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甜茶の効果とその作用

中国の健康茶である甜茶のうち、バラ科の「甜葉懸鈎子」について学ぶサイトです。花粉症に効くとされる甜茶の効果・効能や作用のメカニズム、科学的なデータなどを掲載しています。甜茶を購入する際や飲用する際の注意点、効果的な飲み方、副作用の有無についても解説します。

甜茶とはどのような健康食品か

甜茶は、中国では「甘いお茶」の総称で、日本人が普段飲んでいるお茶(ツバキ科ツバキ属)とは違う種類の茶です。

甜茶は主に4種類が知られています。バラ科キイチゴ属の「甜葉懸鈎子(テンヨウケンコウシ)」、アカネ科の「牛白籐(ギュウハクトウ)」 、ユキノシタ科の「臘蓮繍球(ロウレンシュウキュウ)」、ブナ科の「多穂石柯葉(タスイセキカヨウ)」があります。[※1]

甜茶のうち、花粉症やアレルギーに対する予防・改善効果があるとされているのが、「甜葉懸鈎子」です。

甜茶には、甜茶ポリフェノールのほか、独特の甘みのもととなるルブソサイドという成分が含まれています。また、カリウムやカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルが含まれます。[※2]

当サイトでは、甜茶のうち「甜葉懸鈎子」の効能についてご紹介します。

甜茶の効果・効能

甜茶の効果としては、以下のものが挙げられます。

■抗炎症・抗アレルギー効果

甜茶に含まれるポリフェノールには抗炎症作用や抗アレルギー作用があることが報告されています。[※2]

花粉症の他、ハウスダストなどのアレルギー予防の効果や、アトピー性皮膚炎の症状改善作用があることが示されています。[※3]

■虫歯・歯周病の予防

甜茶の成分により、歯周病の原因菌が歯に付着するのを防ぎ、歯周病を予防することが報告されています。また、甜茶の甘味成分は砂糖ではないため、虫歯の原因となりません。

■血糖値の上昇抑制

甜茶ポリフェノールには、食後の急な血糖値の上昇を抑える効果があるとされ、糖尿病予防効果が期待できます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

■アレルギー症状のメカニズム

花粉症などのアレルギーや炎症には、体内にある「ヒスタミン」という物質が深く関わっています。

ヒスタミンは、アミノ酸であるヒスチジンから合成され、末梢では主に肥満細胞に貯えられています。

ヒスタミンは通常は不活性状態にありますが、花粉などのアレルギーの原因物質が体内に入ると、その刺激で放出されます。

このヒスタミンが、鼻の粘膜にあるH1受容体と呼ばれる部分と結合することで、くしゃみや鼻水といったアレルギー症状が起こります。[※4]

■甜茶の抗炎症・抗アレルギー効果

甜茶ポリフェノールには、GOD型エラジタンニン(GOD ellagitannin)が含まれています。

エラジタンニンには、GOD型、DOG型、GOG型などがありますが、甜茶ポリフェノールのGOD型エラジタンニンは、バラ科の一部にしか存在しない稀有な種類です。[※5]

このGOD型エラジタンニンが、肥満細胞からヒスタミンが放出されるのを抑制するので、炎症が抑えられるとされています。

■抗ヒスタミン剤との比較

花粉症の薬として「抗ヒスタミン剤」が用いられることがあります。H1受容体とヒスタミンが結合する前に、H1受容体をブロックし、アレルギー症状を抑えます。

しかし、抗ヒスタミン剤は、一部が脳に回り、脳にあるH1受容体をブロックしてしまうことがあります。これにより、集中力の低下や眠気といった副作用が起こることがあります。[※4]

甜茶ポリフェノールには、このような副作用は確認されていません。そのため、日常生活に影響なく、花粉症を予防する効果が期待できます。

■虫歯・歯周病の予防効果

広島の研究機関によれば、甜茶ポリフェノールには、虫歯の原因菌となる歯垢(プラーク)を抑制する働きがあることが認められています。[※7]

また、甜茶の甘味はルブソサイド(rubusoside)という天然高甘味度化合物です。ルブソサイドはキク科の植物ステビアの甘味であるステビオサイドと非常によく似た構造をしています。[※5]

ルブソサイドやステビオサイドは、甘味が強いにもかかわらず、カロリーが低く、砂糖と違って虫歯の原因にもならないという特徴があります。

■血糖値の上昇抑制効果

甜茶ポリフェノールには、体内で糖質分解酵素を抑制する働きがあるとされています。この作用により、インスリンの過剰分泌が抑えられるので、糖尿病予防に役立ちます。[※9]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

花粉症やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などに悩まされている方に向いています。

甜茶は、すでに起こってしまった炎症症状の改善にも効果が期待できます。

しかし、花粉症のように、時期が決まっている場合、アレルギーの原因物質が飛散する前に飲み始めることで、予防の効果が期待できるでしょう。[※10]

また、低カロリーで甘みが強いので、糖尿病が気になる方、砂糖の摂取を抑えたい方、ダイエットをしたい方にも向いています。

甜茶の摂取目安量・上限摂取量

甜茶は食品のため、とくに上限摂取量は設けられていません。中国では古くから健康茶として飲用されてきた歴史があり、安全性は高いと考えられます。

アレルギーの予防や改善を目的とした摂取量の目安としては、甜茶エキス1日120mg程度とされています。[※2]

甜茶のエビデンス(科学的根拠)

■抗炎症作用の有効性

サントリー(株)と健康科学研究所の実験によれば、皮膚炎を発症したマウスに対し、飲料水に甜茶抽出物を0.2%ないし0.5%濃度で加えたものを7週間自由に飲ませました。[※12]

