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アーティチョークの効果とその作用

日本では、あまりなじみない野菜・アーティチョークですが、海外では食物繊維が豊富で「ファイバーフード」とも言われる、人気の野菜です。研究では生活習慣病の予防などに効果があることがわかっています。どのような野菜なのか、成分、効能、調理法などを説明していきます。

アーティチョークとはどのような野菜か

アーティチョークとは、キク科チョウセンアザミ属の野菜で、和名では【朝鮮あざみ】。主に「がくの付け根」と「花部分」を食用とし、葉は薬草とされ、観賞用としても楽しまれています。[※1]

食用部分の主な栄養成分は炭水化物、食物繊維、カリウム、カルシウム、ナイアシン、葉酸、パントテン酸などがあります。

炭水化物(11.3g/100g中)を多く含ますが、そのほとんどが食物繊維(8.7g/100g中)です。そのなかでも水溶性食物繊維(6.1g/100g)を多く含んでいます。[※2]

さらにフラボノイドや苦味質(シナリンなど)、クロロゲン酸なども豊富に含みます。

現在の産地は、アメリカのカリフォルニア州・ヨーロッパ南部・ニュージーランドなど、ほとんどが輸入品です。日本での生産量は少ないですが、神奈川・徳島・長野・九州などでも栽培されています。

旬の時期は5~6月で、日本での生産量が少ないためレストランや、輸入野菜の取扱い店などで入手できます。[※3]

アーティチョークの効果・効能

アーティチョークには次のような効果があるといわれています。

■コレステロールを低下させる

さまざまな文献や資料によると、「アーティチョークの抽出液」にはコレステロール低下の効果が期待できると考えられています[※5]。コレステロールとは脂質の一種で、脳細胞・神経組織・肝臓などに存在し、細胞膜の構成成分など体に必要な成分です。肝臓体内で合成され、毎日生成されています。

体内には必要な成分ですが、血液中にコレステロールか過剰な状態になることで、動脈硬化の原因となります。[※4]

■血糖の急上昇を抑える

アーティチョークには水溶性食物繊維が多く含まれることから、血糖値の急上昇を防ぐ働きが期待できると考えられています。2017年ごろから「糖質オフ」ブームが起こり、糖質摂取量を制限しながらダイエットする人が増えています。さらに「糖尿病の疑いがある人」は年々増え続け1000万人を超えているという統計データがあり、国民病のひとつとして認識されています。

血糖値とは「血液中のグルコース濃度」のことで、食事をすると膵臓から「インスリン」が分泌されますが、インスリンには血糖値を下げる働きがあります。先天的な疾患でインスリンが分泌されない、量が少ない、インスリンの働きが低下している状態が糖尿病です。原因としては、先天的なもの、生活習慣などが関係しています。水溶性食物繊維により粘性が出ることで、でんぷん吸収速度が遅くなり、食後の血糖値の急上昇を防ぐ働きがあります。

■腸内環境を整え便秘予防・解消

アーティチョークは食物繊維の中でも、水溶性食物繊維を多く含んでいます。水溶性の食物繊維は、大腸内で発酵・分解され、ビフィズス菌を増やして腸内環境を整える働きがあります。

食物繊維とは「ヒトの消化酵素で消化できない食品の難消化性成分の総体」と定義されています。食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」があります。

■高血圧の予防効果

アーティチョークにはカリウム(430㎎/100中)が豊富に含まれているため、高血圧予防効果が期待できます。[※2]血圧とは、血液が心臓から送りだされた時の血管壁へかかる圧力のことですが、高血圧という自覚症状はあまりなく、「サイレントキラー」とも言われるほど危険な状態です。

血圧が高い状態が続くと脳卒中や心筋梗塞、など大きな循環器系の病気を発症するリスクが高まります。カリウムとナトリウムは細胞内外で濃度を一定に保つ働きがありますが、カリウムは余分なナトリウムを尿として排出するよう促がします。この調整作用により血圧を安定させると考えられています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

