レチノイン酸は肌のターンオーバーを促し、シミの原因となるメラニン色素を排出し、シミやくすみを改善してくれる成分です。
できてしまったシミや、肝斑などにも効果を発揮しますが、効果が高い分副作用や使用方法などには注意が必要です。医療機関による治療を受け、正しく使えばエイジングケアにも役立ちます。
レチノイン酸はビタミンAの誘導体で、ビタミンAと同等の働きをしますが、生理活性はビタミンAの約50~100倍です[※1]。
アメリカでは、FDA(米食品医薬局)にシワやニキビへの有効性が認められ、治療医薬品として使用されています。日本では認可されていませんが、医師の正しい指導のもとで利用することで、肌のアンチエイジング効果が期待できる成分です。
ニキビの改善、皮膚のシワやたるみの改善など、肌の若返りが期待できるレチノイン酸は、美容分野で広く活用されています。さらに、細胞の運命を決定するモルフォゲン分子として注目されてきたレチノイン酸[※2]は、医療分野においても研究が進められています。
肌のアンチエイジングとして美容分野で広く使用されているレチノイン酸は、もともとニキビの治療薬として利用されてきました。現在ではシワやシミの改善、たるみの改善などの効果があると言われ、美容外科などで治療に使用されています。
■シミに対する効果
シミの治療では、レチノイン酸とハイドロキノン軟膏を塗布することで、シミが薄くなる効果が期待できます。継続して使用することで肝斑にも効果があるとされています。[※3]
シミには肝斑や老人性色素斑のほか、そばかすやニキビ跡などの炎症性色素沈着、花弁状色素斑などがありますが、レチノイン酸での治療はさまざまな種類のシミに効果があると言われています。
■ピーリング効果
また、レチノイン酸にはピーリング効果があるとされ、くすみやシミが改善されます。肌の生まれ変わりを促す作用、コラーゲンの生成作用があるため、ニキビの改善や皮膚の弾力、張りが戻るという効果も期待できます。
■ニキビ治療
海外ではニキビ、特に脂性肌が原因のニキビの治療薬として用いられています。過剰となった皮脂腺の働きを抑えるので、オイリースキンを改善し毛穴を防ぐ角栓を排出させることでニキビを治療しつつ、ニキビのできにくい肌にしていきます。
通常、肌の表皮細胞は28日間かけて生まれ変わります(ターンオーバー)。表皮の最も深い層である基底層で生まれた表皮細胞は徐々に押し上げられ、角質となって皮膚から剥がれ落ちていきます。
その過程でシミの原因であるメラニン色素も排泄されるのですが、メラニン色素が多いと、すべてが取り除かれずに残ってしまいます。それがシミやくすみとなるのです。レチノイン酸にはピーリング作用があります。
レチノイン酸は表皮細胞を活性化させ、増殖させるため、基底層にあるメラニン色素も排泄されやすくなるのです。
レチノイン酸のターンオーバーを促す作用は、コラーゲン生成も促し、肌の張りや弾力を取り戻します。その結果、シワやたるみが改善されるのです。
さらにヒアルロン酸の生成もサポートするため、肌の保水力も向上します。肌の乾燥も防ぐことができます。また、皮脂腺の働きを抑制することで、皮脂の過剰な分泌が減ります。
ニキビの原因の一つは皮脂の過剰な分泌ですから、レチノイン酸で皮脂のバランスを取ることでニキビ予防ができるのです。
肌の老化(特にシミ)を感じ始めた人、ニキビやニキビ跡に悩んでいる人、また小じわやハリの低下に悩んでいる人におすすめです。
一度できてしまったシミは、美白化粧品で消すのは難しいものです。肌のターンオーバーを促すこともセルフケアでは簡単にできることではありません。レチノイン酸を使うことで、肌の新陳代謝が促され、シミの排出をサポートしてくれるので、シミが薄くなる効果が期待できます。
また、皮脂の過剰分泌でニキビがなかなか改善しない場合も、皮脂腺の働きを抑制して皮脂の分泌をコントロールしてくれるので、ニキビの改善にもつながります。
レチノイン酸は皮膚科や美容外科などの治療で使用されます。レチノイン酸の処方は、その人の肌質や皮膚の強さなどによって、濃度を変えて処方されます。そのためで皮膚の弱い人でも、クリニックや病院で適切な治療を受ければ、レチノイン酸を使用したシミ治療ができます。
肌の弱い人は化粧品選びが難しいため、クリニックなどでレチノイン酸を使用した治療を受けてみるといいでしょう。
肝斑も自分でケアをするのは難しいのですが、レチノイン酸を使用した治療と内服薬による治療を受けることで、改善することが多く報告されています。皮膚のたるみやシワも改善できるので、若々しい肌を取り戻したいという人にもおすすめです。
レチノイン酸は肌への効果が高い分、肌への負担や刺激も大きいです。アメリカではニキビ治療などに認められているレチノイン酸ですが、日本ではまだ認められていません。レチノイン酸を使用したシミやシワの改善、ニキビ治療などは、クリニックなどに行って、医師と相談して行います。
化粧品などにも含まれることのあるレチノイン酸は、輸入などで入手することも可能です。ただし、個人の判断での使用は危険なため、控えるようにしましょう。
レチノイン酸は細胞の運命を決定づける成分でもあります。皮膚治療にも使用されるレチノインの研究が進めば、薬の投与などの指針となります。その一つとして、レチノイン酸の濃度分布を可視化する技術を作り出したという研究があります。[※4]
