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ブロッコリースプラウトの効果とその作用

ブロッコリースプラウトは、ファイトケミカルの一種である「スルフォラファン」を多く含有するほかに、カリウム、カルシウム、鉄など日頃から意識したいミネラル、β-カロテン、ビタミンK、ビタミンEなどエネルギー代謝に必要な水溶性ビタミン類を豊富に含んでいる優秀な機能性野菜です。

ブロッコリースプラウトとはどのような成分か

ブロッコリースプラウトとはブロッコリーの新芽で、ブロッコリー同様にβ-カロテンやビタミンC、ミネラルの豊富な緑黄色野菜です。

特に第7の栄養素といわれるファイトケミカル(生理機能成分)である「スルフォラファン」が注目されています。

スルフォラファンは、揮発性アリルイオウ化合物のひとつで、アブラナ科の野菜であるブロッコリーや、カブ、大根などに多く含まれます。その中で、ブロッコリースプラウトは、成熟したブロッコリーの約7倍ものスルフォラファンを含んでいます。

スルフォラファンは、植物中では「グルコシノレート」として存在し、酵素のミロシナーゼの作用によりイソチオシアネートが生成されます。イソチオシアネートの1種がスルフォラファン[※1]です。

スルフォラファンは、強い抗酸化力、殺菌・抗菌作用、血液をサラサラにする作用、LDLコレステロールの減少などの多様な効果を期待できることがわかっています。

そのほか、クロロゲン酸やβカロテン、プロトカテキュ酸など有効成分が含まれます。

ブロッコリースプラウトは、本来の野菜に含まれる微量成分を増幅させるため、特殊な技術を用いて高い含有量にした「機能性野菜」ともいわれています。

ブロッコリースプラウトの効果・効能

ブロッコリースプラウトには次のような効果があるといわれています。

ガン予防の効果

体内には、発ガン物質を無毒化し体外に排泄する「解毒酵素」が存在します。スルフォラファンは、解毒酵素の働きを活性するためガン予防効果があるといわれています。[※2]

ピロリ菌除去効果

ピロリ菌は、胃や小腸で炎症を引き起こす細菌の一種で日本人の2人に1人が保菌しているといわれています。感染経路はおもに経口感染です。

筑波大学の谷中昭典教授のスルフォラファンのピロリ菌への影響試験(動物試験)では、ブロッコリースプラウトを1日に70g、8週間摂食した結果、ピロリ菌が8分の1に減少し、摂取することを中止すると少しずつ元に回復したとの報告があります。[※3]
試験結果からスルフォラファンがもつ殺菌・抗菌作用がピロリ菌へ影響したと考えられ、また、摂取をやめると元に戻ることからも、習慣的に摂取するように心がけることが必要です。

花粉症の抑制効果

動物を用いた試験でブロッコリースプラウトのエキスにスギ花粉の花粉症を抑制する効果があると確認[※4]されました。

シミ・そばかすの予防効果

近年では5月あたりから紫外線が強くなり、肌を守る対策が必要になります。紫外線を浴びることでメラニン色素を生成する酵素チロシナーゼが活性化します。

スルフォラファンは、チロシナーゼの働きを抑制するため、シミやそばかすなどの肌トラブルを防ぎます。

肝機能改善効果

東海大学医学部付属東京病院の西崎泰弘教授研究グループとカゴメ株式会社共同でヒト試験を実施しました。

肝機能マーカーの値が高い男性を対象にスルフォラファンサプリメントを1日3粒2ヵ月間摂取してもらった結果、肝機能マーカーの値が有意に改善[※5]することが確認できました。

スルフォラファンは、肝臓の防御機構(解毒、抗酸化、抗炎症)を高めるため肝機能を改善する効果が期待できます。

ダイエット効果

スルフォラファンには、高脂肪食を摂取していても内臓脂肪を抑制する効果があり、ダイエット効果が得られると考えられます。

育毛効果

近畿大学薬学部医療薬学科公衆衛生学研究室と株式会社毛髪クリニックリーブ21の共同研究により、育毛効果があることがわかりました。

毛髪の成長に必要な毛乳頭細胞の分裂を促進(約1.8倍増加)し、遺伝子を活性化するという[※6]研究成果の報告があります。

うつ病の予防効果

うつ病発症の原因であると推測される遺伝子に、動物実験でスルフォラファンを作用させ、うつ病の予防・改善が示唆されたとの報告があります。

AGE抑制効果

AGEとは、たんぱく質と糖が結びつく熱によって変性した物質で、老化の原因のひとつといわれています。

ブロッコリースプラウトを摂取することで血中AGE濃度が減少しました。このことから、スルフォラファンがAGEの形成を抑制する効果があるとわかりました。

悪酔い防止効果

飲酒をしたときに「悪酔いする」ことがあります。悪酔いとは、飲酒後2~5時間程度で、血中アルコール濃度が高いときにおこる「不快な症状」です。

スルフォラファンが、アルコール代謝物質で悪酔いの原因である、アセドアルデヒドの代謝を促進することで悪酔いの防止効果になります。ウコンに含まれる「クルクミン」も悪酔い防止に効果があるといわれているが、スルフォラファンはクルクミンの25倍の防止効果力があります。[※3]

