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キャラウェイの効果とその作用

キャラウェイは香辛料として用いられることが多い植物です。種子の見た目がカレーで使用されるスパイス「クミン」によく似ていることから、野生クミンとも呼ばれています。日本ではスパイスとして使う家庭がほとんどですが、ルーツをたどると実は薬として使用されてきた歴史があります。

ここではキャラウェイがどんな植物なのか解説したうえで、期待できる効果効能や作用のメカニズム、摂取目安量や摂取方法などをご紹介。副作用が起こる条件や医薬品との相互作用など、気になる情報もまとめています。

キャラウェイとはどのような植物か

キャラウェイは、セリ科キャラウェイ属の植物。キャラウェイという名称のほかに、カルワイやキュンメル、姫茴香(ヒメウイキョウ)などの別名があります。

原産地は西アジアとヨーロッパ。中世から現代まで、主にスパイスとして使用されています。「キャラウェイの花に媚薬的魔力がある」という言い伝えがあり、昔はほれ薬に使用されていたそうです。

香りはさわやかで、口にするとやわらかい甘みとほのかな苦みが漂うキャラウェイ。現在は、パンやソーセージ、スープやチーズ、ザワークラウト(塩漬けキャベツを発酵させたもの)などのヨーロッパ料理に用いられています。

キャラウェイの花は小さく、花弁は少し緑がかった白です。花弁の先が花芯に向かうようにくるっと丸くなっています。種は三日月型で5mmほどの大きさ。濃い茶色に白い線が入っており、見た目はクミンによく似ています。

耐寒性をもつ植物なので、湿度の低い場所なら日本でも栽培可能です。果実(種)や葉、茎や根などを収穫できます。葉の収穫は3~8月、種と根の収穫時期は9~10月です。

春に種をまくと1年後の初夏に開花、その2か月後に実が熟すので、茎ごと刈り取って乾燥させてから使用します。[※1][※2]

キャラウェイの効果・効能

キャラウェイには次のような効果・効能があることがわかっています。[※2][※3]

■消化を促進する効果

キャラウェイは消化液の分泌量を増やす働きをもっているため、消化不良を改善できると考えられています。

■食欲不振を改善する効果

キャラウェイは胃や腸をはじめとする消化器系の調子を整えてくれるので、食欲が刺激されると考えられています。

■便秘の症状を改善する効果

キャラウェイは便をやわらかくする成分を含んでいるため、便秘の改善が期待できます。

■生理痛をやわらげる効果

キャラウェイには血流を改善する効果や収れん作用(たんぱく質を変性させ、血管や組織を縮める作用)があるとされています。この作用により、生理痛を和らげると考えられています。

■胃や腸のけいれんを抑える

キャラウェイの葉を煎じたお茶を飲むと消化液の分泌量が増えるため、消化機能が補助されて胃や腸のけいれんを抑えられます。

どのような作用があるのか

キャラウェイの作用機序は残念ながら明らかになっていません。キャラウェイに含まれるいくつかの成分が影響し合って、消化液の分泌量が増えたり、腸の機能を向上したり、便がやわらかくなったり、鎮痛効果が生まれると考えられています。

現在わかっているのは、キャラウェイに含まれる香りにリモネンが含まれていること。リモネンは強力で安定化した抗ウイルス作用をもつモノテルペン誘導体です。

また、食欲増進、血行促進、免疫力向上などの効果[※4]を合わせもっています。

リモネンがほかの成分と影響し合って、キャラウェイの作用が成り立っていることが推測できます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

キャラウェイは生理痛の症状が重い女性におすすめです。動けない、または吐き気をもよおすほどの腹部の痛みを和らげてくれます。

また、キャラウェイの香りにはリラックス作用があるので、月経時の憂鬱さも軽減してくれる可能性があります。

また、ギリシャの医者ディオスコリデスは、自身の著書で「キャラウェイ油には貧血症で顔色の悪い女性への強壮作用があると綴っています。[※1]

