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ベルガモットの効果とその作用

ベルガモットは紅茶の風味づけに使われる植物で、精油はアロマセラピーに用いられます。ベルガモットには2種類ありますが、ここでは主に柑橘類のベルガモットオレンジについて、効果・効能や作用を解説。シソ科植物のベルガモットとの違いもまとめています。

ベルガモットとは

ベルガモットには2種類の植物があります。ひとつは柑橘類のベルガモットオレンジ、もうひとつはシソ科植物のベルガモット(モナルダ)です。

ベルガモットオレンジは柑橘類の一種で、主にイタリアで栽培されている植物です。主に香料やアロマテラピーの原料として使われます。

いっぽう、シソ科植物のベルガモットは北アメリカ原産の多年草で、18の品種があります。葉や茎をハーブティーやポプリとして利用します。

この2つはよく似た爽やかな香りを持ちますが、精油として一般的に利用されているのはベルガモットオレンジのほうです。

ベルガモットオレンジの実は苦く、食用として使われることがないことから、香料や精油に加工されます。精油は甘くフレッシュな香りで、気分を落ち着かせる効果やリフレッシュ効果があるといわれています。

販売されている紅茶のアールグレイは、ベルガモットで香りづけした紅茶です。

ベルガモットには柑橘類に含まれるリモネンのほか、酢酸リナリルやリナロールなどの成分が含まれています。[※1][※2]特に鎮静や抗炎症に効果的な酢酸リナリルの含有量が多い[※3]ため、ベルガモットにはいくつかの効能が期待できます。

ベルガモットの効果・効能

ベルガモットには以下のような効能があるといわれています。[※1][※2][※3]

■消化不良の改善

ベルガモットの香りには消化器不良や腹痛をともなうガスだまりなどを改善するはたらきがあります。

■炎症を抑える

ベルガモットオイルは炎症を起こしている部分の症状を軽減するはたらきがわかっています。

■感染症予防

ベルガモットオイルには消毒作用があり、肌の状態を整える、細菌の感染を防ぐなどの効果が期待できます。

■痛みを抑える

ベルガモットに多く含まれるリナロールと酢酸リナリルには鎮痛作用があります。

■緊張をやわらげる

鎮静作用があるため、緊張をやわらげてリラックスすることができます。緊張型の頭痛にも有効です。

■気分をリフレッシュさせる

ベルガモットは強壮作用があり、神経にはたらきかけて気分をリフレッシュさせてくれます。

どのような作用があるのか

ベルガモットは鎮静作用があるハーブです。研究では、ベルガモットの香りをかぐことで気分が落ち着き、リラックス効果を得られることが証明されています。[※1][※2][※3]極度の緊張が原因で起こる頭痛や冷や汗などにも効果があるようです。

また、神経系に対する強壮作用も知られています。ベルガモットに含まれる酢酸リナリルは神経に作用し、落ち込んだ気分をリフレッシュさせてくれるのです。[※2]そのため、神経が高ぶってストレスやイライラを感じるときは、ベルガモットの香りが良いとされています。

酢酸リナリルには炎症を軽減する作用も報告されています。バスオイルや芳香浴としてベルガモットの精油を用いると、ひどくなった炎症を抑えられるようです。[※3][※4]

実験では鎮痛作用も確認されているので、炎症にともなう痛みも軽くなるでしょう。

ベルガモットオイルは消化器系の不調を改善する効果も期待できるとされています。

さらにマッサージの際にベルガモットオイルを使うことで、ベルガモットが持つ消毒作用が炎症や感染症などを防いでくれるといわれています。[※1][※2]

また、食欲の調整にかかわるリモネンが含まれているため、食欲不振も合わせて改善できると考えられています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ベルガモットは消化器症状の改善に役立つ成分です。そのため、消化不良の場合は、ベルガモットの精油を使ってみると良いでしょう。

また食べ過ぎやお酒の飲み過ぎによって胃もたれを起こしがちな人は、ベルガモットを使った芳香浴やアロマセラピーを試してみてください。

また、ベルガモットの精油は希釈してローションやトリートメントに入れると、抗菌作用と炎症を抑える効果によって肌の調子を整えられます。そのため、肌荒れしやすい人やニキビができやすい人に適しています。