どのような作用があるのか(作用機序・メカニズム)

肝機能への作用

肝臓は、栄養素の代謝、有害物質の解毒作用、胆汁(脂肪の消化吸収に関与)の分泌などの重要な働きをします。肝機能が低下することで、毒素や有害物質が体内に溜まりやすくなり、疲れや病気の原因となります。

スルフォラファンは、体内で解毒酵素がつくるサポートをする働きがあり、肝機能の活性化や改善につながると考えられます。

アセドアルデヒドの代謝への作用

飲酒後、体に吸収されたアルコールはアセドアルデヒドに変換され、酢酸へと代謝されます。これがうまく代謝できずに、血中にアセドアルデヒド濃度が高くなることで、頭痛や吐き気などの悪酔いの症状を引きおこします。

カゴメ株式会社と米国のジョンズ・ホプキンス大学の研究では、スルフォラファンを摂取していると血中アセドアルデヒド濃度のピークを低くすることとができ、血液中からの消失のスピードが速くなるという動物試験の結果報告[※7]があります。

スルフォラファンは、アセドアルデヒドの代謝を促進させることで、悪酔いを軽減するとことができます。

新陳代謝への作用

スルフォラファンは、SOD酵素などの抗酸化酵素を活性化させる作用があり、活性酸素を抑制または軽減させることができます。

抗酸化物質であるグルタチオンの生成を促すので、細胞のDNAをつくるグルタチオンを失うことなく効率よく利用できます。結果、細胞分裂が活発化し、新陳代謝も活発になります。[※8]

肥満を抑制する作用

金沢大学の脳・肝インターフェースメディシン研究センターとカゴメ研究所の共同研究により、ブロッコリースプラウトエキスを含んだ高脂肪食を摂取したマウスは、体増加率が15%に抑えられ、体脂肪量の増加も抑えられました。

また、肝臓中の中性脂肪量の増加、空腹時血糖値の上昇などが抑制されたという結果[※9]もでています。

スルフォラファンを摂取することで油脂の摂り過ぎによる肥満の抑制、肥満に伴う脂肪肝や血糖値異常の抑制が示唆されました。

花粉症抑制への作用

ブロッコリースプラウトを抽出したエキスにはスルフォラファンが含まれ、炎症を起こす細胞を抑制、抗体が過剰に産生されるのを抑制するために花粉症の抑制効果が得られます。

うつ病予防への作用

うつ病は精神疾患ですが、まだ原因は明らかではありません。脳内の抗酸化作用をもつ遺伝子の転写因子「Nrf2」が低下すると炎症やストレスがあらわれ、うつ症状がおきると推測されています。千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授、大学院医学薬学府博士後期課程の姚偉氏らと東北大学の山本雅之教授、株式会社カゴメの共同研究により動物試験を実施しました。スルフォラファンの前駆体を含む餌を3週間与えると、社会的敗北ストレスから発症するうつ病を予防できる可能性を示唆する結果が出ました。[※10]

薬に頼らずに食べ物でうつ病の予防・改善ができる可能性が高まったといえるでしょう。 

発ガン物質の解毒作用

食品・タバコなどに含まれる特定の化学物質が体内に入ると、体内にある悪玉酵素より発ガン物質に変化します。体内には、悪玉酵素と逆の働きをする善玉酵素「解毒酵素」が存在します。解毒酵素は、発ガン物質を無毒化し体外へ排出します。この解毒酵素作用を、飛躍的に活性化させるのがスルフォラファンです。[※3]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ファイトケミカルであるスルフォラファンの含有量が成熟ブロッコリーよりも多く含むことで注目を集め、多岐にわたる研究がされています。

効果や作用からも、肝機能が気になる、代謝をアップしたい、肌を美しく保ちたい、抜け毛が気になる、花粉症に困っているなどの悩みをもつ人におすすめしたい食品です。

ブロッコリースプラウトを摂ることで、症状が軽減する、体調が良くなるなど、体の循環や代謝にも影響があると考えられ、また、日常的に摂取することでリスクを回避できる可能性を高めることができます。

近年では、ガン予防やうつ病に対しての研究もされています。ふたつの疾病の治療は、心身にとても大きな影響や負担を与えるものです。

食べる物から予防や改善ができるようになれば、負担も軽減できます。今後の研究成果に注目していきたい食品のひとつです。

ブロッコリースプラウトの摂取目安量・上限摂取量

ブロッコリースプラウトは医薬品ではなく野菜ですので、摂取量の制限はありません。

ブロッコリースプラウトに含まれているスルフォラファンの摂取量は、さまざまな研究等により効果をだす摂取量が1日30mgほどといわれ、ブロッコリースプラウト1.5パック分です。

