アメリカのセレブの中でアーモンドを食べる健康法が話題になってから、日本でも2013年頃からアーモンドが注目されるようになりました。美容や健康などの効果がある食材として注目され、さらに食後の高血糖を抑える食品としても、研究されています。ここではアーモンドに含まれる成分がどのような作用があるのか、説明していきます。
アーモンドは、バラ科サクラ属の種実類で、温暖で乾燥したアメリカ・カリフォルニア州や地中海沿岸諸国が主な産地です。
アーモンドには甘仁種と苦仁種があり、普通食用とするのは甘仁種で、苦仁種は香りがよいため、アーモンドエッセンスの原料やパンやケーキなどのお菓子に使うのが一般的です。[※1]
脂質のほか、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛など体の調子を整えるミネラルのバランスも優れています。さらに抗酸化作用のあるビタミンEが多く含まれています。
細胞膜における脂質の酸化を防ぎ、細胞の強化につながる老化防止や美容にも役立ちます。そのほか、ビタミンB1には糖質を効率的にエネルギーに変える働きがあるので、疲労回復にも効果的です。食物繊維は、11.8%と非常に多く、不溶性食物繊維による整腸作用があります。
アーモンドの脂肪酸組成の約70%は一価不飽和脂肪酸で構成されており、特にオレイン酸を99%含みます。オレイン酸は、オリーブオイルなどにも多く含まれる成分です。[※2]
善玉コレステロールを維持し、悪玉コレステロールの増加抑止や生活習慣病に効果が期待できます。しかし、脂質が豊富な分、カロリーも高いので摂取量には注意が必要です。
アーモンドの成分には次のような効果があるといわれています。
■アンチエイジング
体の老化の原因は、「酸化」と「糖化」といわれています。
酸化とは紫外線やストレスなどによって発生した活性酸素により、細胞が傷つくことをさします。脂質が酸化してできた過酸化脂質は、血管の炎症を進め、肌であれば色素沈着やシワの原因をつくります。これらが老化の原因1つです。
体内の過酸化脂質を減らすには、活性酸素を抑制する役割をもつ「抗酸化物質」が有効的です。アーモンドに含まれるビタミンEは、強力な抗酸化作用があり、活性酸素の働きを抑える作用があるため「若返りのビタミン」とも呼ばれています。[※3]
また亜鉛は新しい細胞形成に重要な役割があり、不足すると細胞分裂が阻害されるため、新陳代謝や成長に欠かせません。細胞分裂が活発な皮膚や粘膜の健康維持にかかわり、美肌や美髪のためのターンオーバーにも効果があります。
さらに現在、老化物質として終末糖化産物(AGEs)が注目されています。終末糖化産物(AGEs)は糖化したたんぱく質から発生する物質です。体の機能を低下させて老化を進めます。
糖尿病やアルツハイマー病、パーキンソン病などの神経性疾患、白内障などさまざまな病気や症状にAGEsが関与しています。
また近年、血管や皮膚の老化との関連が指摘されるようになりました。アーモンドには、ビタミンEやポリフェノールなどの抗酸化物質やマグネシウムなどのミネラルなどが含まれ、食物中のAGEsを身体に吸収させない、または身体の中でAGEsを作らせない作用があることが分かってきました。
■生活習慣病予防
生活習慣病とは、食習慣、運動習慣、休養の取り方、嗜好などの生活習慣によって糖尿病、高血圧、動脈硬化など多くの疾病の発症や進行に深くかかわります。
オレイン酸はLDLコレステロールを低下させる働きがあり、動脈硬化、高血圧、心疾患などの生活習慣病を予防、改善する効果も期待できます。
■便秘解消
便秘は、ダイエットによる食事量の減少や野菜不足、炭水化物抜きなど、食物繊維不足や運動不足で腸の動きが鈍くなることが主な原因です。
食物繊維は水溶性と不溶性の2種類がありますが、アーモンドは不溶性食物繊維が多く含まれています。
不溶性食物繊維は、腸内で水分を吸収してふくらみ、便の量を増やします。腸管が刺激されることで、蠕動運動を促し、排便をスムーズにしてくれます。
また体内の有害物質を吸着して、便と一緒に排泄するデトックス効果や、体内の余分なコレステロールや胆汁酸の排出も促し、悪玉コレステロールを下げる働きもあります。
