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ジュニパーの効果とその作用

ハーブやアロマとして使われるジュニパーは、セイヨウネズ、壮松果とも呼ばれるヒノキ科の樹木。種は香料として使われることも多く、さわやかでライムのような香りが特徴です。お酒のジンの香りといえばイメージしやすい人もいるでしょう。主に木皮や実が香料やハーブとして利用され、長い間愛されてきました。このページでは、ジュニパーの効果や効能、体への働きについてまとめています。

ジュニパーとはどのような植物か

ジュニパーはヒノキ科の植物です。針のような形の葉を持つ針葉樹で、秋ごろに丸い実を付けます。

基本的には、背の低い木ですが、栽培されているものは10mほどにも成長します。広い地域に分布しているため、地方ごとの亜種がたくさんあるのが特徴です。

木の種類や使用箇所によって香りや成分が異なるため、精油やハーブを購入する際には、木の種類や原産国・成分表などをチェックすると良いでしょう。

ジュニパーの実であるジュニパーベリーは、香りづけや民間薬として使われ、精油はアロマオイルとしても利用されます。

ジュニパーに含まれている香り成分は、リモネンやβ-カリオフィレン・ミルセン・α-ピネン・サビネン、その他酢酸テルピニルなどがあります。[※1][※2]

これらの成分には、抗菌や抗ウイルス、利尿作用があるといわれています。そのため、ジュニパーは病院で消毒用に使われていたこともある植物です。[※1]

ジュニパーの効果・効能

ジュニパーの効果・効能について、科学的根拠はまだ少ないのが現状です。しかし、以下のような効果があるとされ、古くから人々に利用されてきました。[※3]

■むくみの改善

利尿作用があるため、体内の余分な水分を排出しむくみを改善してくれます。余分な水分とともに、毒素の排出もしてくれるとされデトックス効果も期待できます。

■抗菌・抗ウイルス

ウイルスや細菌の増殖を抑えてくれるため、空気をきれいにして感染症を予防してくれます。

■リラックス効果

ジュニパーの香りには頭をスッキリさせ気持ちを前向きにしてくれる効果があるため、落ち込んでいるときにリラックスさせてくれます。[※1]

■腎臓機能の改善

膀胱結石、腎結石など腎臓がかかわる病気の予防や改善が期待できます。しかし、大量に使用すると副作用の危険があります。

■消化不良

ジュニパーベリーを使ったハーブティーには、胃のむかつきや胸やけ・食欲不振を改善する効果があります。

■皮膚疾患治療

抗炎症作用があるため、筋肉痛や創傷・ニキビなどに効果があるとされています。

■リウマチの症状緩和

入浴剤にジュニパーを加えて使用すると、リウマチの痛みが緩和するとされています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ジュニパーには利尿作用や抗菌作用、抗炎症作用などがあると言われ、古くは民間療法として用いられてきました。しかし、臨床データはあまりなく、科学的な根拠はやや乏しいのというのが現状です。

さまざまなハーブを使った血液凝固に関する実験では、ジュニパーには血液凝固反応を抑制する働きが見られました。循環器系の機能を正常に保つ作用が期待されています。[※4]

ジュニパーに含まれるリモネンやピネンなどのモノテルペン炭化水素類には、落ち込んだ気持ちを緩和させたりストレスに対する抵抗力を高めたりする作用があるため、ジュニパーにはリラックス効果があるとされています。[※5]

また、抗菌作用や抗炎症作用などもモノテルペン炭化水素類が持っている作用です。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ジュニパーは以下のような人におすすめです。ハーブティーやアロマなどで取り入れると良いでしょう。

  • むくみが気になる人
  • リラックスしたい人
  • 風邪をひきやすい人

ジュニパーの摂取目安量・上限摂取量

ジュニパーの使用量を見てみましょう。[※3]

経口摂取は、ハーブティーやエッセンシャルオイル・流エキス薬などが該当します。

ハーブティーは、ジュニパーベリー2~3gを150mlの湯で割って作ります。それを、1日3~4回までが目安量です。最大摂取量の目安は、乾燥ジュニパーを1日10gまで。これは、エッセンシャルオイルに換算すると20mg~100mgと同じ程度の使用量となります。