スルフォラファンの含有容量は、米国BPP社調べで100gあたり以下のとおりです。

  • 成熟ブロッコリー 12mg
  • 発芽7日目のブロッコリー 100mg
  • 発芽3日目のブロッコリー 258mg

スルフォラファンの解毒酵素の働きが3日間持続するため3日に1度の摂取で良いでしょう。

最近では、サプリメントも販売されていますが、海外のものは含有量が少ない場合もあるので表記をしっかりと確認しましょう。

ブロッコリースプラウトのエビデンス(科学的根拠)

ブロッコリースプラウトに豊富に含まれるスルフォラファンの肝機能向上やガン予防、日焼け予防、     肥満抑制などへの作用や影響について、さまざまな動物・細胞・ヒト試験がおこなわれエビデンスが提示されています。

最新のデータでは、筑波大学の谷中昭典医学博士が「ブロッコリースプラウトと便通改善作用」についての研究成果を発表しています。

「酸化ストレス」が便秘の原因になることが明らかになり、スルフォラファンの抗酸化作用を高める働きが、便通の改善に効果があるのではないかと臨床試験を行いました。

48名の男女を2グループにわけ、1グループにはスルフォラファンを含むブロッコリースプラウトを、別グループには対照試験食品を1日20gずつ4週間摂食させ、便通への影響を調査。結果は便通の改善がありました。[※11]

よって、スルフォラファンの抗酸化作用が「酸化ストレス」から腸を保護することで便通改善へとつながったと考えられます。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授のポール・タラレー博士が、ブロッコリーに微量に含まれる成分スルフォラファンに、体の防御機能を高める働きがあることを1992年に発見し、よりスルフォラファンを高濃度に含むブロッコリーの品種の探索に取り組みました。

1997年にスルフォラファンの「腫瘍形成抑制効果」の研究報告をし、その後、発芽3日目のスルフォラファン新芽に成熟ブロッコリーの約20~50倍と高濃度に含まれる品種を発見しました。博士は、この特別な品種に「スーパースプラウト」と名付けました。[※12]

日本でもメディアで取り上げられ知名度が上がった「ブロッコリー スーパースプラウト」ですが、広島県にある村上農園が唯一のジョンズ・ホプキンス大学とのライセンスを持っています。

指定された高品質の原料種子を使い、定められた厳格な方法によって栽培育成し販売をおこなっています。

当時(1977年頃)の村上農園社長の村上秋人氏がポール・タラレー博士の研究に興味を示さなければ、これ程までに機能性に富み栄養価の高い食品は日本で広まらなかったでしょう。[※13]

村上農園で栽培育成されているスプラウトの品質は、自社とジョンズ・ホプキンス大学のダブルチェックが行われ、常に一定の品質を保つことで「機能性野菜」としての評価を受けています。

専門家の見解(監修者のコメント)

筑波大学教授の谷中昭典医学博士はブロッコリースプライトに関して、

「生活習慣を見直し、悪い因子を取り除くことでがん発症リスクを下げることが可能」

「悪い因子を、まったくゼロにすることはまず不可能です。悪い因子で増加する酸化ストレスを抑えるために、生体の防御系を強化することも、がん予防では重要になってきます」

「抗酸化作用にすぐれた成分を豊富に含まれているものを、賢く選ぶことが望ましいでしょう。私は、その一つとして、スルフォラファンを豊富に含むブロッコリースプラウトの可能性に期待します」(『スルフォラファン・ラボ/インタビュー』より引用)[※14]

とインタビューのなかで説明されています。

胃がんの原因にもなるピロリ菌の殺菌作用、大腸がんの原因になる便秘に対しての効果が報告され、ガン予防への可能性が出てきました。

ブロッコリースプラウトの上手な摂り方

スルフォラファンは熱に強いですが、ミロシナーゼが加熱によって壊れてしまうことから生で食べることをおすすめします。

ただし、生食が苦手なかたや調理のバリエーションがほしいというときは、加熱により有効性がゼロになるわけでありませんので、加熱調理をして摂取することも良いでしょう。

(※加熱した場合、小腸に存在する腸内細菌によってスルフォラファンに変化することを確認済み)

辛味成分がアクセントになるのでサラダやパスタやスープなどにトッピングしてもおいしくいただけます。

「よく噛む」ことも大切です。噛んで細胞を壊すことで、スルフォラファンの吸収率を高めることができます。ジュースやスムージーにして飲んでも良いでしょう。

一緒に摂るべき成分

紫外線によるダメージやシミを防ぐアスタキサンチンを含むサーモン。同じく紫外線を浴びた肌に対して、必要な栄養素であるビタミンCを多く含むグレープフルーツなどは、ブロッコリースプラウトとの相性が抜群です。

また、胆汁の分泌を促進し、肝臓の働きを助けるタウリンが含まれているサバやカツオを一緒に摂ることで、より肝臓の働きサポートしてくれます。

ブロッコリースプラウトに副作用はあるのか

ブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファン関しての副作用の報告はありません。もともと食品に含まれている物質であり、普通に摂取していれば問題はありません。

ブロッコリースプラウトには、スルフォラファン以外にもたくさんのビタミンやミネラルが含まれている栄養価の高い食品です。普通に食事をしていればビタミン・ミネラルなどの副作用も問題ありません。