アーモンド(乾)の食物繊維は100g当たり10.1gと豊富で、くるみ(7.5g)やカシューナッツ(6.7g)などの種実類と比較しても多く含まれています。[※4]
■疲労回復
ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変えるときに重要な役割を果たすビタミンです。ビタミンB1が不足すると、ご飯やパン、麺類から糖質を摂取しても効率よくエネルギーに変えることができません。
エネルギーにならなかった糖質は乳酸やピルビン酸などの疲労物質として体内に蓄積されるため疲れやすくなってしまいます。
また脳は、糖質以外の栄養素をエネルギー源として使えないので、ビタミンB1が不足することで、必要なエネルギーが補えなくなるだけでなく、脳の働きも低下してしまいます。
■骨粗鬆症予防
日本人が不足しがちなミネラルの1つであるカルシウムは、非常に吸収されにくく、効率の良い摂取が必要とされます。
アーモンドには骨や歯に必要なカルシウムだけではなく、骨芽細胞に働きかけて、骨の中に入るカルシウム量を調節するマグネシウムも含まれています。
マグネシウムが不足するとカルシウムが骨に行き渡らなくなり、骨がすかすかになるため、骨粗鬆症を引き起こします。
さらにマグネシウムは、骨密度増加や骨折予防の効果もあるとされています。[※5]
人の血液中にあるコレステロールは、善玉コレステロール(HDL)や悪玉コレステロール(LDL)という形で存在しています。体内で悪玉コレステロールが酸化されると、超悪玉コレステロールとなって血管壁内に沈着して、動脈硬化や高血圧、糖尿病などの生活習慣病の原因になります。
アーモンドに多く含まれる脂肪酸であるオレイン酸は善玉コレステロールを下げずに悪玉コレステロールだけを下げる成分として、近年、注目されている成分です。また、食物繊維も豊富であることから、糖質や脂質など吸収を緩やかにする働きが期待できます。
エネルギーの過剰摂取、食事からコレステロールの過剰摂取、運動不足などが原因で過剰増殖した悪玉コレステロールを抑制し、冠状動脈性心疾患を減少させる働きがあります。[※6]
食事と食事の間が空いてしまう人や甘いものを間食としやすい人は、食物繊維が多いアーモンドで空腹感を満たすことができます。
アーモンドは硬く、他の食品よりも比較的噛む回数が増えます。良く噛むと脳の視床下部にある満腹中枢が刺激され、少量でも満足感も得られます。
またオレイン酸は、動脈硬化など生活習慣病の予防にも期待ができます。さらにおなかの調子を整えたい方は、食物繊維の摂取ができるので向いています。
アーモンドとしての摂取目安量や上限摂取量はありませんが、1日に25g(約150kcal)を目安に摂取すると健康効果があるといわれています。[※7]
ただしアーモンドは100gあたり587kcalとエネルギーが高いので、食べ過ぎないように注意しましょう。
また味がついているアーモンドは塩分の摂り過ぎにつながるので、無塩ノンフライである素焼きのアーモンドを利用することがおすすめです。
アーモンドは、食後血糖値の上昇を抑えることは知られていました。しかし、もっと「適切なタイミング」やその「機能成分」に関する報告はありませんでした。グリコ健康科学研究所では、将来の人の臨床試験も見据えながら、マウスを用いた動物実験でその詳細を分析しました。[※8]
食後血糖値の上昇を抑制する「アーモンドを摂取するタイミング」の検証では、アーモンドと糖質の同時摂取で、食後高血糖値の上昇は低下、インスリンの分泌も促進された試験結果を発表しています。
一晩絶食させたマウスに対して、タイミングを変えて3種の試験食(1:皮付きローストアーモンドペースト水溶液4g/kg、2:難消化性デキストリン0.4g/kg、3:蒸留水(対照))を投与した場合の、糖質摂取後の血糖値に与える影響を検証したものです。
その結果、糖質摂取30分前のアーモンド摂取では食後血糖値の上昇は対照群と同程度でしたが、糖質摂取と同時のアーモンド摂取は食後血糖値の上昇は低下、インスリンの分泌も促進されています。