ベルガモットの摂取目安量・上限摂取量

ベルガモットに関して、摂取量や上限量などは詳しくわかっていません。

精油の場合は商品によっても異なりますが、数滴ほどなら体への悪影響はないと考えられます。

精油は水やお湯と一緒に容器に入れ、部屋に香りをただよわせる芳香浴として使用するのが一般的。

食品の風味づけとして使ったりする場合は1~3滴ほど使用するのが良いでしょう。

ベルガモットのエビデンス(科学的根拠)

ベルガモットは香気成分が多く含まれていることから、アロマテラピーに良く使われています。香気成分は精神的なリラックスをもたらすだけでなく、自律神経のバランスを整えたり睡眠の質を良くしたりといった効果を持っていることが研究によりわかっています。

京都府立医科大学大学院の渡邉映理氏は、ベルガモットの精油を蒸気として取り入れたときの自律神経への影響を調べています。

42名の健康な女性を3つのグループに分け、何もしていない状態、ディフューザーを使った状態、ベルガモットの精油とディフューザーを使った状態を、それぞれのグループで順番を変えて試験。その後、心拍数の計測と調査票の記入をしてもらい、調査前と調査後の結果を比較しました。

その結果、精油とディフューザーを使った状態では、何もしていない状態と比べて心拍数の低下が見られました。また、アンケートでは、抑うつや疲労、混乱などの状態が改善されたことがわかっています。

このことから、ベルガモットの香りには自律神経の乱れから起こる症状を抑制するはたらきがあると考えられています。[※5]

ほかにも、大阪電気通信大学医療福祉工学部健康スポーツ科学科の武田ひとみらは、アロマテラピーが睡眠の質に及ぼす影響を報告しています。

研究では19名の男女にベルガモットの精油を使った芳香浴とアロマテラピーを受けてもらい、テストを実施しました。

試験中はリストバンド型のモニタ装置を使い、対象者の自宅生活を観察。普段通りの状態と芳香浴をしている状態、アロマテラピーを受けた後の睡眠状態と、起きた後の気分を調査しています。

試験の前後で、疲労感やストレス、緊張、イライラなどの低下が見られ、眠気やリラックス感、起きたときの爽快感などが増していることがわかりました。

この試験から、ベルガモットを使った芳香浴やアロマテラピーに睡眠改善の作用があることが示唆されています。[※6]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ベルガモットの名前は、産地であるイタリアの都市ベルガモが由来です。伝承ではコロンブスがベルガモットの木を発見し、イタリアやスペインに持ち帰ったため流通したといわれています。

ベルガモ近隣の土地でベルガモットの果皮やオイルが民間療法として使われていたことから、地名が植物名として定着したと考えられます。

シソ科の植物にベルガモット(モナルダ)という植物がありますが、こちらはベルガモットに香りが似ていることから名づけられたようです。

ベルガモットが初めに香料として使われたのは、ヨーロッパです。ヨーロッパ各国では紅茶がよく飲まれており、ベルガモット油で香りづけしたアールグレイもその頃に登場しました。フレーバーティーの元祖ともいえるアールグレイは、イギリス王室をはじめ、多くの王室で愛飲されたとのこと。

近年ではベルガモットの持つ作用が明らかになり、さまざまな効果が報告されるようになりました。現在も含有成分について研究・分析が進められています。

専門家の見解(監修者のコメント)

ベルガモットは甘くサッパリとした香りを持つ柑橘類で、アロマオイルとして利用されることが多いようです。そのため、調香師やアロマセラピストなどにとってはなじみ深い成分。

ベルガモットラボ代表・アロマテラピーインストラクターの対馬眞代氏は、ベルガモットの香りについてこう述べています。

「ベルガモットのエッセンシャルオイルは、フローラルとシトラスの香りをあわせもった、リラックス効果とリフレッシュ効果のあるバランスのとれた香りです」

(ベルガモットラボ「ベルガモットラボとは|アロマテラピー×キャリアデザイン ベルガモットラボ」より引用)[※7]

ベルガモットはリラックスとリフレッシュ、両方の効果を持つとされており、弱った神経や高ぶった神経を元に戻し、落ち着かせてくれる成分です。普段からストレスを感じやすく、イライラする・緊張することが多い人は、ベルガモットオイルを使うことで過ごしやすくなるかもしれません。

また、ベルガモットは紅茶の香りにも利用されており、アールグレイの香りとして知られています。最近では紅茶にベルガモットオイルを垂らして、アールグレイティーに似たフレーバーをつくる人もいるようです。