すると、甜茶抽出物の濃度の濃い飲料水を与えた群のほうが、よりはっきりと皮膚炎症状の改善が見られました。

このように、甜茶の抗アレルギー効果については、基礎研究や臨床試験が進められています。動物実験のデータではヒスタミンの過剰分泌抑制作用、アトピー性皮膚炎の症状改善作用が報告されています。

また、複数の予備的な臨床研究で、アレルギー性鼻炎患者やスギ花粉症患者の症状緩和が認められています。[※3]

丸善製薬株式会社のサイトによれば、花粉症の人々に、1日に80mg分の甜茶抽出物を含む飴を1週間取り続けてもらったところ、甜茶抽出物なしの飴をとった群と比較して、不快な症状が改善したというアンケート結果が得られました。[※5]

また、同サイトでは、通年性鼻アレルギーの通院患者21人に対し、甜茶抽出物を1粒につき40mg配合した飴を3粒、4週間継続摂取してもらったところ、くしゃみや、鼻をかむ回数、鼻づまりなどが改善したとの結果が得られています。

■有効性を疑問視する声

こうした実験の一方で、有効性を疑問視する声もあります。厚生労働省のサイトでは、甜茶の飲用による花粉症対策は、「民間療法」という扱いになっています。[※15]

また、同サイトでは、平成12年に花粉症患者に実施したアンケートにおいて、甜茶による花粉症改善効果に関し、効果有が14%、効果無が51%、不明が35%であったとしています。

同サイトでは、通常の治療による花粉症治療の重要性を呼びかけています。

甜茶は体に害のある成分は含まれていませんが、花粉症予防の効果が感じられないケースもあります。花粉症かなと思ったら、まずは医療機関を受診しましょう。

研究のきっかけ(歴史・背景)

甜茶は昔から中国で健康茶として飲まれてきました。中でもバラ科の甜茶「甜葉懸鈎子」は、中国南部の桂林奥地にしか自生しておらず、国外持ち出しが禁止されるほど珍重されていました。[※1]

甜茶は、食欲増進や咳止め、去痰、解熱などの症状に効果があると考えられてきました。[※5]

甜茶が、花粉症などのアレルギー症状を改善することを確認したのは、三重大学医学部の鵜飼孝太郎先生です。甜茶によりくしゃみや鼻水の原因となる鼻の炎症が抑制されることが、1994年の日本アレルギー学会で発表されています。[※18]

専門家の見解(監修者のコメント)

糖尿病や老化現象、認知症、癌などを招く原因の一つとして、人体内での「タンパク質糖化反応」が指摘されています。[※12]

この糖化反応と甜茶の関係について、同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センターの八木雅之教授は、以下のように述べています。

「これまでに私たちが500種類以上の食品素材について調べた結果、野菜やハーブ、お茶などに糖化反応を抑制する作用をもつ「抗糖化素材」が見つかっています。(中略)
野菜・ハーブで調べた結果(下図)(原文ママ)をみると、モロヘイヤやサニーレタス、米なすなど、スーパーでおなじみの野菜にも糖化抑制作用の強いものがあるとわかりました。
また、いわゆる健康茶やハーブティーでは甜茶やどくだみ茶などに高い抑制効果を確認しています。」[※13]

甜茶が、抗糖化作用により、老化防止に役立つという興味深いコメントです。今後、より詳しく研究が進めば、甜茶の有用性がさらに明らかになっていくことでしょう。

甜茶の効率的な摂り方

■購入の際の注意点

一般的には、甜茶はお茶として飲用します。甜茶は健康茶として人気があるので、最近は薬局などで容易に手に入ります。また、インターネットでも購入できます。

甜茶は甘いお茶なので「甘茶」と間違えるケースがあります。甘茶はアジサイ科アジサイ属のアマチャの葉のお茶で、日本の植物です。中国由来の甜茶とは別物ですので、ご注意ください。

甜茶を買うときはバラ科の「甜葉懸鈎子」であることを確認しましょう。花粉症に効果があるとされるのはこの種類だけです。

■甜茶の入れ方

花粉症に効果があるとされる甜茶エキスの摂取量は1日120mg程度で、この量をお茶で摂るためには、甜茶を500mlほど飲む必要があります。[※2]

入れ方としては、熱湯に甜茶2~3gを入れ、2~3分煮立てるとよいでしょう。食間や寝る前に飲むと効果的とされています。

花粉症の予防として飲む場合、花粉が飛び始める2週間~1カ月前程度から飲み始めるとよいといわれています。

■それ以外の甜茶入り食品

お茶以外には、甜茶エキスの入ったキャンディーもあり、忙しい時でも手軽に摂取できます。

また、甜茶の味が苦手な人には、甜茶エキスのサプリメントもありますので、お好みにあわせて摂ることができます。

相乗効果を発揮する成分

甜茶をはじめとする健康茶は、複数種類ブレンドすると健康効果が高まるとされています。[※14]

柿の葉茶やルイボスティーなど、お好みの種類の健康茶とミックスすることで、味に変化がつき、いっそうティータイムを楽しむことができます。

甜茶の副作用

(株)医学と看護社「ヘルシーエイジングに役立つサプリメント・健康食品―科学的根拠に基づいた適正使用のための情報」によれば、医薬品との相互作用は確認されていません。[※3]

甜茶はローカロリーでノンカフェインなので、就寝前にも安心して飲むことができます。

ただし、バラ科のアレルギーをお持ちの方は、念のため飲用を避けた方がよいでしょう。