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カレンデュラの効果とその作用

カレンデュラは「太陽のハーブ」と呼ばれる植物。日本では一般的にキンセンカと呼ばれています。カレンデュラの名前の由来は、毎月1日に花を咲かせる習性から、ラテン語でカレンダーを意味する言葉「カレンダエ」の派生である説が濃厚です。

このページでは、カレンデュラの効果・効能、含まれる成分の働きによって起こる作用、摂取方法や副作用などの情報について解説しています。

カレンデュラとはどのような植物か

カレンデュラ(学名・Calendula officinalis L.)は、日本で仏花として知られるキク科の一日草「金盞花(キンセンカ)」を指します。花の形が金の盞(さかずき)に似ているため、この名前がつけられました。

原産は南ヨーロッパで、耐寒性に優れているのが特徴です。あまり知られていませんが、実は薬草として利用されてきた歴史があります。

別名ポットマリーゴールドと呼ばれますが、一般的に知られる園芸用のマリーゴールド(アフリカンマリーゴールド・フレンチマリーゴールド)とはまったくの別物。

キク科という大きな括りでは同じですが、園芸用のマリーゴールドはマンジュギク属であり、薬草として使われてきたカレンデュラはキンセンカ属となっています。[※1][※2]

カレンデュラの効果・効能

カレンデュラを用いた薬、ハーブティーなどによって期待できる効果・効能をまとめています。[※1][※2]

■炎症を和らげる効果

カレンデュラは、古くから粘膜炎症の民間薬として用いられてきました。風邪による喉や鼻の炎症、胃炎、口内炎、腸や肝臓の炎症などを抑える効果があるとされています。
中世では、蜂に刺された際にカレンデュラの花びらで擦ることで腫れずに済んでいたそうです。

■デトックス効果

普段あまり汗をかかず、毒素や老廃物が溜まっている人は、カレンデュラ配合のハーブティーを飲むと良いとされています。代謝機能を向上させ、発汗作用が促進されることによるデトックス効果が期待できます。

■生理痛を和らげる効果

カレンデュラ配合のハーブティーを月経前に飲むと、生理痛がやわらぐとされています。また、不安定な生理周期や出血量を整える効果も期待できます。

そのほか、科学的なデータは不十分ですが以下のよう症状・疾患に効き目があると考えられています。[※12]

  • 筋肉のけいれん
  • 発熱
  • 鼻血
  • 創傷(切創・割創・刺創・挫創・裂創・杙創・剥皮創など)
  • 静脈瘤や下腿潰瘍
  • がん

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

カレンデュラに含まれる多糖類やカロテノイド、フラボノイドの作用によって粘膜修復作用が働くと考えられていますが、残念ながら詳しいメカニズムは解明されていません。

カレンデュラの花弁には脂溶性色素のカロテノイド「ルテイン」が入っています。ルテインは、紫外線を浴びると発生する活性酸素を除去してくれる成分。ルテインの働きによって、シミやくすみを防げると考えられています。[※3]さらにカレンデュラのルテインによる保湿効果も認められています。

またマウスを使った実験では、カレンデュラから抽出したトリテルペンポリオールに抗炎症作用があると判明しました。その効果は、炎症剤に用いられるステロイドに匹敵するほど。カレンデュラの胃炎や口内炎などの炎症を抑制する働きは、このトリテルペンポリオールによるものと考えられます。[※4]

また、カレンデュラにはアンチエイジング効果をもつ成分として有名なフラボノイドも含まれています。

抗酸化作用をもつこれらの成分同士がどんな作用を起こしているのかはまだ解明されていませんが、有効成分の働きから推測すると老化防止への効果も期待できるでしょう。[※5]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

カレンデュラは、肌トラブルの要因である「炎症」を抑える働き[※2]をもっているので、美肌を目指している人におすすめのハーブです。

炎症を放置すると、皮膚のただれや色素沈着に繋がります。ニキビや吹き出物、赤ら顔や湿疹などの症状に心当たりのある人は、カレンデュラのハーブティーなどを試してみると良いでしょう。

また、シミやくすみ、たるみを引き起こす活性酸素を除去できる[※2]ので、ハリのある若々しい肌の維持にも適しています。

カレンデュラの摂取目安量・上限摂取量

カレンデュラは食用のマリーゴールドですが、厚生労働省が定める食事摂取基準には該当しませんでした。

過剰摂取によるトラブルなどの症例も見つからないため、食事やハーブティーなどで摂取する分には問題ないことが推測されます。

カレンデュラの精油を利用する場合は、日本アロマ環境協会が推奨する精油濃度(1%以下)を目安にすると良いでしょう。[※6]

