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ポリフェノールの効果とその作用

ポリフェノールとは、植物の葉や茎、花や実(種)に含まれる色素の総称です。現在までに5000種類以上のポリフェノールが確認されています。複数のポリフェノールに共通する効果効能や作用のメカニズムをわかりやすく解説。代表的なポリフェノールの種類や摂取方法、副作用や相互作用もまとめています。

ポリフェノールとはどのような成分か

ポリフェノールとは、植物の色素や苦み、渋みの元となる成分の総称です。光合成によってつくられるため、ほとんどの植物が含有しています。

ポリフェノールは、人体において細菌の侵入・増殖を防いだり、体内の有害物質を無害な物質へ変えたりするはたらきを持っているため、健康維持に役立つことで、知られています。

ポリフェノールは水に溶けやすく、体外に排出されやすいため、効果は短時間しか持続しません。2~3時間おきに摂取するのが望ましいとされています。

現在までに5000種類以上のポリフェノールが確認されており、その種類によって少しずつ効果効能が異なります。

ポリフェノールの効果・効能

ポリフェノールに共通する効果効能をご紹介します。

■生活習慣病の予防

ポリフェノールの持つ抗酸化作用が血管内の脂質の酸化や血管の硬化を防ぎ、血流を良くしてくれます。血流を改善することで、生活習慣病の予防につながります。

■抗がん効果

がん細胞の発生や増殖を抑制するといわれている抗酸化作用を持つため、がん予防の効果が期待されています。

■美肌効果

活性酸素を除去することで肌細胞が傷付くのを防ぎ、シワやたるみ、シミなどが発生しないようにして美肌作りをサポートしてくれます。

代表的なポリフェノールの効果・効能

代表的なポリフェノールの効果効能は以下のとおりです。[※1]

アントシアニン
視力回復、改善効果
眼精疲労の緩和
血糖値上昇を抑制

アントシアニンは主に目に良いといわれるポリフェノールです。

カテキン
殺菌
抗菌、抗ウイルス効果
肥満予防、血糖値の正常化
パーキンソン病の予防
コレステロール値改善
血圧の正常化

カテキンの特徴は殺菌・抗菌効果です。そのはたらきにより虫歯や口臭の予防効果が期待できます。

コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)
脂肪燃焼効果
脂肪肝の予防
糖新生抑制効果

クロロゲン酸は脂肪燃焼を促すため、メタボ予防やダイエットのサポートに効果があります。

イソフラボン
更年期障害の症状緩和
骨粗しょう症の予防

女性ホルモンのエストロゲンと似たはたらきがあるため、女性らしい体をつくるのに役立ちます。

クルクミン
二日酔い防止
消化器のはたらきをよくする
コレステロール値改善
アルツハイマー病の予防

肝臓のはたらきを高めるため、アルコールの分解を助けて肝機能をサポートしてくれます。また、脳において不要な物質の除去を助ける効果の研究が進められています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ポリフェノールの主な作用は、抗酸化作用です。体内で発生した活性酸素やフリーラジカルといった、カラダに悪影響を与える物質を無害化してくれます。

活性酸素は本来、体内に入っていた異物を攻撃して除去する免疫物質なのですが、不規則な生活やアンバランスな食事、ストレスなどによりその量が増加してしまいます。

すると、攻撃の対象が異物ではなく正常に機能している体内メカニズムに向き、細胞を傷つけるようになってしまいます。傷つけられた細胞は、がん化や硬化、酸化などをおこし、本来のはたらきができなくなります。

活性酸素が発生した場所によって、あらわれる症状はさまざまです。血管内で起これば、血栓をつくったり血管の壁を硬くして動脈硬化の原因になったりします。

肌であれば、肌細胞の新陳代謝(ターンオーバー)を阻害して、シワやたるみ、シミの原因に。肝臓内では、肝機能を低下させ、やがて肝硬変を誘発するおそれもあります。[※2]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

次の条件に該当する人は、ポリフェノールを積極的に摂取することをおすすめします。

  • シミやくすみ、ニキビや吹き出物がある
  • 肌にハリがない
  • タバコを吸う
  • 紫外線を浴びる機会が多い
  • 激しい運動が好き
  • 食事の栄養バランスが偏っている
  • 睡眠時間が不規則
  • ストレスが溜まっている
  • 生活習慣病を予防したい
  • 目の健康を保ちたい

ポリフェノールの摂取目安量・上限摂取量

日本ではポリフェノールの目安や上限摂取量が定められていません。そのため、一般的な目安や国外の基準を記載しています。

アントシアニン

一般的に、1日100mg程度の摂取で効果が得られると考えられています。[※3]

カテキン

一般的な目安量は1日540mgほど。緑茶10杯と多めになるので、お茶から摂取する場合は、カフェイン量に注意しましょう。[※4]

コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)

目安量は設定されていません。コーヒーから摂取する場合は、カフェイン量に注意してください。

イソフラボン

特定保健用食品への配合量は1日30mgに設定されています。

クルクミン

欧州食品安全機関(EFSA)は、1日3.0mg/体重1kgあたりまでと設定しています。[※5]

複数のサプリメントを使用する場合は重複する成分の摂り過ぎに注意が必要です。

ポリフェノールのエビデンス(科学的根拠)

(株)明治研究本部食機能科学研究所の夏目みどり氏はカカオポリフェノールの研究を行い、2017年に農芸化学助成企業研究者賞を受賞しました。 この研究で明らかになった効果について解説します。

■チョコレートの生活習慣病予防効果[※6]

対象者
健康な日本人男女347人
摂取してもらったもの
高カカオチョコレート
摂取期間
4週間
実験前後に測定した内容
血圧、悪玉コレステロール、酸化レベル、炎症レベル