しかし自分で紅茶にオイルを混ぜる場合、注意しなくてはいけないこともあります。

「市販されているベルガモットオイルは食用には適さないものがほとんどですから、自分でアールグレイを作ってみたい方は十分な知識が必要です」

(All About「アールグレイの香りの正体を探る」より引用)[※8]

Orangery Tea代表の桑原珠玉氏は、ベルガモットオイルについて説明するとともに、自分でアールグレイをつくる場合はオイルの選定が重要だとしています。

市販のベルガモットオイルは食用ではないものが多く、そのまま使ってしまうと体に悪影響を及ぼす場合があるからです。紅茶でベルガモットの香りを楽しみたいなら、食用に適したベルガモットオイルを選びましょう。

ベルガモットの活用方法

ベルガモットは精油として抽出されたものが市販されており、精油を使って芳香浴やアロマセラピーなどを楽しめます。

コップにベルガモットオイルを数滴入れて水を混ぜるだけで、部屋での芳香浴が可能に。また、温かいお湯に混ぜると蒸気に香りが混ざり、簡易的なアロマセラピーができます。

ベルガモットの香りにはリラックスや気分のリフレッシュを促す成分が含まれているため、香りを楽しみながら精神的な安定が得られるでしょう。

そのほかにも精油をそのまま使うのではなく、希釈して皮膚に塗ると肌を整える効果が期待できます。消毒や抗菌などの作用があるため、ニキビやヘルペスなどにも効果的。

ベルガモットオイルを水で薄めて、マッサージオイルや保湿剤として使うのがおすすめです。[※1][※2]

ベルガモットは食品の香りにも使われており、アールグレイやお酒のベルガモットリキュールなど、香りを活かした飲み物もあります。

相乗効果を発揮する成分

ベルガモットはさまざまな精油と相性が良く、マッサージやアロマ、お風呂などに使うオイルとしてブレンドするのに最適です。

特に同じリラックス効果を持つカモミールやジャスミンなどと合わせることで、より気分が落ち着きやすくなります。

リフレッシュ作用を強く出したいときには、メリッサやローズマリーなどの精油とブレンドすると良いでしょう。

ベルガモットに副作用はあるのか

ベルガモットは、食べ物に含まれる程度の量を摂取するのであれば安全です。ただし、柑橘類の精油には「光毒性」があるため、注意が必要です。皮膚に塗ると光を感じやすくなり、光過敏症になったり皮膚がんにかかりやすくなったりします。[※9]

小児や妊娠中・授乳期間中の人に対しての安全性が確認されていないため、使わないでください。特に小児では多量のベルガモットを使うと命に関わることがあるので、注意が必要です。

注意すべき相互作用

ベルガモットの精油を肌に使うと光の感度が上がり、日焼けや発疹などの症状が出る光過敏症を引き起こす可能性があります。[※9]

病院で処方される薬剤の中にも光過敏症を起こりやすくするものがあり、ベルガモットと合わせてとると水ぶくれや発疹の症状がひどくなるといわれています。

光の感度を上げる作用は主にニューキノロン系の抗菌剤や循環器系の薬に見られるため、それらの薬を服用している人はベルガモットを使わないようにしてください。[※9]

参照・引用サイトおよび文献

  1. スーザン・カーティス著『アロマセラピー エッセンシャルオイルブック』(双葉社 1997年7月発行 p52-53)
  2. 渡邊聡子監修『アロマテラピーのきほん事典』(西東社 2010年10月発行 p86)
  3. 【PDF】一般社団法人 日本青果物輸出入安全推進協会「菜果フォーラムvol.20」(2015年夏 p9)
  4. 千葉直樹著『香りで痛みをやわらげる』(フレグランスジャーナル社 2011年12月発行 p57,p62-63)
  5. 【PDF】渡邉映理「ベルガモット精油の蒸気が自律神経系および情動に及ぼす効果」(日本心理学会大会 第78回 一般論文ポスター発表)
  6. 【PDF】武田ひとみ「アロマテラピーの嗅覚刺激と触刺激が睡眠の質に及ぼす影響」(アロマテラピー学雑誌Vol.17 No.1 2016 p24-30)
  7. ベルガモットラボ「ベルガモットラボとは|アロマテラピー×キャリアデザイン ベルガモットラボ」
  8. All About「アールグレイの香りの正体を探る」
  9. 鈴木洋著『カラー版 健康食品・サプリメントの事典』(医歯薬出版株式会社 2011年2月発行 p871)