ジュニパーとアルコールとの割合が約1:1.25%の流エキス薬の使用量は1回2ml~4mlを1日3回までが目安となっています。

チンキ薬(1:5.45%)の場合は1回1ml~2mlを1日3回までです。

ジュニパーオイルは、1回0.03ml~0.2mlを1日3回までが使用量の目安です。オイルの使用は専門家に指導を受けてからにしましょう。

目安量を超えて4週間以上にわたり摂取し続けてしまうと、副作用をまねくおそれがあるため注意が必要です。

ジュニパーのエビデンス(科学的根拠)

資生堂開発研究所香料研究部の菊池昌夫氏らと、三重大学医学部精神神経学科の小森照久教授により行われた睡眠満足度に関する実験では、ジュニパーを含む調合香料を就寝時に使用した場合、香りが睡眠に対して何らかの好影響を与えたと結果が出ています。

睡眠の満足度には大きな差が出ませんでしたが、眠りに入る時間の短縮や途中覚醒の回数の減少が見られました。[※6]この結果を見ると、ジュニパーの持つリラックス効果が現れたといっていいでしょう。

Kurt Kitzing社のWannerらによる複数のエッセンシャルオイルを使った抗菌に実験では、ジュニパー含むすべてのオイルが抗菌作用を発揮。実験に使用された細菌類は動物や植物に存在する病原菌、食中毒を起こす菌などさまざまな種類が用いられましたが、そのどれにも有効であったとされています。[※7]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ジュニパーは旧約聖書にも登場する植物。預言者エリヤが疲れを癒すために寝ていたのが、ジュニパーの根元だったといいます。このことから、古くからジュニパーは人々の生活に近い存在だったことがうかがえます。

ジュニパーは浄化の力があると言われ、魔除けに使われていたこともあります。玄関先でジュニパーをたいたり、庭にジュニパー植えたりして、悪いものから家を守っていました。

実際にジュニパーには、抗菌・抗ウイルス作用があるとされています。昔の人々はジュニパーの作用を経験として知っていたのかもしれません。

ジュニパーベリーは薬として古代ローマやギリシャで使用されていました。利尿薬や消化薬、リウマチの薬、避妊薬など用途は多岐にわたります。

ヨーロッパでは、医師が消化促進のためにジュニパーベリーの実を噛んだり、お酒を醸造したりしていました。薬用酒として広まっていったものが現在のジンの原型といわれています。

魔除けとして使われていたジュニパーは、近代に入ると消毒薬として使われるようになりました。感染症を予防するために、ジュニパーの木や芽を病院内で焚いて消毒したのです。天然痘やペストに対して、ジュニパーの抗菌効果は有効であったといいます。

現代では、香料やハーブ・精油などがジュニパーの使い道です。種をスパイスとして、ジビエ料理の臭み消しにすることもあります。長い年月が経った今も、身近な植物の1つとして存在しています。

専門家の見解(監修者のコメント)

ジュニパーを含む、エッセンシャルオイルの抗菌作用について調べた今西二郎教授(当時は京都府立医科大学院)は、芳香浴での効果について以下のように述べています。

「液状のエッセンシャルオイルと直接細菌が接触しなくても、香気成分を漂わせることによって、MRSAなどによる院内感染に対して、防御的に働く可能性を示すものである」[※8]※MRSAとはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌のこと

古くは、ジュニパーの木や芽を焚いて病院などで消毒をしていたといいます。それは正しかったといえるでしょう。

ジュニパーの上手な摂り方

ハーブとしてのジュニパーは主に実(ジュニパーベリー)が使われ、ハーブティーとして飲用ができます。[※]

ジュニパーベリーをお茶にするときは、実を少し割って湯に入れると成分が溶けだしやすくなります。

作り方はさほど難しくありません。小さじ1杯分のジュニパーベリーを潰し、熱湯に入れ5分ほど煮出します。煮出した後も5分ほど蒸らして出来上がり。カップやポットはあらかじめ温めておくと、お茶が冷めにくくなります。