実験の結果、高カカオチョコレートを摂取すると、摂取前よりも血圧や悪玉コレステロール値の上昇を抑える作用が認められました。酸化レベルと炎症レベルも低下していたことが報告されています。

高血圧や血中コレステロール値の上昇、酸化や炎症は、すべて生活習慣病(メタボリックシンドロームや動脈硬化など)の要因です。このことから、高カカオチョコレートの摂取によって、生活習慣病を予防できる可能性が示唆されています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

古くから注目を集めていたのは、数種類のポリフェノールが含まれている赤ワインです。1100~1200年頃に書かれたイタリアの医学書『サレルノ養生訓』にも、ワインの健康効果に関する考察が記されています。

ワインに含まれるポリフェノールの中でもいちばん有名なのは、レスベラトール。長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)のはたらきを促し、活性化することでも知られています。

日本では、ワインやビールをはじめ、飲料商品の開発・販売を行っているサントリーホールディングス(株)がいち早くポリフェノールに注目しました。[※7]

サントリーは1987年に研究所を開設。国立健康・栄養研究所と共同研究を行い、ポリフェノールが血中の悪玉コレステロールの酸化を防ぐ健康機能を明らかにしました。

この研究結果から、フランス人はポリフェノールを多く含む赤ワインを日常的に飲んでいるため、脂肪の摂取量が多い食生活でも動脈硬化の発症率が低いとわかっています。この現象を「フレンチパラドックス」といい、現在も研究が進められています。

その後、ポリフェノールの健康機能が注目されるようになり、ポリフェノールを使った健康食品が多数開発されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

日本抗加齢医学研究所の所長を務める白澤卓二博士は、400種類以上のポリフェノールを含むりんごの健康効果について、自身の著書内で解説しています。

「りんごには『りんごが赤くなると、医者が青くなる』『毎日1個のりんごで医者いらず』といった、健康にかかわることわざがあります。その根拠になっているのが、皮のすぐ下に含まれる抗酸化作用の高い400種類以上のポリフェノールです」

(白澤卓二 『白澤教授が選んだ病気にならない“食べもの”バイブル』より引用)[※8]

白澤博士が、りんごに含まれるポリフェノールのなかでもとくに注目しているのは「リンゴポリフェノール」です。リンゴポリフェノールには、次のような効果効能が期待できます。

「リンゴポリフェノールは、自らが活性酸素によって酸化されることで、シミの原因となるメラニン色素の発生を抑えているのです」

「皮膚細胞の酸化を抑制してシワができるのも防ぎます」

「リンゴポリフェノールは、肥満、とくに内臓脂肪型肥満を抑制することで、糖尿病や脂質異常症、高血圧などの生活習慣病の予防にも効果が期待できます」

(白澤卓二 『白澤教授が選んだ病気にならない“食べもの”バイブル』より引用)[※8]

リンゴポリフェノールは、細胞組織を傷つける抗酸化作用のはたらきを阻害します。また、白澤氏の見解では、りんごを食べることで糖やコレステロールの増加によって起こるさまざまな症状・疾患を予防できる可能性があるそうです。

ポリフェノールを多く含む食べ物

ポリフェノールを多く含む食べ物についてまとめました。摂取したいポリフェノールの種類に合わせて、毎日の食事にとりいれると良いでしょう。

アントシアニン
ブルーベリー・ビルベリー・ブドウ・赤ジソ・黒豆・黒ごま・ナス
カテキン
緑茶・大豆・小豆・ココア
コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)
コーヒー(浅煎りのほうが含有量が多い)・じゃがいも・ゴボウ
イソフラボン
大豆製品(豆腐、納豆、豆乳、きな粉など)
クルクミン
ウコン(秋ウコン)

相乗効果を発揮する成分

ポリフェノールと一緒に摂ると相乗効果を発揮するのは、ビタミンCです。ビタミンCにはポリフェノールの吸収率を良くするはたらきがあるため、ポリフェノールの効果が高まります。

とくに赤ワインに含まれるポリフェノールは体に吸収されにくい性質があるため、ビタミンCを含むフルーツ(オレンジやレモン、キウイやイチゴなど)を使ってサングリアをつくると良いでしょう。[※9]

また、最近の研究では、ニンニク由来の成分がカテキン(お茶に含まれるポリフェノール)の機能性を高めることが明らかになっています。

ポリフェノールの副作用

ポリフェノールは基本的に体に害のない成分ですが、種類によっては副作用があります。

■イソフラボン(大豆に含まれるポリフェノール)

女性ホルモン(エストロゲン)によく似た作用があるため、摂り過ぎるとホルモンバランスが乱れて、婦人系の症状・疾患(生理不順、生理痛、乳がんや子宮頸がんなど)が起こる可能性があります。

■タンニン(お茶やどんぐりに含まれるポリフェノール)

過剰摂取すると、消化器系や内臓系に損傷を与えることがわかっています。

注意すべき相互作用

代表的なポリフェノールの相互作用をまとめました。[※10][※11]

アントシアニン

アントシアニンを含むブルーベリーやビルベリーは糖尿病治療薬や血液凝固抑制、抗血小板薬などと相互作用があります。

カテキン

カテキンと薬品との相互作用はあまり心配しなくてよいようです。しかし、カテキンを摂取するために緑茶を利用する場合は、お茶に含まれるカフェインに注意が必要です。

コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)

クロロゲン酸には副作用や相互作用は認められていません。しかし、クロロゲン酸を摂取するためにコーヒーを服用している場合は、含有されているカフェインに注意が必要です。

イソフラボン

イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似たはたらきをするため、エストロゲン製剤と併用すると効果が増強するおそれがあります。

クルクミン

クルクミンはエストロゲン製剤や血液凝固抑制剤の効果を弱めるおそれがあります。