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アスコルビン酸の効果とその作用

アスコルビン酸とはビタミンCのことです。天然由来のものと、トウモロコなどから合成されたL-アスコルビン酸がありますが、化学式や構造、効果・効能などは同じです。アスコルビン酸は栄養強化を目的としたサプリメントや医薬品に、食品の酸化を防止する目的で食品添加物としても利用されています。

アスコルビン酸とはどのような成分か

アスコルビン酸とは、栄養素としてはビタミンCと呼ばれる有機化合物の一種です。水に溶けやすい水溶性の成分で、柑橘類や野菜に多く含まれています。

ヒトの体を健康に保つために欠かせない成分ですが、体内で生合成をすることができず、食品やサプリメントなどで摂取する必要があります。[※1]

アスコルビン酸という名前は、ペットボトルのお茶やジュース、菓子パンなどの加工食品の成分表示の中でよく見かけられます。これは、アスコルビン酸が食品の酸化防止剤として広く利用されているためです。

成分表示の中では「L-アスコルビン酸」とも表記されていますが、化学構造式や特徴、効果などは、L-アスコルビン酸、アスコルビン酸、ビタミンCはともに同じです。アスコルビン酸にほかの成分を加えた、「アスコルビン酸ナトリウム」「アスコルビン酸カルシウム」などもあります。

アスコルビン酸には果物や野菜などに含まれる天然の由来のものと、トウモロコシや大豆などから合成されたものがあります。合成は天然のアスコルビン酸に比べて効率よくビタミンCを補給できることや価格が安いこともあり、医薬品や食品添加物にはおもに合成のアスコルビン酸が使用されています。[※2]

合成のアスコルビン酸にはL-アスコルビン酸とD-アスコルビン酸がありますが、D-アスコルビン酸は体内で栄養素としては働きません。

製造されているアスコルビン酸はおよそ3分の1が医薬品としてビタミン製剤に、残りは食品の酸化防止などを目的とした添加物に利用されているといわれています。[※3]

アスコルビン酸の効果・効能

アスコルビン酸の効果・効能は、ビタミンCで知られているものと同様です。

抗酸化作用、免疫機能の強化、美肌効果、動脈硬化の予防、骨の発育サポートや血管の強化など、その効果は多岐にわたります。

欠乏すると疲労感や歯肉の炎症、皮膚の斑点、関節痛、傷が治りにくくなるなどの症状があらわれることがあります。また、毛細血管が弱くなり、出血が起こりやすくなる壊血病を発症する恐れがあります。[※4]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

アスコルビン酸は酸化防止剤としてさまざまな食品に添加されていますが、アスコルビン酸はどうして食品の酸化を防いでくれるのでしょうか?

食品は空気中の酸素に触れることで、時間とともに変質したり劣化したりしてしまう、酸化という現象が起こります。皮をむいたリンゴを放置していたら茶色くなっていた、これが酸化です。味や色が変わるだけではなく、とくに油脂類では酸化により有害物質が発生することもあります。[※5]

アスコルビン酸には還元性があります。還元性があるということは、「自分が酸化することで、相手を還元させる物質である」ということです。食品にアスコルビン酸を添加すると、みずからが酸化することで還元作用が働き、食品の味や風味、色などが劣化することを防いでくれます。

アスコルビン酸が体に対する抗酸化作用があるというのも、この還元性によるものです。体内で過剰に発生した活性酸素が細胞を酸化させるのを、還元力によって抑えてくれます。[※1]

ちなみに、酸化防止剤の目的として使用されているアスコルビン酸の摂取では、栄養素を補う効果を期待することはできません。栄養素としてのアスコルビン酸を補いたい場合は、アスコルビン酸が含まれている食べ物や、栄養機能食品、サプリメントなどを摂る必要があります。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