その他、アロマオイルを使い、芳香浴やアロマバス、吸引や湿布にするなどして使用することができます。

抗菌作用があるため、スプレーにして部屋に噴霧するのも良いでしょう。

相乗効果を発揮する成分

相乗効果が期待できるハーブのブレンドを紹介します。[※9]

・リフレッシュティー

頭をスッキリさせリフレッシュできるブレンドです。月桃・ジュニパーベリー・ペパーミントを2:1:1の割合でブレンドし、好みでラベンダーを加えます。

・デトックスゴマージュ

ゴマージュは角質ケア剤のこと。パウダー状にしたハーブをお湯で練り、肌に乗せてマッサージします。ジュニパーのデトックス効果と相性の良いラベンダーをプラスしたゴマージュは、むくみを解消しリラックスさせてくれます。

ジュニパーに副作用はあるのか

ジュニパーは、多量に長期間使用することで副作用が出るとされています。皮膚へ塗る場合、痛みや熱・赤み・腫れなどを引きおこす可能性があります。

服用の場合は、腎臓機能に異常が出たり発作が起こったりするおそれがあります。また、糖尿病の人や胃の不調を感じている人、手術を控えている人の使用は控える方が良いでしょう。[※3]

妊娠中や幼児に使用するのは禁忌とされているため、使わないようにしてください。精油もハーブティーもおすすめできません。利尿作用が悪影響を及ぼす恐れがあります。

ジュニパーの安全性についての事例があります。イタリアで自己免疫性肝炎の5歳少女が自然療法とジュニパーやライムギなどを使った治療を併用したところ症状が悪化しました。[※10]通常の治療に戻したところ、症状は改善したようです。

民間療法の良きパートナーとして使われてきたジュニパーですが、科学的な安全性は保障されてはいません。薬を飲んでいる人や妊娠中の人は、ジュニパーを使用する前に医師に相談するようにしましょう。

注意すべき相互作用

ジュニパーには下記のような相互作用があるとされているため、薬を処方されている人や市販の薬を使っている人は、注意してください。[※3]

・糖尿病治療薬

ジュニパーには血糖値を低下させる可能性があるため、糖尿病治療と併用すると血糖値が下がりすぎるおそれがあります。

・利尿薬

ジュニパーには利尿作用があるとされているため、利尿薬と併用すると体内の水分量が減少しすぎるおそれがあります。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 渡邊聡子 監修 『アロマテラピーのきほん事典』 ,「ジュニパー(ジュニパーベリー)」(西東社 2010年10月15日 p64)
  2. 西村 驥一, 酒井 勉, 広瀬 善雄 「精油成分の研究(第1報)ねずの実の精油」(日本化學雑誌 1960年 81巻 11号 p1766-p1769)
  3. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行)
  4. 【PDF】茅原 紘,中川 賢司,只左 弘治[他]「ハーブ精油の血小板凝集抑制能」(信州大学農学部紀要 05830621 信州大学 1996-12 33巻 1号 p1-p8
  5. 【PDF】植松仁 森千鶴 [他] 「精神負荷に対するグレープフルーツの香りの効果」(山梨医大紀要 2000年 第17巻 p42-47)
  6. 【PDF】菊池晶夫、小森照久[他]『健常人の不眠傾向に対する香りの影響』(人間工学 第31巻 特別号p398-p399)
  7. Wanner J, Schmidt E, Bail S, Jirovetz L, Buchbauer G, Gochev V, Girova T,Atanasova T, Stoyanova A. 「Chemical composition and antibacterial activity ofselected essential oils and some of their main compounds. 」Nat Prod Commun. 2010 Sep;5(9):1359-64. PubMed PMID: 20922991.
  8. 【PDF】今西二郎 「メディカル・アロマセラピー」(日本補完代替医療学会誌38018p53-p61)
  9. 佐々木薫 『心と体に効くハーブ読本』(PHP研究所 2010年11月4日発行 p158,p161)
  10. Della Corte C, Francalanci P, Comparcola D, Santorelli MR, Nobili V.Autoimmune hepatitis and homeopathic therapies: "old wives' tale". Minerva Pediatr. 2014 Dec;66(6):588-90. PubMed PMID: 25336104.