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カシスの効果とその作用

ポリフェノールの一種であるアントシアニンをはじめ、ビタミンやミネラルなどを豊富に含み、栄養が高い果実として知られているカシス。
カシスが持つ効果・効能が判明してから多くの研究者に注目されるようになり、さまざまな観点で研究が進められています。
ここでは、カシスの特徴や効果・効能、作用機序などについて解説しています。カシスのエビデンスや専門家の見解、カシスを使ったレシピなども紹介しています。

カシスとはどのような植物か

カシスとは、ユキノシタ目スグリ科スグリ属の植物で、主にヨーロッパの温帯地方が原産とされています。[※1]ニュージランドが産地として有名ですが、日本では主に青森県で栽培が行われています。[※2]

ブルーベリーやストロベリー、ラズベリーといったベリー類の一種で、直径1cmほど。黒に近い濃紫色の実をつけます。さわやかな香りと甘酸っぱい果肉が特徴で、日本ではジャムやデザート、リキュールなどで使用されることが多い果実です。

日本で親しまれている「カシス」という名前はフランス語であり、和名では「クロフサスグリ」、英語では「ブラックカラント」とも呼ばれています。

カシスの果実には、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが4種類含まれています。アントシアニンはブルーベリーの3~4倍もの量が含有されているだけでなく、ブルーベリーには含まれていない2種類のアントシアニン成分を含んでいることがわかっています。

ほかにも、カシスにはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。[※3]そのなかでもビタミンCはオレンジの約3倍、ビタミンEはストロベリーやオレンジの約4倍含有していることがわかっています。

このように、ポリフェノールやビタミン、ミネラルといった栄養素が豊富に含まれていることから、カシスは別名「ベリーの王様」とも呼ばれています。[※4]

また、含有する栄養素の働きによって得られる目に対する効能に関し、さまざまな分野から注目を集めています。

カシスの効果・効能

カシスには、以下のような効果・効能があることが報告されています。

■末梢血管の血流を改善

カシスに含有するアントシアニンによって、末梢血管の血流を改善する効果があります。[※5]

■緑内障の進行を抑える

末梢血管の血流が改善されることで、眼圧の上昇が抑えられます。その働きにより、緑内障の進行を抑える効果が期待されています。[※6]

■目のピント調節をサポート

アントシアニンが「毛様体筋」と呼ばれる目のなかの筋肉に働きかけることで、ピントの調節機能の改善や維持につながります。[※7]

■疲れ目の軽減

血流が改善されることで筋肉の緊張状態が和らぎ、眼精疲労が軽減します。[※8]

■目の下にできたクマの解消

アントシアニンによって末梢の血流が改善されることで顔の血流が向上し、目の下のクマの解消を促します。[※9]

■インフルエンザの予防

カシスに含まれる栄養素の働きによって引き起こされる免疫機能の向上や抗酸化作用によって、インフルエンザを予防できます。[※10]

どのような作用があるのか

カシスは、同じベリー類のブルーベリーよりアントシアニンが豊富に含まれています。このアントシアニンには末梢血管の血流を改善する作用があり、この働きが目に多くの効能をもたらすとして注目されています。[※5]

血液は末梢血管を通して全身に送られますが、その末梢血管の血流がカシスのアントシアニンによって改善されることで、眼精疲労やクマの改善に効果的だとされています。

また、末梢血管の血流不全が原因で生じる肩こりや冷え症などを緩和することも期待されています。

そして、血流を改善することで眼圧の上昇を抑えることが確認されており、緑内障の進行抑制に効果を発揮する可能性があると報告されています。[※4]

緑内障とは、眼圧の上昇などが原因で視神経に障害をきたし、部分的に見えなくなったり、視野が狭くなったりする病気です。

ほかにも、ビタミンやミネラルを多く含んでいるカシスは、高い抗酸化作用を持っています。体内で発生した活性酸素を取り除く働きがあることから、生活習慣病や老化の予防も期待できます。[※11]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

カシスには、末梢血管の血流改善によって目元の血液の流れが良くなることから、目に関する効果・効能が期待されている成分です。[※12]

