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カテキンの効果とその作用

主に緑茶に含まれるカテキンの効果・効能や作用について解説します。抗酸化作用や殺菌などの効果の他、最近は体脂肪減少効果が注目され、トクホの商品がいくつも販売されています。具体的にどのような仕組みで効果が発揮されるのか、副作用はないのかなど、飲用の際に気になる点を解説します。

カテキンとはどのような成分か

カテキンは主にお茶や紅茶に含まれる苦味成分で、水溶性ポリフェノールの一種です。ポリフェノールとは、植物が活性酸素から身を守るためにみずから作りだす抗酸化物質のことを指します。

カテキンは、特に緑茶に多く含まれています。本来茶葉に存在している主要なカテキンはエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの4種類です。その他、お茶には約70種類の微量のカテキンが含まれています。[※1]緑茶を飲用すると、これらのカテキンを摂取できます。

お茶の渋みはカテキンによるものですが、酸化によって重合することでタンニンとなります。

カテキンの効果・効能

カテキンの効果・効能としては以下が挙げられます。

■がんや動脈硬化、高血圧の予防

カテキンは強い抗酸化作用をもち、がんや動脈硬化、高血圧を引き起こす活性酸素を減少させます。

■抗菌・消臭効果

腸管出血性大腸菌O-157やピロリ菌をはじめとする病原菌を消毒し、嫌な臭いを除去します。[※2]また、体内でのウイルスの増殖を抑える効果があります。

■口内環境の改善

口内に存在するミュータンス菌の活動を抑え、虫歯の原因となるプラークの生成を予防します。口内環境が改善されることで、虫歯防止や口臭の防止、口内炎の予防に役立ちます。

■体脂肪を減らす

カテキンには内臓脂肪を減らす効能があり、肥満気味の人や脂肪が気になる方に適しています。

■糖尿病予防

カテキンには腸からの糖の吸収を抑え、糖尿病を予防する効果があるとされています。

どのような作用があるのか

なぜ、カテキンには多くの健康効果があるのでしょうか。

第一には、カテキンが属するポリフェノールの強い抗酸化作用が挙げられます。紫外線による酸化ダメージから葉を守るために、茶葉には多くのカテキンが含まれています。

この抗酸化作用により、がんや動脈硬化、高血圧など様々な病気の原因となる、有害な活性酸素を除去することができます。

カテキン以外の抗酸化物質として、ビタミンEが知られていますが、カテキンはビタミンEと比べて約20倍もの活性酸素除去能力を持っています。[※3]

第二には、カテキンにはさまざまな物質と結合しやすい性質があるため、においの元や雑菌とも結合しやすく、除菌・消臭効果を発揮すると考えられています。

第三に、カテキンを摂取することにより、肝臓での脂質の代謝が促進され、エネルギーの消費量が増大します。そのため、体脂肪を減らす効果があるとされています。

第四に、カテキンには血糖値を下げる効能があり、糖尿病予防や、糖尿病によって引き起こされる合併症を防げるという研究報告があります。

緑茶に含まれる主なカテキンと、効能との関係についてもまとめておきましょう。

含有するカテキンのうち約59%と、最も含有量の多い「エピガロカテキンガレート(EGCG)」は、強力な抗酸化作用と強い収れん作用、抗がん作用や抗動脈硬化作用、抗菌・消臭などの効能を持ちます。[※4]

次に含有量の多い(約19%)「エピガロカテキン(EGC)」は渋味があり、EGCGほどではないものの、強い抗酸化作用を有します。また抗がん作用、抗動脈硬化作用、抗菌、消臭などの効能があります。

約14%のエピカテキンガレート(ECG)、約6%のエピカテキン(EC)も同様に、強い抗酸化作用と抗がん作用、抗動脈硬化作用、抗菌や消臭作用を含んでいます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

