アルギン酸の効果とその作用

アルギン酸の効果効能やその作用機序、副作用などについてくわしく解説しています。アルギン酸は昆布やワカメなどのヌメリ成分の正体です。天然の食物繊維として、コレステロール値を下げ、高血圧を抑制する効果、腸内環境を整える効果などが知られています。アルギン酸を使用した食品は機能性表示食品としても認められていて、生活習慣病の予防に役立つ成分として注目されています。

アルギン酸とはどのような成分か

アルギン酸は酸性の多糖体で、おもに昆布やワカメなどの海藻類に含まれるヌメリ成分です。アルギン酸はマンヌロン酸とグルロン酸という2種類のウロン酸により構成されています。この2種類の結合比率によって、やわらかさや弾力が異なります。[※1]

昆布の中では、アルギン酸はカルシウムやマグネシウムなどのミネラルと結合して、ゆるいゼリーのような状態になっています。

アルギン酸はおもに昆布やワカメなどの褐藻類から抽出されていますが、 褐藻類には全長60mの巨大なものもあるなど種類が豊富。世界中の海から採取することができます。そのためアルギン酸は安定的に供給することが可能になっています。[※2]

抽出されたアルギン酸はそのままでは水に溶けないため、ナトリウムやカリウムなどで中和して、「アルギン酸ナトリウム」や「アルギン酸カリウム」という状態で利用されています。

カルシウムと結合させた「アルギン酸カルシウム」は、水に溶けない物質で、アルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウムなどと組み合わせて利用します。ほかにも、アルギン酸とプロピレングリコールをエステル結合させた「アルギン酸エステル」などが食品添加物として使用されています。

使用目的や用途によって、アルギン酸と中和する成分やその濃度などを変え、食品添加物やサプリメント、医薬品としてなど、幅広く利用することが可能になります。

低分子化アルギン酸ナトリウムは「コレステロールが高めの方」や「お腹の調子が気になる方」に役立つとして厚生労働省に認められた特定保健用食品(トクホ)にも関与成分として使用されています。[※3]

食品添加物としては、パンや麺類など小麦粉製品の食感を向上させ、生地を補強するといった品質の改良に利用されたり、増粘剤やゲル化剤としてプリンやゼリー、ジャムなどにも使用されたりしています。

また、錠剤の崩壊剤や胃壁の保護の用途で医薬品に、保水などの目的で化粧品にも利用されます。被膜を作って口紅がカップなどに移るのを防止する作用があることから、いわゆる「落ちない口紅」にもアルギン酸が利用されています。[※4]

アルギン酸はJECFA(FAOとWHOの合同食品添加物専門家会合)などでも認められている、安全な添加物のひとつです。

FAOとは国際連合食糧農業機関、WHOとは世界保健機関のことです。

アルギン酸の効果・効能

アルギン酸には以下の効果・効能があるとされています。

■コレステロール値の低下

アルギン酸は、腸内の余分なコレステロールや胆汁酸を包みこんで、便と一緒に体外に排出する作用を持つとされています。動物実験の結果からも、コレステロール値や血清脂質を低下させる作用が認められています。[※5]

■血圧を下げる

アルギン酸の中でもとくに、アルギン酸カリウムやアルギン酸カルシウムは、ナトリウムイオンを体外に排出し、血中のナトリウムを追い出す作用に優れ、高血圧抑制に効果的に働きます。[※1]血圧を上昇させ、生活習慣病の原因にもなる食塩(ナトリウム)の調整に役立ちます。

■消化を助ける

アルギン酸ナトリウムには、腸内のアミラーゼやプロテアーゼといった消化酵素の働きを促進する作用があります。そのため、食事とともに摂取することで、消化を助ける効果が期待できます。[※1]

■便秘解消やダイエット

アルギン酸は海の食物繊維とも呼ばれる物質です。腸に溜まった老廃物を便として体外に排出し、腸内環境を整える働きが期待されています。また、体内ではほとんど消化吸収されないため、摂取カロリーを抑えてくれます。