この見解を踏まえると、生理中に限らず、女性は積極的に摂るべきスパイスだといえます。

キャラウェイの摂取目安量・上限摂取量

機能性消化不良の場合、ペパーミントオイルとキャラウェイオイル合わせて1日50~100mg摂取してください。

植物性製品を数種類含む配合剤で摂取する場合は、1mlを1日3回摂取するのが望ましいです。[※3]

キャラウェイのエビデンス(科学的根拠)

キャラウェイに関する日本の研究データはほんどなく、詳しい効果やメカニズムは明らかになっていません。そこで今回は、キャラウェイに関するドイツの研究データを2つご紹介します。

ドイツは、医薬品医療機器連邦研究所にて「消化不良」の徴候に対するハーブエキス(キャラウェイオイルを含む)の薬理作用や臨床効果、耐容性などの調査を進めている国。

2000年には、機能性消化不良患者を96名対象とした研究が実施されました。研究で使用したのは90mgのペパーミントオイルと50mgのキャラウェイオイルを含有するPCCカプセル。対象者が28日間飲用を続けた結果、胃の圧迫感や満腹感、重苦しさを示す数値が減少したと報告されています。[※5]

また、2003年はヘリコバクター・ピロリ菌の陽性反応が出た機能性消化不良患者を対象に、キャラウェイオイルを含むPCCカプセルの飲用実験が行われ、胃の圧迫感や満腹感、重苦しさや痛みなどが改善したと報告されています。[※6]

このことから、キャラウェイは消化不良に対する効果だけでなく、ヘリコバクター・ピロリ菌によって起こる胃炎や胃潰瘍などの予防にも効果的だと考えられています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

キャラウェイは古くから世界中で愛されてきた植物です。

キャラウェイを医薬品に用いていたのは古代エジプトやギリシャ。紀元前1550年頃、パピルスの茎を重ねた紙に記載されたエジプト医学「エーベルス・パピルス」にも、キャラウェイのことが記されています。[※1]

ヨーロッパ諸国に伝わったのは紀元前3000年頃。新石器~青銅器時代につくられたスイスの湖上家屋の遺跡からキャラウェイの種子が発見され、西アジアの都市・フェネキアから輸入されたのではと推測されています。

ローマでは、消化を助ける働きを活かしてキャラウェイの種子を食べる習慣が古くからあったそうです。ローマ軍はキャラウェイの根をミルクに混ぜたもの食べながら進軍していたという話もあります。[※7]

日本でキャラウェイの存在が広まったきっかけは、明治・大正時代に流行した「カルルスせんべい」というお菓子。せんべいには、キャラウェイの種子がついていました。[※1]

キャラウェイの消化促進効果に注目して、ドイツで研究が進められるようになったのは2000年頃。そのほかの国では、「古くから体にいいとされている植物」という認識にとどまり、科学的根拠に関する研究はあまり進んでいないようです。

専門家の見解(監修者のコメント)

スパイスコーディネーター協会理事長と株式会社スパイススタジオの代表を務める武政三男氏は、自身の著書でキャラウェイについて以下のようにまとめています。

「胃痛、鼓脹、嘔吐、下痢などの胃腸障害に特に効果がある。脂っこいものを食べたあと、種子をそのまま食べれば口中清涼剤や消臭剤にもなり、精油はうがい薬としても使用できる」(「80のスパイス事典/フレグランスジャーナル社 2001年 p40」より引用)[※1]

スパイス業界の第一人者である武政氏の見解によると、キャラウェイは消化器系の調子を整える効果のほかに、消臭・抗菌などの効果も期待できるようです。

消臭・抗菌に関する研究データはありませんが、香り成分のリモネンは強力で安定化した抗ウイルス作用をもつモノテルペン誘導体なので、おそらくキャラウェイに含まれるリモネンによる効果ではないかと考えられます。