この研究は、理研脳科学総合研究センターの細胞機能探索技術開発チームで行われました。かつてレチノインは胚の中でどのような濃度分布をしているかが分かりませんでした。
ビタミンAであるレチノイン酸は、タンパク質の遺伝子を組み込むという方法が取れないため、可視化に成功したのです。これにより、効果的な薬の投与が可能になると言われています。
レチノイン酸はビタミンA酸とも呼ばれる成分で、大きくはビタミンAに分類されます。ビタミンAは細胞の増殖や分化に関わる成分でもあり、人間の体づくりに関係しています。
中でもレチノイン酸は細胞の生まれ変わりを促すことで、シミやシワの改善、ニキビの改善などに効果があることが有名ですが、それ以外にも人間の睡眠や記憶、学習などにも影響しているとされ、研究が進められています。
レチノイン酸が人間の睡眠や記憶などにどう関わっているのかは、まだはっきりとは解明されていませんが、スイスでは睡眠の遺伝子「レチノイン酸受容体β」をつきとめた[※5]という報告があります。
レチノイン酸受容体βはビタミンAに反応するものであり、ビタミンAが睡眠の質に影響を与えることも提示しています。しかし、睡眠に関係しているということは分かったものの、快眠のための適量などはまだ研究中です。
レチノイン酸の肌への効果について、イデリア スキンクリニック代官山の千葉真美医師は、次のようにコメントしています。
「レチノイン酸は、ビタミンAの誘導体で、光老化皮膚の改善効果、いわゆるエイジングケアに高い効果を示す薬剤です。
最近、市販の化粧品にも、レチノールやレチナールといったレチノイン酸の前駆体が含まれているものもありますが、レチノイン酸は医療機関でしか扱うことができません。
レチノイン酸はケミカルピーリングのように表皮の角層を薄くする作用があり、皮膚のターンオーバーを整えて結果的にメラニンの排出を促します。
お肌全体のくすみが取れたり、美白剤(ハイドロキノン)と併用することでシミや肝斑や炎症後色素沈着を薄くする効果があります。
また、真皮のコラーゲンや結合組織の産生を促し、増殖させる効果があります。皮膚の質感を滑らかに、ふっくら張りのある皮膚に導きます。開いた毛穴にも有効です。」(イデリア スキンクリニック代官山「レチノイン酸について 千葉真美先生」)[※6]
また、千葉医師はレチノイン酸の注意点として、妊婦さんには使用できないことや乾燥なの皮膚トラブルのリスクもコメントしています。もし、肌に異変を感じた際は、早めにクリニックで診察を受けるようにしましょう。
レチノイン酸はビタミンAを摂取した際に、体内でレチノール、レチナール、レチノイン酸という3種類の活性型に変化し、体内で作用しています。
つまり、ビタミンAを豊富に含む食品を摂ることが大切です。ビタミンAは皮膚や粘膜の健康に不可欠な成分である一方、脂溶性ビタミンであるため、サプリメントなどで過剰摂取することはやめましょう。
ちなみにビタミンAは主に、牛レバー、豚レバー、鶏レバー、うなぎ、あなご、卵黄、うに、バター、チーズなどの動物性食品に多く含まれています。
シミの改善に相乗効果をもたらす成分として、ハイドロキノンが使用されることが多いです。ハイドロキノンは肌の漂白剤とも言われるほど、美白効果が期待できる成分です。
シミの原因となるメラニンの生成を抑え、チロシナーゼの働きを阻害して、メラニン色素が増殖するのを防ぐ働きがあります。美白化粧品は主にシミの予防に役立つものですが、ハイドロキノンは予防だけではなく、シミを薄くする効果があると言われています。
中でも、紫外線が原因でできる老人性色素斑、ニキビの炎症や虫刺されなどが色素沈着してできたシミである炎症性色素沈着、顔の左右対称にできる肝斑などに効果が期待できます。
ハイドロキノンは効果も高いですが、その分、肌への刺激も強いです。医師の指示に従って使用することをおすすめします。
レチノイン酸とハイドロキノンを合わせた治療は、効果が出やすいですが、クリニックによって種類や濃度が異なります。
肌質や状態によっても効果の幅や出る期間などは個人差があるということを認識しておきましょう。
セルフケアでは消せないシミが、レチノイン酸を使用した治療では、消える可能性があります。ただし、効果が高い分、肌への負担も大きいのがデメリットとも言えるでしょう。
考えられる副作用としては、肌の乾燥、ヒリヒリ感などのほか、皮膚炎や色素沈着を引き起こすリスクがあります。
皮膚科やクリニックでは、その人に適した方法で治療を行ってくれますので、信頼できるクリニックであれば副作用の心配は少ないでしょう。
皮膚科などでレチノイン酸のクリームや軟膏を処方された場合、使用中に皮がむけるなどの症状が出ることがあります。皮膚の状態によっては赤くなることも考えられます。
すぐに鎮静すれば問題ありませんが、ヒリヒリとした痛みが続いたり、炎症が治らなかったりする場合は、使用を中止し、すぐに医師に相談しましょう。
また、レチノイン酸を配合した海外製品などは、インターネットなどで購入することができます。しかし、他の化粧品と組み合わせることで肌トラブルにつながることも多数報告されています。自己判断による使用は危険も伴います。必ず医師の処方のもと使用するようにしましょう。
また、副作用として可能性は低いけれども催奇性のリスクもあると言われています。妊娠中はレチノイン酸を使用した治療はしない、としているクリニックがほとんどです。