血の巡りが改善されることで目の筋肉のコリをほぐす効果があることから、ピントが合いにくい人や目の疲れがとれにくい人におすすめです。

また、顔の血流が良くなることで目の下にあるクマの解消が期待されることから、クマが気になっている人も積極的に摂取すると良いでしょう。

カシスの摂取目安量・上限摂取量

カシスの食品としての摂取目安量や上限量は、とくに設けられていません。カシスの過剰摂取に関する事例は報告されていないため、量を気にせず摂取して問題ないでしょう。

ただし、カシス配合の健康食品やオイル、医薬品には、カシス以外の成分も含まれるため、各製品の用量を守って使用する必要があります。

カシスのエビデンス(科学的根拠)

札幌医科大学の大黒浩教授によって、カシスに含まれるアントシアニンの緑内障進行抑制に関する実験が行われました。[※6]

実験では、緑内障視野障害(初期~中期)のある患者38名を2グループに分類。片方にはカシスに含有するアントシアニン50mgを含んだ試験食品、もう片方のグループにはアントシアニンを含有しない偽薬食品を2年間摂取してもらいました。

その結果、カシスに含まれるアントシアニンを摂取したグループで、視野障害の進行抑制や目の血流改善が確認されました。このことから、カシスに含まれるアントシアニンには、「緑内障の進行抑制や予防に効果がある可能性がある」としています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

古代からヨーロッパの山奥に自生していたといわれているカシス。最初にカシスが食べられることを明言したのは、ルネッサンス時代の植物学者であるガスパール・ポアンだとされています。[※13]

1712年にはフランスのバーイ・ド・モンタラン神父が、カシスに関して記載した本を出版。カシスの果汁は「若返りに効果がある」「万病に効く秘薬」だと紹介しました。

その頃からカシスは少しずつ一般的に知れ渡っていき、18世紀中頃にはフランスのワイン畑の一画で薬用植物としての栽培が始まりました。乾燥させたカシスの葉はリウマチに効くとされていて、現在でもフランスでは生薬としてお店で販売されているようです。

日本では、1977年に弘前大学の農学博士によって本格的に栽培が開始されたといわれており、現在では青森県を中心にカシスの栽培が行われています。[※2]

専門家の見解

カシス摂取による目への影響について、西葛西井上眼科病院の名誉院長と日本カシス協会の会長を兼任する宮永嘉隆氏は次のように語っています。

「抗酸化成分として知られるポリフェノールの一種で、濃い紫色のもとになっている栄養素をアントシアニンといいます。カシスには4種類のアントシアニンが含まれていますが、そのうちの2種類はブルーベリーなどには含まれないカシス特有のもの。そしてこの2種類に、血流を改善したり筋肉の損傷や疲労の回復に影響があることから、目にいい影響をもたらすことがわかっています」(朝日新聞DIGITAL「目がよろこぶ栄養の宝庫」より引用)[※14]

冨永氏のコメントから、目にいい果実として広く知られるブルーベリー以上の効果が期待できると考えられます。

また最近の研究発表では、カシス摂取を続けた緑内障患者の症状抑制が報告され、緑内障治療への応用が期待されています。

緑内障治療を専門とする横幕鍼灸院の横幕胤和(よこまく たねかず)院長は、カシスについて次のような見解を述べていました。

「緑内障はじっくりと着実に進行していく病気ですが、カシスはその悪化を抑制するためにとれる一つの手段である可能性があると言えるでしょう」(緑内障治療専門 横幕鍼灸院/緑内障の予防にカシスが効果的?より引用)[※15]

現代人はパソコンやスマホなどの画面を長時間見る機会が多く、視力が低下しやすい傾向にあります。視力低下や緑内障を予防するひとつの手段として、カシスを摂取してみてはいかがでしょうか。

カシスを使ったレシピ

カシスのさわやかな酸味を活かしたジャムとムースのレシピをご紹介します。

■レシピ1:カシスジャム

【用意するもの】

  • カシス 適量
  • 砂糖 カシスの50%の量
  • 【つくり方】

    • カシスをよく洗って水気をきります
    • 底の深い鍋にカシスと砂糖を入れます
    • 中火で5~10分ほど煮つめます
    • カシスが煮崩れてきたら火をとめて粗熱をとったら完成です