また、同書にはキャラウェイの精油に関して次のような記述がありました。

「キャラウェイの芳香成分は、リモネンとカルボンであるが、近年合成品が多くなり、天然のキャラウェイ油が暫時市場から減少する傾向がある」(「80のスパイス事典/フレグランスジャーナル社 2001年 p41」より引用)[※1]

「キャラウェイ油の偽和物としては、キャラウェイ油にオレンジ油中の成分であるリモネンを加え増量したりする。」(「80のスパイス事典/フレグランスジャーナル社 2001年 p41」より引用)[※1]

キャラウェイの精油は合成品が増えているとのことです。合成品ではなく天然のキャラウェイを摂取したい人は、キャラウェイの精油ではなく種子を購入したほうが良いでしょう。

キャラウェイの利用方法

キャラウェイの種子の見た目はクミンによく似ていますが、クミンよりもクセのない風味なのでスパイスとして使いやすいのが魅力です。種子を乾燥させて料理する、もしくは乾燥したものを粉末にして料理に混ぜるのが一般的です。

サラダやドレッシング、塩漬けキャベツやピクルス、果物など、酸味が強い食品に合います。シナモンとブレンドすると、焼きりんごやアップルパイの美味しさを惹き立てるオリジナルスパイスが完成します。

種子を粉末にしたものは、パンやケーキ、クッキーの生地に混ぜ込むと香ばしさが引き立ちます。キャラウェイの若葉は、パセリと同じ要領でサラダやスープに使いましょう。[※1][※2][※3]

一緒に摂りたいスパイス・ハーブ

キャラウェイと相性がいいのは、世界四大スパイスの1つ「シナモン」です。ブレンドしたスパイスは肉料理に最適。肉特有の臭みを消して[※1]、本来の風味を引き出してくれます。

キャラウェイとシナモンをブレンドしたスパイスは脂との相性がいいので、脂の多い豚肉や独特な脂のうまみをもつマトンやラム料理に使用すると良いでしょう。

キャラウェイに副作用はあるのか

キャラウェイは基本的に安全性の高い成分ですが、摂り過ぎや体質などの条件によっては副作用が起こります。

ペパーミントとキャラウェイの精油を併用すると、人によってはげっぷや胸やけ、悪心が起こるケースがあるそうです。

敏感肌の人は、発疹やかゆみが生じる場合もあります。そうなった場合は、速やかに摂取を中断しましょう。

また、妊娠・授乳中の女性や2週間以内に手術を控えている人は、安全性が確認されていないためキャラウェイの摂取がNGとなっています。[※3]

注意すべき相互作用

キャラウェイには血糖値を抑える働きがあります。そのため、血糖値を下げる医薬品との併用はNGです。血糖値が下がりすぎる相互作用が起きてしまうおそれがあります。

糖尿病患者の場合は、医師や薬剤師に相談したうえで、定期的な血糖値を測定しながら摂取する必要があります。糖尿病治療薬に該当する医薬品は以下です。[※3]

  • グリメピリド
  • グリブリド
  • インスリン
  • ピオグリタゾン
  • ロシグリタゾン
  • クロルプロパミド
  • グリピザイド
  • トルブタミド

参照・引用サイトおよび文献

  1. 80のスパイス事典(フレグランスジャーナル社 2001年 p40-41)
  2. 世界で使われている256種ハーブ&スパイス事典(誠文堂新光社 2013年 p48)
  3. 健康食品・サプリメント〈成分〉のすべて ナチュラルメディシン・データベース(一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター 2012年 p193-194)
  4. わかさの秘密「リモネン」
  5. Aliment Pharmacol Ther. 2003 Apr 1;17(7):975-6. Peppermint oil and caraway oil in functional dyspepsia--efficacy unaffected by H.pylori.May B, Funk P, Schneider B.
  6. Aliment Pharmacol Ther. 2000 Dec;14(12):1671-7.Efficacy and tolerability of a fixed combination of peppermint oil and carawayoil in patients suffering from functional dyspepsia.May B(1), Köhler S, Schneider B.
  7. エスビー食品株式会社「スパイス&ハーブ検索」