アーモンドが日本に渡来したのは、江戸時代に南蛮船でポルトガル人が持ち込んだのが最初と言われています。[※9]
ナッツ研究の第一人者である慶応義塾大学医学部教授 井上浩義氏が学会でアメリカに行った際、友人に誘われてアーモンド農家を訪ねたことがきっかけといわれています。
「欧米人は、往々にして日本人より見かけの老化が早いのに、ファーマーのおじいさん、おばあさんの肌がとてもきれいだったんです。日焼けしているけれど、皺はまったくない。理由を尋ねると『アーモンドを食べ続けているからさ』と。冗談かと思いましたが、アーモンドが思いのほかおいしかったこともあり、それ以来、私も食べ続けることにしました」
(引用1日25粒今すぐ始めたいナッツ健康法)
その結果、数ヶ月で体重が約5kg減少し、長年悩んでいた顔の吹き出物もなくなり、そこで薬理効果を調べたところ、アーモンドの優れた栄養素に気づき、研究を始めたといわれます。[※10]
ナッツ研究の第一人者の井上教授によると、
とコメントしています。アーモンドを摂取することは、現代の日本人が不足がちな食物繊維やビタミンEが補える
日本人の食事摂取基準2015によると、食物繊維の目標量は成人男性20g/日、成人女性は18g/日となっています。しかし国民栄養調査の結果によると14.2gと目標量を下回っています。[※11]
食物繊維をあと3g摂取できると目標量に近づきます。不足分の食物繊維3gは毎日アーモンド25粒で摂ることができます。また現代は様々な酸化ストレスにさらされていますが、この酸化ストレスから全身の細胞を守ってくれるのはアーモンドに含まれているビタミンEです。
また、井上教授の研究結果によると、アーモンドにダイエット効果があることが明らかになりました。
アーモンドにはリパーゼ阻害の成分が含まれています。リパーゼとは、脂肪を分解する酵素で、その働きを阻害します。そのため、体内に入ってきた脂肪が分解・吸収されずに体外へ排出されるので、ダイエット効果的であると考えられています。
またアーモンドと一緒に炭水化物や砂糖を摂取すると、ブドウ糖まで分解せず、糖が吸収されないまま排出されます。そのため血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
米国を中心にスーパーフードとして注目されたアーモンドミルクは、日本では2015年頃から「第3のミルク」として市場は拡大してきています。
アーモンドミルクはアーモンドと水からできている植物性飲料で、ビタミンやミネラルを丸ごととり入れられます。さらに液状なのでアーモンドをそのまま食べるよりも吸収率が高いことが魅力です。
アーモンドミルクは市販もされていますが、自分で作ることも可能です。手順としては、生のアーモンドを一晩から二晩、水につけておきます。水につけておいたアーモンドをざるにあけ、皮をむき、ジューサーで1~2分撹拌して、ガーゼで濾した液がアーモンドミルクです。
また低脂肪、低糖質、コレステロールがゼロで乳糖やグルテンを含まないので、これらに過敏な人も安心して摂取できます。[※12]
抗酸化作用のあるビタミンCと一緒に摂取に摂取することで、酸化されたビタミンEを修復する作用もあり、さらに抗酸化力がアップします。
また高カカオチョコレートとアーモンドを摂取すると排便回数や便量の増加にもなります。実験では、カカオ70%のアーモンド入りチョコを1日8粒、8週間継続摂取させる群(36人)に対し、アーモンド入りチョコを全く摂取しなかった群(35人)と比較したところ、排便回数は、摂取した群では1週間に約2回の増加、便量も約1.6倍に増えたという結果も出ています。[※13]
食品ですので、副作用はないですが、アーモンドはカロリーが高い点は注意が必要です。
たくさん摂取するとエネルギーの過剰となります。また不溶性食物繊維を1度に摂取するとお腹が張ることもあるので、食べる量は気をつける必要があります
食事摂取基準2015では脂肪エネルギー比率を成人男性20~30%、成人女性20~30%としています。アーモンドは100g当たり51.8g含まれているので、食べ過ぎると肥満の原因になります。