外食やコンビニ食が多い人などで、果物や野菜を毎日こまめに摂取することが難しい場合、アスコルビン酸は不足しがちです。

タバコを吸う人や偏食気味な人なども、通常より不足する恐れがあります。アスコルビン酸には、錠剤やタブレットのタイプもありますが、原末のアスコルビン酸は比較的安価で継続利用しやすいようです。

味はそのままでは飲みにくいので、オレンジジュースなどに入れて飲むと気にならなくなります。[※6]ただし原末は持ち運びに工夫が必要なので、外出が多い人には錠剤やタブレットタイプが便利かもしれません。

アスコルビン酸は体外に排出されやすいので、一日のうちでもこまめに摂取する必要があります。朝昼晩の食事のときや、食間のおやつに摂るなどと決めて、習慣づけるとよいでしょう。

アスコルビン酸の摂取目安量・上限摂取量

年齢により異なりますが、アスコルビン酸(ビタミンC)の厚生労働省による成人男女の1日の推奨量は100mgです。最低でも1日6~12mg摂取していれば壊血病(ビタミンC欠乏症)の発症リスクはないといわれています。妊娠中や授乳中は通常より1日10mg多く摂取することが推奨されています。[※7]

多く摂取しても吸収されず尿として体外に排出されるため、上限値は定められていませんが、1日3~4gの摂取で、下痢などが起こる恐れがあります。

一方、食品添加物としてのアスコルビン酸についての規定量は明確に定められていません。現実には、果実や野菜の加工品には0.01~0.5%、ペットボトル飲料などには0.02~0.1%のアスコルビン酸が添加されているとの報告があります。[※8]

また、24mg~1000mgのアスコルビン酸が含まれている食品は、ビタミンCの栄養機能食品として販売することが認められています。[※9]

アスコルビン酸のエビデンス(科学的根拠)

栄養素としてのビタミンCであるアスコルビン酸の健康効果を示すデータは数多くありますが、研究で使用されているビタミンCのほとんどは合成のアスコルビン酸です。[※10]

アスコルビン酸には天然と合成があります。一般的に、天然は安全、合成は危険というイメージがありますが、これについての科学的根拠はありません。アスコルビン酸は合成であっても大量に、長期間投与しても副作用はほとんどあらわれないことが報告されています。[※11]

被験者24名に対してアスコルビン酸を28日間1000-4000 mg/日投与した実験、被験者520名に対して3年間500 mg/日のアスコルビン酸を投与した実験においても、大きな副作用は認められなかったという報告があります。[※12]

研究のきっかけ(歴史・背景)

アスコルビン酸(ascorbic acid)という名前は、抗(anti)+壊血病(scurvy)+酸(acid)からきています。

アスコルビン酸の研究が進められた背景には、古くから船乗りたちが悩まされた壊血病、つまりビタミンC欠乏症があります。

オレンジなどの果物や果物を摂ることで壊血病を予防できることは1750年頃からすでに知られていました。しかし長期間にわたる航海で、果物や野菜を摂り続けることは難しく、壊血病をなくすことは困難な状況でした。

1933年、イギリスの有機化学者ウォルター・ノーマン・ハースにアスコルビン酸の構造が発見され、壊血病の予防や治療の道が開かれることになります。

同年にはタデウシュ・ライヒスタインがアスコルビン酸の合成に成功。翌1934年にはハースもイギリスの化学者であるエドムンド・ハーストと共同研究により、アスコルビン酸の合成に成功します。

ハースは、1937年にビタミンCの構造研究が認められ、ノーベル化学賞を受賞しました。

アスコルビン酸の工業的生産は1935年頃から広まり、現在アスコルビン酸は医薬品成分として病気の治療や予防に、またサプリメントや食品の酸化防止剤にと、世界中で利用されています。

いまやアスコルビン酸(ビタミンC)は誰もが知る有機化合物のひとつです。[※13]

専門家の見解(監修者のコメント)