カテキンは血圧が高い方、動脈硬化など血管の病気を予防したい方、糖尿病を予防したい方、肥満気味の方、内臓脂肪を気にされている方に適しています。

カテキンは偏った食生活やストレス、運動不足、飲酒や喫煙などにより、生活習慣病が気になっている方に向いています。

糖尿病や高血圧、歯周病など、生活習慣が原因で引き起こされる多くの病の予防に、カテキンは役立ちます。

また、緑茶でうがいをすることにより、虫歯や口臭・口内炎を予防したい方、風邪を予防したい方にも効果的です。

カテキンの摂取目安量・上限摂取量

カテキンの摂取量の目安は、1日に緑茶にして10杯程度とされています。急須で緑茶を淹れた場合、湯のみ1杯 (120ml) に80mgほどの茶カテキンが含まれています。[※5]

体脂肪率の減少を目的とする場合、有効摂取量は500~600mg程度です。[※6]

カテキンのエビデンス(科学的根拠)

■抗がん作用
岐阜大学の研究グループは、大腸腺腫の切除を行った患者の再発率に関して、1日に1.5gの緑茶抽出物を投与する群とそうでない群に分け、臨床的予備試験を行いました。[※7]

その結果、緑茶抽出物の投与開始から1年後(初回大腸腺腫切除1年後)の再発率は15%となり、緑茶抽出物を投与しなかった場合の再発率30%に比べ、再発が抑制されました。

再発したケースにおいても、腺腫の大きさは緑茶抽出物投与群の方が小さかったことが報告されています。

■体脂肪減少効果
花王の調査では、日本肥満学会の基準で「普通体重~肥満 (1度)」に当たる男女80名に、高濃度の茶カテキン飲料 (カテキン量588mg/340ml) を摂取する群と、市販の緑茶と同等の茶カテキンを含む飲料 (カテキン量126mg/340ml) を摂取する群に分けました。

そして、食生活や運動量などの日常生活をこれまでどおり維持した状態で、1日1本、12週間継続摂取したときの体脂肪量の変化を記録しました。[※8]

その結果、高濃度の茶カテキン飲料を摂取した群においては、71.8%の人に0.5kg以上の体重減少が認められました。

■殺菌効果
日本カテキン学会によれば、通常飲用されている濃さの緑茶エキスに大腸菌O157を加えたところ、3時間後には細菌の数は100分の1になり、5時間後には完全に死滅しました。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

カテキンの発見と研究は、1821年にドイツの化学者ルンゲが、インド産の植物であるマメ科アカシア属のアカシヤ・カチューから「カテキュー」(catechu)という生薬の分離に成功したことから始まります。

1832年にはドイツの植物学者エーゼンベックが、このルンゲが分離した物質に「カテキン」という名前をつけました。[※10]

1929年には、理化学研究所の辻村みちよ農学博士らが緑茶の成分分析を行い、茶にカテキンが含まれていることが確認されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

カテキンをはじめとするポリフェノールの研究を行っている岐阜大学の準教授、柳瀬笑子先生は、ご自身の論文において以下のように記述しています。

「茶は古くから、香りと渋味を楽しむ嗜好品としてだけでなく健康保持に良い飲料として親しまれてきた。近年では、その機能性
が再認識されるとともに抗酸化作用、抗がん作用、抗菌・抗ウイルス作用、ラジカルスカベンジング作用、虫歯予防などの生理活性が見出されて注目を集めている(Fig.1)1。(原文ママ)

茶には、日本で広く親しまれている緑茶の他、烏龍茶や紅茶など緑茶を発酵させることによってできる発酵茶があり、世界中で親しまれている茶飲料の約8割は紅茶である。

緑茶中のカテキン類や紅茶中の赤色色素テアフラビン類は、一般にポリフェノールと総称される物質の1つである。これらは茶中の主要な構成成分であり、渋味成分として、また機能性成分として重要である。そして、分子内に多数含まれるフェノール性水酸基がその性質を担っている。」[※11]

世界で飲まれている大半は紅茶ということですが、幸いにも、日本には古くから、カテキンが最も多く含まれている緑茶の飲用習慣があります。緑茶を日頃から飲用することにより、健康の維持や増進が期待できるでしょう。

