※8]

(高橋陽子 『繊維質と食物繊維』より引用)

加工されたセルロースであるヒドロキシプロピルセルロースに対して厚生労働省の食品安全委員会が報告した『添加物評価書 ヒドロキシプロピルメチルセルロース』では、以下が発表されています。

「体内動態に関する試験の結果から、ほとんど体内に吸収されないと考 えられる。また、毒性試験の結果から、本物質は遺伝毒性及び発がん性はなく、類 縁の加工セルロースを用いた試験結果を参考にすると生殖発生毒性も示さないと 考えられる。毒性試験で認められた主な所見は、難消化性の食物繊維を大量摂取した際にみられるものと同様、軟便等の消化管への軽度な影響であり、ヒトに高用量 の HPMC を投与した場合でも特段問題となる影響はみられなかった。これらのことから総合的に判断すると、本物質は極めて毒性の低い物質である」[※9]

(厚生労働省食品安全委員会『添加物評価書 ヒドロキシプロピルメチルセルロース』より引用)

セルロースを多く含む食べ物

セルロースは、自然界に存在する食物繊維の中で1番多いと言われていますから、ほとんどの植物の成分の1部です。[※10]ほぼ全ての野菜類、中でもトウモロコシなどや穀類や豆類に多く含まれています。野菜などは生のままですとあまりたくさん食べられませんが、煮物や汁物にするとカサが減って、食物繊維が摂取できます。また、小麦ふすまは、セルロースなどの不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がバランスよく入っているので、理想的な食べ物と言えます。そして、食物繊維が多い食べ物の筆頭は、やはり豆類です。豆類は、乾燥の状態より茹でると1.5 倍の食物繊維を持つようになり、その量はさつまいもの3.6倍と言われており、100gにつき16gもの植物繊維が含まれています。そのため、食物繊維を摂りたかったら豆類が一番。まとめて茹でて煮豆などにしておくと、お弁当のおかずに、食事の一皿にと重宝します。

相乗効果を発揮する成分

セルロースはデトックス効果もあり、便通にも効果があると言われますが、不溶性食物繊維を大量に摂取しすぎて、反対に便秘になることもあります。不溶性植物繊維は体内で水分を吸収し、柔らかく膨らみ便通を物理的に促進します。そのため、反対に水分が足りないと固いままの状態で腸に滞在するため、便秘の原因になってしまいます。セルロースを摂取するときは、水分をたくさん摂取するようにするとセルロースの効果が発揮される可能性があるのです。食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がありますが、どちらの食物繊維も必要です。片方だけたくさん摂るのではなく、両方をバランスよく摂る方が効果が期待できます。セルロースは不溶性食物繊維ですから、水溶性食物繊維であるペクチンやアルギン酸などを一緒に摂取すると効果的です。 

セルロースの副作用

セルロースは、安定した物質で、体内に入ってもほぼそのまま体外に出て行くため、特に副作用があったという報告はありません。しかし、セルロースを利用して作られた添加物であるアビセルやセキセルを使った食品に関しては、他の材料などがわからないので全く副作用がないとは言い切れません。