    ■レシピ2:カシスムース

    【用意するもの(1人分)】

    • リーフゼラチン1枚
    • 牛乳40g
    • カシスピューレ40g
    • グラニュー糖20g
    • 生クリーム60g

    【つくり方】

    1. 冷水でふやかしたリーフゼラチンの水気をきります
    2. 牛乳を50~60度に温めてリーフゼラチンを溶かし入れます
    3. カシスピューレとグラニュー糖をボールに入れて混ぜ合わせます
    4. (2)の牛乳を(3)のボールにくわえて混ぜ合わせます
    5. 泡だて器のあとがつくまで生クリームを泡立てます
    6. (4)と(5)を混ぜ合わせます
    7. (6)をカップに入れて冷蔵庫で冷やしたら完成です

    カシスジャムはスコーンやパンケーキ、カシスムースは洋酒と相性がいいようです。

    またうれしいことに、カシスの抗酸化作用は加熱調理をしても失われません。2013年には、加熱処理によって増加したカシスの抗酸化活性成分の研究が東京家政学院大学の食品加工研究室で行われています。[※16]

    相乗効果を発揮する成分

    ポリフェノールやビタミンC、ミネラルなどの成分が含まれており、抗酸化作用が期待できるカシス。[※14]

    合わせて摂るべき成分は、コエンザイムQ10やビタミンE、DHAやEPAなど、老化防止に良いとされる成分です。カシスの有効成分と同時に摂取することで、カラダとお肌の老化を予防しましょう。

    カシスに副作用はあるのか

    2018年4月までに、カシスオイルやカシスを使った加工食品、カシスを含む医薬品などによる副作用は報告されていません。基本的に安全な果実ですが、とくべつな体質、または疾患を抱えている人は注意が必要です。

    出血性の疾患がある人はカシス摂取によって紫斑が表れたり、出血しやすくなったりする副作用リスクがあります。2週間以内に手術を控えている人は、大量出血のリスクを考慮してカシス摂取を避けてください。

    低血圧体質の人は、カシス摂取によって血圧が過度に低下する副作用リスクがあるため注意が必要です。

    また、妊婦・授乳婦のカシス摂取、乾燥させたカシスの葉の摂取に関する副作用有無のデータは不十分でした。果実は問題ないはずですが、念のためかかりつけ医に相談してから摂取するようにしましょう。[※17]

    注意すべき相互作用

    カシスとの併用摂取によって相互作用が起こりうる医薬品・ハーブ・サプリメント成分をまとめています。[※17]

    ■血圧が下がり過ぎる相互作用

    カシス摂取によって血圧が下がることがあるので、降圧薬と併用すると血圧が下がり過ぎるおそれがあります。

    【該当する医薬品】

    • ニフェジピン
    • ベラパミル塩酸塩
    • ジルチアゼム塩酸塩
    • Isradipine
    • フェロジピン
    • アムロジピンベシル酸塩など

    【該当するハーブ・サプリメント成分】

    • アンドログラフィス
    • カゼイン
    • キャッツクロー
    • コエンザイムQ10
    • 魚油
    • L-アルギニン
    • クコ
    • イラクサ
    • テアニンなど

    ■出血しやすくなる相互作用

    カシス摂取によって血が固まりにくくなることがあるので、血液凝固を抑制する医薬品と併用すると出血しやすくなります。

    【該当する医薬品】

    • アスピリン
    • クロピドグレル硫酸塩
    • ジクロフェナクナトリウム
    • イブプロフェン
    • ナプロキセン
    • ダルテパリンナトリウム
    • エノキサパリンナトリウム
    • ヘパリン
    • ワルファリンカリウム

    【該当するハーブ・サプリメント成分】

    • アンゼリカ
    • クローブ
    • タンジン
    • ニンニク
    • ショウガ
    • イチョウ
    • 朝鮮人参など

    ■発作を誘発する相互作用

    フェノチアジン系の抗精神病薬とカシスの併用、または手術中に用いられる医薬品とカシスの併用は発作を誘発するおそれがあります。

    【該当する医薬品】

    • クロルプロマジン塩酸塩
    • フルフェナジン
    • トリフロペラジン
    • 麻酔薬