カテキンを多く含む食品

カテキンを最も多く含む食品はお茶です。紅茶や烏龍茶にも含まれていますが、特に緑茶に多く含まれています。

お茶の葉は、日光を浴びる時間が長いほど多くのカテキンを生成します。緑茶のうち、玉露は茶の芽に覆いをして日光の当たる時間を制限し、カテキンの生成を抑えています。

カテキンは渋味や苦味のもとなので、こうすることで玉露は甘くなるわけですが、カテキンの効率的な摂取を目的とする場合は、玉露以外の緑茶を飲用するとよいでしょう。[※12]

最近は、カテキンの体脂肪減少効果に注目した特定保健用食品や飲料も数多く販売されています。花王の高濃度茶カテキン飲料の場合、1本あたりカテキンが588mg/340ml含まれているため、1日1本飲み続けることで体脂肪の減少が期待できます。[※13]

カテキンはお茶のほかにもりんごやぶどう、大豆やチョコレートにも含まれています。

カテキンを含む緑茶の上手な活用法

カテキンを含む緑茶は、通常は急須などを用い、茶葉にお湯を注いでいれます。しかしこれでは、カテキンやビタミンCなどの有効成分が茶葉の中に残留してしまいます。

そのため、ミキサーやお茶ひき器などで茶葉を粉末状にし、お湯を注いですべて飲むことで、有効成分をあますところなく摂取することができます。

また、カテキンは、高温のお湯に溶けだしやすいので、なるべく熱湯を用いた方がよいでしょう。[※14] カテキンは酸化しやすいので、茶葉は密閉できる容器に入れ、日光や湿気をさけて保管します。

古くなったお茶であっても、フライパンで茶葉を炒ってほうじ茶にして飲むことができます。

また賞味期限を過ぎても、カテキンの殺菌・消臭効果は残ります。お茶としての味は落ちますが、人体に害のない殺菌・消臭剤として十分活用することができます。

先ほども説明しましたが、緑茶をうがい薬として使うことで、口内を殺菌できます。口臭の予防や虫歯・口内炎の防止の他、風邪の予防や、風邪の引き始めにおいて、症状の悪化を防止する効果が期待できます。

緑茶で手を洗うとほとんどの細菌が除去されるということですので、緑茶飲料を持ち歩けばいざというときに便利です。

意外な活用法としては、古いお茶をいれて冷まし、肉や魚をその冷えたお茶にくぐらせることで、生臭さを消すことができるというもの。

熱いお茶をまな板や包丁などの殺菌に使えば、熱湯消毒とカテキンによる殺菌効果の一石二鳥です。におい残りが気になる場合などは、ぜひ試してみてください。

さらに茶葉をお茶のパックに入れ、冷蔵庫や下駄箱に置くことで、消臭効果が期待できます。

相乗効果を発揮する成分

カテキンはビタミンやミネラルと合わせて飲むことで相乗効果が期待できます。この点からも、カテキンは緑茶による摂取が効率的です。緑茶にはビタミンCやカフェインが含まれ、これらの成分により、抗酸化作用はさらに強まると考えられます。[※15]

一方でカテキンは、鉄と結合すると吸収されにくくなりますので、緑茶と鉄剤を一緒に飲むのは避けましょう。

カテキンに副作用はあるのか

カテキンを含む緑茶は日本で1000年以上にわたって飲用されており、家庭で飲むお茶や、市販されている茶飲料の摂取により、健康に悪影響はないことが報告されています。[※16]

もっとも、緑茶でカテキンを摂取する場合、緑茶にはカフェインも含まれています。カフェインを摂りすぎると不眠や吐き気、動悸などの原因になるため、注意が必要です。特に就寝前の飲用は避けた方がよいでしょう。

また、薬を常用している方の場合、高濃度茶カテキン飲料を摂取する際は、必ず医師に相談したうえで指導に従って下さい。