そのほかにも、アルギン酸は、放射性ストロンチウムの吸収を阻害する作用も注目され、研究が進められています。[※6]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

アルギン酸はマンヌロン酸とグルロン酸という2種類のウロン酸により構成されています。ウロン酸の持つカルボキシル基は、イオン置換反応(陽イオンと陰イオンを交換する化学反応)を持っています。

体内でほとんど消化されずに体外へ排出されるアルギン酸ですが、そのさいに、体内ではイオンを交換が行われ、ナトリウムイオンなどの陽イオンと結びつき、体外に排出する作用があるとされています。

アルギン酸の中でもとくにアルギン酸カリウムは、ナトリウムを体外へ排出する機能にすぐれていることが、動物実験の結果からも認められています。[※7]

また、アルギン酸カリウムは、アルギン酸ナトリウムに比べ、高血圧の原因になるナトリウムが添加されていないことも血圧を抑制する意味では大きなメリットです。

食品などに利用されるアルギン酸というと、一般的にはアルギン酸ナトリウムを指すことが多かったのですが、最近ではこのようなアルギン酸カリウムの生理機能に注目が集まりつつあります。

とくに健康食品などにおいては、アルギン酸カリウムの利用が進んでいくことが予想されます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

アルギン酸はとくにコレステロール値が気になる人に役立つとされる成分です。

コレステロール値の上昇は、動脈硬化のリスクと深く関わっています。動脈硬化とは、血管の内側にさまざまな成分が付着して血管が固くなり、劣化した状態のことです。

動脈硬化が進むと、血管の中がせまくなったり詰まったりして血流の流れが悪くなり、臓器や組織に酸素や栄養がいきわたらなくなります。最悪の場合細胞が壊死し、血管が破裂するなどして命の危険にもさらされます。

通常体内では善玉コレステロールが余分な悪玉コレステロールを肝臓に運び、血液中のバランスがとれていますが、悪玉コレステロールが増えると、善玉コレステロールの働きが追いつかなくなり、血管のなかにコレステロールが蓄積されていきます。

この蓄積されたコレステロールが、動脈硬化の要因のひとつになるのです。[※8]

アルギン酸には、コレステロール値を下げる作用に加えて、動脈硬化を悪化させる高血圧の予防効果や、食物繊維をとることによるダイエット効果・メタボリックシンドロームの予防効果も期待されます。

乱れた食生活や運動不足、喫煙や過度のストレスなどを自覚している人は、意識して摂取するとよいでしょう。

アルギン酸の摂取目安量・上限摂取量

アルギン酸は食品添加物として安全性が高い物質と考えられています。JECFA(FAOとWHOの合同食品添加物専門家会合)の評価でも、「アルギン酸のADI(1日の摂取許容量)を特定しない」とされています。[※9]

健康成分としてのアルギン酸の摂取量について、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」などには明記されていません。ただアルギン酸は食物繊維として考えられるため、おおよその目安として食物繊維の摂取量が参考にできそうです。

食物繊維の日本人の摂取目標量は、18~69歳までの男性で1日20g以上、女性で1日18g以上とされています。[※11]

ただし、アルギン酸エステルだけは、JECFA においてADIが「0~70mg/kg体重」と設定されています。アルギン酸エステルは、水・油両方の乳化作用を持ち、おもに麺やパンなどの小麦粉食品をふっくらとさせたり、生地を強くしたりといった目的で、使用されている成分です。[※10]

アルギン酸のエビデンス(科学的根拠)

アルギン酸の高血圧を抑制する作用については、以下の動物実験からもその効果が示唆されています。

高血圧自然発症ラットにアルギン酸塩を与えた実験では、1%食塩負荷にもかかわらず血圧の上昇が抑制され、また糞便中でのナトリウム排泄量が増加しました。

この実験から、ナトリウムの吸収を阻害する作用がほかの食物繊維よりも高いことが認められました。[※12]