アーティチョークに多く含まれる水溶性食物繊維にはコレステロール低下や急な血糖値の急上昇を防ぐ、腸内環境を整えるなどの作用があります。

ドイツではアーティチョークの葉や根は薬用ハーブとして「肝機能保護効果」があると期待され、消化器系の薬として使用されています。

アーティチョークの有効成分のひとつに「シナリン」という生理活性物質がありますが、信頼性の高い文献や研究発表は見当たりません。

ただこのシナリンには、味覚レセプターの働きを阻害することがわかっており、アーティチョークを食べた後のほかの食べ物や水などを、甘く感じさせる作用があります。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

生活習慣病の予防をしたい方、健康診断などでコレステロール値が高めな方、便秘気味な方、血糖コントロールが気になる方に摂取してもらいたい食材のひとつです。

飲酒などで肝機能に不安がある方にもおすすめですが、アーティチョークだけで改善されるわけではない、ということを知っておきましょう。

アーティチョークの摂取目安量・上限摂取量

アーティチョークとしての摂取目標量や上限摂取量はありませんが、食物繊維としての摂取量は設定されています。

摂取目標量は、男性は1日20g以上、女性は1日18g以上(18歳~69歳)とされています。[※7]

アーティチョークは100g中に含まれる食物繊維が8.7gで、野菜の中では食物繊維が多いとされるごぼうよりも多く食物繊維が含まれている食材です。[※2]

食用部分はほぼ安全といわれていますが、安全性に関する検証データは、見当たりません。特に葉の抽出液などの大量摂取は避けたほうが良いでしょう。

アーティチョークのエビデンス(科学的根拠)

■高コレステロールの患者92名を対象とした試験でチョウセンアゼミの抽出液を8週間摂取させたところ、総コレステロール、LDLコレステロールの低下やHDLコレステロール(善玉コレステロール)の上昇が確認されています。[※5]

■ドイツにて143名を対象に行われた試験でも、総コレステロール、LDLコレステロールの低下が見られ、アーティチョークの抽出液がコレステロールを下げる働きが期待できるとの結果が出ています。[※8]

■フランスで行われた臨床試験では、45名にコレステロールは高く治療していなかった高コレステロール疾患(健康な人を15名含む)に対し、アーティチョーク葉抽出液を含む栄養補助食品を4週間、推奨量の2倍摂取させました。その結果、2倍摂取したグループはLDLコレステロールの低下には有効でしたが、フランスで定められている推奨量と比較しても変化はありませんでした。[※9]この結果を元に考察すると、多く摂取してもそれ以上の効果は期待できないと考えられます。

■イタリアで過体重または、肥満の「空腹時血糖異常」がある男女55名対象にチョウセンアゼミ(アーティチョーク)花抽出液を8週間摂取する試験が行われました。空腹時血糖値総コレステロール・LDLコレステロールの低下が認められましたが、インスリンやHDLコレステロールなどには影響が認められませんでした。[※10]上記のように、コレステロールについてはたくさんの文献があり、「総コレステロール・LDLコレステロールの低下」は結果が一致していますが、「HDLコレステロールの増加」については研究結果に差があるようです。

■アーティチョーク葉の抽出液により過敏性腸症候群と関連する症状に対して、6週間で症状が軽減された[※11]。との研究結果が出ました。

■ドイツにて機能性消化不良の治療におけるアーティチョークの葉の抽出液が有効との試験結果が報告されました。244名対象にした試験では、6週間後に改善がみられました。[※12]このほかにも、消化機能の改善の研究結果が報告されていますが、研究内容が「自己報告の消化不良を有する健康な人」を対象に研究するなど、信頼性が低いようです。それでも、伝統的なハーブ療法として同様の結果が報告されているため、今後研究が進めば確実なエビデンスが得られる可能性はあります。

■動物実験において、「アーティチョークの葉の抽出液が肝臓のコレステロール合成を間接的に阻害する可能性がある」との報告がされました。[※13]

■ドイツにおいてラット肝細胞の動物実験で、アーティチョークの葉の抽出液から抗酸化作用、保護機能を有する結果が出まし」た。[※14]