二度のノーベル賞を受賞したライナス・ポーリングは、アスコルビン酸を大量摂取することで風邪の予防やがんの治療に臨床応用できることを提唱した第一人者です。

現在、高濃度ビタミンC点滴療法は抗がん作用やがんの予防などが期待される治療法としてアメリカやカナダを中心に、医療機関で導入されています。[※14]

アスコルビン酸とがん治療の関係ついては賛否両論があります。帝京大学教授で医学博士の諏訪邦夫氏はWEBサイトに載せた記事の中で、

「「効くのかもしれないが、決定的な証拠はない」というのが結論です。効くとしても、「どういう患者・がんの種類・状況で有効か不明」です。 」
[※15](がんサポート インターネットで探るがん情報 「ビタミンC大量投与の効果には、決定的な証拠はない」 より引用)

と記し、論文を調べ上げた結果、がん治療の有効性については決定的な証拠が得られないとの見解を示しました。

アスコルビン酸の大量投与によるがん治療の有効性については今度のさらなる研究による解明が待たれますが、高濃度ビタミンC点滴療法では、大量投与による副作用の報告がほとんどないことも注目すべきポイントです。[※16]

ビタミンCの臨床試験に用いられているのは、合成されたアスコルビン酸です。天然に比べて合成のアスコルビン酸には、危険であるというイメージがつきまといがちですが、その理由のひとつに挙げられるのが、合成のアスコルビン酸の原料となるトウモロコシや大豆、イモ類が遺伝子組み換え作物である可能性です。

これについては、オーソモレキュラー医学ニュースの編集長であるアメリカのアンドリュー・W・ソウルが

「ビタミンCは、アスコルビン酸、C6H8O6であり、まさにそれだけのことである。(中略)たとえこの分子が、私が反対しているGMO(遺伝子組み換え生物)に由来していても、分子的に問題はない。炭素原子も、水素原子も、酸素原子も、遺伝子組み換えすることはできない。」[※10]
(オーソモレキュラー医学ニュースサービス「アスコルビン酸としてのビタミンC:本当の話は?」より引用)

と、合成アスコルビン酸に肯定的な見方を示しています。

また、食品添加物としてのアスコルビン酸の安全性については、日本の食品安全員会で、安全性に懸念がないと評価され「食品添加物あるいはビタミンCの栄養補助剤として使用される条件で、ADI※を特定しない」[※8]ものとされています。

※ADIとは許容される1日の摂取量のこと

アスコルビン酸を多く含む食べ物

アスコルビン酸は、野菜や果物全般、イモ類に豊富に含まれています。アスコルビン酸は酸化しやすい成分で、熱や光、酸素によって影響を受けやすい特徴があり、加熱のしすぎや長期保存によって、減少してしまいます。

アスコルビン酸を壊さないように食品を保存するためには、冷凍保存がおすすめです。[※17]

アスコルビン酸を効率よく、より多く摂取したい場合は、サプリメントや原末などを利用するのもひとつの方法です。

相乗効果を発揮する成分

アスコルビン酸はビタミンEやカロチノイドなどのほかの抗酸化物質と一緒に摂ることで相乗効果を発揮し、体内での作用が高まります。

野菜や果物などにはもともとアスコルビン酸に加えてビタミンEやカロチノイド、ポリフェノールなどのさまざまな抗酸化物質が存在しています。

これは、食事から栄養素を摂ることの大きなメリットであり、単体の栄養素をサプリメントなどで摂ることが食事に及ばないゆえんでもあります。

アスコルビン酸をサプリメントで摂取する場合も、マルチビタミンなどほかの抗酸化物質も一緒に含まれたサプリメントを選ぶなどして、アスコルビン酸を効率よく吸収できるよう心掛けてみましょう。[※6]

アスコルビン酸に副作用はあるのか

アスコルビン酸に、重大な副作用の報告は今のところありません。ただし、過剰に摂取することで、下痢や嘔吐などの症状が一時的にあらわれることがあります。