研究のきっかけ(歴史・背景)

アルギン酸は1883年スコットランドで初めて単離

され、海藻(Algae)から得られる酸性物質という理由から「Alginic acid」と命名されました。

日本では初めの頃、海藻酸やコンブ酸などとも和訳されていましたが、現在ではアルギン酸という名前で統一されています。[※13]

アルギン酸は各国で工業的に生産されていて、食品添加物や食物繊維、サプリメント、医薬品、さらに工業製品の原料としても幅広く利用されています。

日本では低分子化アルギン酸ナトリウムが機能性表示食品の関与成分としても使用されていて、生活習慣病の予防効果のある成分としても注目されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

アルギン酸の専門メーカーである(株)キミカの宮島千尋氏は、アルギン酸ナトリウムの溶液の粘性(粘度)の大小によるバリエーションの多さについて言及しています。一例として、

「ディップソースなどの増粘に利用する場合には高粘度タイプのものを選定すべきであるし、アルギン酸ナトリウムを食物繊維として利用する場合にはなるべく多くの量を配合できるよう、超低粘度タイプが選択される」(引用)[※13]

ということを挙げています。

アルギン酸ナトリウムを適切に選択することで、幅広い用途への使用が可能になっていることを説明しています。

また、アルギン酸カリウムとアルギン酸カルシウムについては

「ナトリウムイオンの対外排出効果が高いことが知られており、生理活性機能の面でも注目されている」(引用)[※13]

として、高血圧の抑制効果が示唆されていることにも言及しています。

アルギン酸の安全性については、

「アルギン酸とその塩類およびアルギン酸エステルは、食物アレルギーや狂牛病、GMO、残留農薬などにも一切関係がなく、また生分解性に優れた地球に優しい物質でもある。あらゆる場面で安心してお使いいただきたい素材である」(引用)[※13]

との見解を示しています。

アルギン酸を多く含む食べ物

アルギン酸は昆布やワカメ、ヒジキ、もずく、めかぶなどの褐藻類に含まれる成分です。これらの食材は、味噌汁の具や、和え物などの副菜でおなじみです。

褐藻類にはほかにも、不足しがちなビタミンやミネラル、鉄分なども含まれているため、食事に取り入れることで、栄養バランスがよくなります。

一汁三菜を基本とする伝統的な和食のメニューには、昆布やワカメをはじめとする褐藻類が取り入れられています。

日本人らしい食生活を心がければ、知らず知らずのうちに生活習慣病が予防できるともいえるのです。

相乗効果を発揮する成分

アルギン酸を含む海藻類は、納豆や豆腐などの大豆製品との相性がよい食材です。

ワカメなどの海藻類と豆腐を合わせた「海藻サラダ」や、めかぶと納豆と合わせた「めかぶ納豆」などは、少ないカロリーで満足感を得られることもあり、ダイエットの定番メニューとしてもポピュラーです。

大豆製品は植物性の良質なたんぱく質として知られていて、栄養素のバランスがとてもよい食材です。アルギン酸を含む海藻類と大豆製品の相乗効果により、高い健康効果が期待できます。

アルギン酸に副作用はあるのか

アルギン酸は天然の海藻から抽出された成分であり、国連機関(JECFA)でADI(1日の許容摂取量)が特定されていませんので、食品中および食品添加物としては、安全に摂取できる食品です。

ただし、アルギン酸を摂取するために、海藻類を毎日過剰に摂取することは避けましょう。海藻に含まれるヨウ素(ヨード)は甲状腺ホルモンを産生しますが、過剰に摂取しすぎると、逆に甲状腺の機能を弱めてしまうことがあります。

とくにバセドウ病や橋本病など甲状腺疾患を持つ人は、甲状腺機能低下症を発症する恐れがあるため、過剰摂取には注意が必要です。[※14]