カレンデュラのエビデンス(科学的根拠)

日本大学理工学部所属の秋久俊博氏は、キク科植物から抽出したトリテルペンポリオール成分の抗炎症活性について調査しています。耳殻に炎症をもつマウスにキク科花弁抽出物を投与して抗炎症活性を確かめたところ、0.03~1.0mgの抽出物投与で抗炎症効果が得られることがわかりました。

中でもキク科植物のキンセンカ(カレンデュラ)に含まれるトリオールのHeliantriolCは、現在使われているステロイド系抗炎症剤に匹敵する作用が報告されています。この研究結果から、キク科植物の抗炎症作用が明らかになりました。[※4]

また、キク科植物による抗炎症性には、活性因子としてOleanolicacid配糖体がかかわっています。キンセンカ(カレンデュラ)の花びらから抽出したCalendulaglycoside類化合物は、TPAを誘発したマウスの耳殻炎症試験において優れた抗炎症活性が確認されました。[※4]

また、同研究にてキンセンカ(カレンデュラ)に含まれる配糖体「Calenduloside F6‘-O-n-butyl ester」がNCI60ヒト腫瘍細胞株の大腸がんや白血病などに対して細胞毒性を示したと報告されています。腫瘍に対する細胞毒性から、抗腫瘍作用が推察されています。[※4]

研究のきっかけ(歴史・背景)

カレンデュラは南ヨーロッパの地中海沿岸が原産地の植物で、古代ローマ時代からカレンデュラの葉や花が料理や薬用として使われていました。[※7]

日本へは江戸時代に中国から観賞用、薬用として渡来してきたとされています。[※1]カレンデュラの正しい植物名は「トウキンセンカ」ですが、中国から来た植物として「唐」の言葉が使用され、「トウキンセンカ」という植物名になったと考えられています。

中国の明の時代(1406年)の本草書「救荒本草(きゅうこうほんぞう)」には、飢きんをしのぐ救荒植物(きゅうこうしょくぶつ)として紹介されています。

救荒本草(きゅうこうほんぞう)には金盞兒花という名で記されており、後につくられた本草鋼目(ほんぞうこうもく)には金盞草という名前で記述されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

カレンデュラに関して、熊本大学薬学部で薬用植物学を専門としていた矢原正治氏は以下のようにコメントしています。

「花、葉には消炎作用、抗菌作用があり、ヨーロッパの民間薬では外用薬として皮膚の炎症、内服では胃潰瘍、胃炎などに用いるようです」(「熊本大学薬学部/今月の薬用植物/トウキンセンカ」より引用)[※8]

カレンデュラを含む薬の処方に関して、目的とする効果によって内服か外用か決まるようです。一般的な医薬品とカレンデュラを用いた民間療法の違いについては、以下のような見解を述べています。

「現在は各種炎症には、ステロイド系抗炎症薬が開発され、治療薬の主流になっています。しかし、昔ながらの植物の方が副作用も少なく、皮膚に優しいといって利用している人もいます。長い年月の間、人を実験動物としてデータが蓄積され培われてきた、身近な薬用植物を利用した民間療法も捨てたものではありません」(「熊本大学薬学部/今月の薬用植物|トウキンセンカ」より引用)[※8]

矢原氏がコメントしているように、カレンデュラをはじめとする薬用植物には長い歴史があります。研究こそあまり進んでいないものの、民間薬の症例がたくさんあるため、安全性が確認されています。

「ただし、植物だからといっても副作用がないわけではありません。現代薬と同じように副作用(外用薬では湿疹、かぶれ等)はありますので、注意が必要です」(「熊本大学薬学部/今月の薬用植物|トウキンセンカ」より引用)[※8]

カレンデュラが材料となっている外用薬を使う場合は、副作用を避けるために用法用・量を正しく守りましょう。

カレンデュラの上手な使い方

抗炎症作用や抗菌作用などの効果が期待できるカレンデュラ。使用用途はさまざまです。

花びらはサラダにして食べたり、ハーブティーとして飲んだりできます。ハーブティーを淹れる場合は、乾燥したカレンデュラの花弁1~2gを熱湯に浸し、5~10分放置します。時間が経ったらカレンデュラをろ過してティーカップに注ぎましょう。1日3杯を3回にわけて摂取するのがカレンデュラティーの上手な摂り方です。