研究のきっかけ(歴史・背景)

原産地は地中海のカナリア諸島で15世紀ごろにはイタリアで栽培が始まったと言われ、その後他国へ広まったとされます。日本では江戸時代の中期に栽培の記録があります。

アーティチョークの名前の由来は「大きなあざみ」という意味で、アラビア語の「アル・カルチュフ」が、スペイン語の「アルカルチョーフ」、さらに英語になったものとされています。[※3]

専門家の見解(監修者のコメント)

アーティチョークの抽出液は「お酒の代謝を高める」とされ欧州では、「二日酔いに効くサプリメント」として大流行しました。

英国Exeter and Plymouth大学補完医療部門のMax H. Pittler氏らは厳密な臨床試験を実施し、「二日酔いに効果なし」との結果を発表。2003年、カナダ医師会の学術誌にも「アーティチョークに二日酔いの効果がない」と掲載しました。(日経メディカル「アーティチョークに二日酔いの予防効果なし/英研究」より引用)[※15]

上記のように、食品の効果や効能などさまざまな情報がひとり歩きする傾向があります。特に治療中の人は、正確な情報や医師への相談が必要であると考えます。

アーティチョークの下処理と調理法

【アーティチョークの下処理】

  1. ガクのすぐ下で切落とし、切り口に輪切りレモンを1枚のせるか、酢水に軽くつけ、タコ糸を十字架にしばります(ガク がバラバラになるのを防ぐ)。
  2. 鍋にアーティチョークを加え、水がひたひたになるくらいまで入れ火にかけます。沸騰したら上下を入れ替え約20~30分茹でます。
  3. 茹で上がったら、ザルに取りそのまま冷まします。
  4. 外側のガクを取り除き、食用部分の花の中心「花芯」を食べます。

※アクが強いので調理法としては茹でると癖なく食べやすいですが、水溶性食物繊維やカリウムの流失が気になる場合は、蒸し器で約30分蒸すと良いでしょう。

【アーティチョーク調理法】

下茹でしたアーティチョークをバターソルトやお好みのソースで素材のホクホク感を楽しむのがおすすめです。

パスタの具や、スープ、サラダなどに入れても美味しく食べられます。オイル漬けの食品などもあります。

茹でない場合のレシピ例としては、表面のガクを取り除き、先端を切り落として軸の皮もそぎ取ります。食べやすい大きさに切り、フリットやオーブン焼きなどの具材としても使用できます。

選び方は、丸い膨らみがあり、肉厚で「がく」が開いていないもの。鮮度が落ちると「がく」の付け根が紫色に変色します。日持ちしない野菜なのでビニール袋に入れ、冷蔵庫で保存又は、早めに調理がおすすめです。

調理時茹でこぼすと、水溶性食物繊維やカリウムが流出してしまうため、効率的に摂取するには蒸す調理がおすすめです。[※6]

相乗効果を発揮する成分

アーティチョークには食物繊維を豊富に含むため、腸内環境を整える効果があります。乳酸菌を含む乳製品(ヨーグルト)や、納豆菌やキムチなどの発酵食品を一緒に摂取すると、相乗効果でさらに腸内環境を整える効果が期待できます。

アーティチョークに副作用はあるのか

副作用ではありませんが、アーティチョークに含まれるシナリンには味覚を阻害する働きがあるため、あとの食べ物や水を甘く感じさせてしまう作用があります。そのため、ワインや日本酒などの本来の風味がわかりにくくなるとも言われています。

さらにシナリンには肝機能を高める働きがあるといわれていますが、正確な文献が見当たらないため、肝機能疾患を治療中の方は、葉のエキスやサプリなどの摂取は避けたほうが良いでしょう。

食品中に含まれる量の摂取はほとんど安全であるとされていますが、妊婦・授乳期・薬を服用中の方は十分なデータがないため、念のため医師に相談しましょう。

またキク科のアレルギーがある方、慢性腎臓病などの腎疾患でカリウム制限を受けている人は摂取を避けましょう。[※16]