カレンデュラティーの飲む以外方法として、抗菌作用を活かしてうがい薬としても利用できます。

また、カレンデュラ配合のオイルや湿布を日焼けした後の肌に使用すると、炎症によるほてりが緩和されます。

肌に塗るローションや軟膏の材料にも使われており、スキンケアや軽い火傷の手当て、感染症の防止などに適しています。

ハーブティーとして摂取する場合は、完走したカレンデュラの花弁1~2gを熱湯に5~10分浸してください。ティーカップ1杯分を1日3回摂取しましょう。[※9][※12]

相性のいいハーブ

カレンデュラの炎症を抑える効果や殺菌効果を相乗させるハーブはカモミールです。

カモミールもカレンデュラ同様に抗炎症作用をもっています。カレンデュラとカモミールをブレンドしたフェイシャルスチームやハーブティーを利用することで、肌荒れ改善効果が期待できます。[※9]

カレンデュラに副作用はあるのか

カレンデュラを含む外用薬には湿疹やかぶれなどの副作用[※8]がありますが、カレンデュラそのものには基本的に副作用がありません。アメリカでは、食用マリーゴールドが調味料やスパイスとして一般的に安全な食品であることが認められています(GRAS認定)。

ただし、例外として以下の内容に該当する人は摂取を控える必要があります。

■アレルギー体質の人

カレンデュラはアレルギー反応が起こりやすい植物です。キクやブタクサ、マリーゴールド、ヒナギクなどのアレルギーをもっている人はカレンデュラアレルギーを発症しやすいので要注意。[※12]

ドイツで行なわれたアレルギーテストによると、カレンデュラアレルギーをもっている人の割合はおよそ50人に1人(443人中9名)です。[※10]

カレンデュラを摂取する前に、必ずパッチテストを行いましょう。

■妊娠中または授乳中の女性

妊婦や授乳婦のカレンデュラ摂取に関して、安全性を確認できるデータはありません。これまでに重篤な副作用は報告されていませんが、一部では妊婦にカレンデュラオイルを使用するのは禁忌だという声もあり、今後副作用が見つかる可能性もあります。

安全性を踏まえると、妊産婦はカレンデュラの摂取を控えたほうがよいでしょう。[※12]

注意すべき相互作用

カレンデュラは眠気を引き起こすため、同様に眠気を引き起こす鎮静約を併用摂取するのはNGです。相互作用として、強烈な眠気に襲われる可能性があります。[※12]

注意すべき鎮静薬は以下の4つです。

  • クロナゼパム
  • ロラゼパム
  • フェノバルビタール
  • ゾルピデム

参照・引用サイトおよび文献

  1. 基本ハーブの事典(東京堂出版 2005年 p174-176)
  2. 世界で使われる256種ハーブ&スパイス事典 (成文堂新光社 2013年 p136-137)
  3. わかさ生活「世界の素材発見 サプリメント素材図鑑」
  4. JSTAGE「天然トリテルペンの抗炎症,抗腫瘍および発がん予防機能」【PDF】
  5. 公益財団法人 長寿科学振興財団「健康長寿ネット」
  6. 公益社団法人 日本アロマ環境協会AEAJ「アロマの研究・調査」
  7. 公益財団法人 額田医学生物学研究所 額田医学生物学研究所附属病院「トウキンセンカ(カレンヂュラ)」
  8. 熊本大学薬学部/大学院薬学教育部「今月の薬用植物|トウセンカ」
  9. 基礎からよくわかるメディカルハーブLESSON(株式会社河出書房新社 2014年 p27,p93)
  10. Pommier, P. et al. Phase III randomized trial of Calendula officinalis compared with trolamine for the prevention of acute dermatitis during irradiation for breast cancer. Journal of Clinical Oncology. 2004, 22, 8, p. 1447-1453.
  11. PubMed Department of Dermatology and Venereology, University of Innsbruck, Austria. 「The seamy side of natural medicines: contact sensitization to arnica (Arnica montana L.) and marigold (Calendula officinalis L.).」 2001 Nov;45(5):269-72.
  12. 健康食品・サプリメント〈成分〉のすべて ナチュラルメディシン・データベース(一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター 2012年 p171)