名前から探す

クロロフィルの効果とその作用

一般的に植物の葉緑素として知られるクロロフィル。体内で抗酸化作用やデトックス効果をもたらす成分として研究が進められています。サプリを選ぶ際に役立つ効果・効能、作用についてまとめました。専門家による研究結果やコメントなども合わせて掲載しているので、自分に合った成分を選ぶためにも、成分について把握しておきましょう。

クロロフィルとはどのような成分か

クロロフィルは植物に含まれる緑色の天然色素です[※1][※2]。光合成の際に使われる成分で、葉緑素とも呼ばれています。光や温度、pHなどの影響で分解されやすいため、保管時は変質しないように注意が必要です。

クロロフィルにはいくつかの種類があり、その中でも知られているのがクロロフィルa~dの4つ。植物中にはaとbの2種類が3:1の割合で含まれています。そのため、クロロフィルの中でも特にaを多く摂取しているといえるでしょう。

クロロフィルの効果・効能

クロロフィルはさまざまな効果がある成分で、研究が進められています。現在報告されている効果・効能は以下の通りです。

■デトックス効果

クロロフィルは胃腸の中にくっついた老廃物を吸着し、体外に出す働きを持っています。クロロフィルはマグネシウムを核としている成分で、胃でマグネシウム以外が分離され、腸を経由して排泄。

その際、鉛やカドミウムなどの有害物質を一緒に除去してくれる効果が知られています。最近の論文ではダイオキシンの除去効果も発表されていることから、より高いデトックス効果が期待できます。[※2][※4][※8]

■脂質代謝の改善

血中コレステロール値が高くなると、血管壁にコレステロールがくっつき血液が流れにくい状態に。クロロフィルは血中コレステロール値を下げ、血栓や動脈硬化を予防してくれます。

血栓ができにくくなることで、動脈硬化や心筋梗塞などのリスクが低下。血液がサラサラになり、循環器系の病気改善効果が期待できます。[※2][※7]

■抗酸化作用

クロロフィルは強力な抗酸化作用と浄化作用を持ち、植物中に含まれる他のファイトケミカルと同様に、酸化ストレスから植物を守っています。

活性酸素が発生すると、細胞内の遺伝情報が傷つき、書き換わってしまうことも。書き換えられた遺伝子は、免疫不全や遺伝病を起こす可能性があります。しかしクロロフィルが活性酸素を除去することで、遺伝子へ影響を与えないようになっているのです。

また、抗酸化作用によるがん予防効果も期待されています。ラットの実験では、発がんリスクが高い食事とクロロフィルを一緒に食べさせたところ、発がんリスクが下がったとの報告がありました。クロロフィルを与えることで、染色体異常の一種であるがんの発症予防ができるのではないかと考えられています。

また、近年の研究では、クロロフィルを加水分解した成分に口臭や体臭を抑える効果があることも分かってきました。[※2][※6]

■口臭・体臭予防

クロロフィルをアルカリで加水分解すると、水溶性のクロロフィリンになります。クロロフィリンは酸素を運搬する赤血球の「ポルフィリン」に似ていることから、酸素の供給を促進。そのため末梢神経まで酸素が行き渡り、乳酸の発生を抑えて刺激臭が出ないようにしてくれます。

また、クロロフィリンのマグネシウムを鉄や銅に置き換えた銅クロロフィリン・鉄クロロフィリンは消臭効果を持ち、口臭や腸内体臭を改善する作用が。最近ではその消臭効果が注目され、食用色素や歯磨き、口中清涼剤として活用されています。[※10]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

クロロフィルの特徴として、老廃物や有害なミネラルを体外に排出する作用があります[※2][※8]。マグネシウムを核として構成されているテトラピロール体にフィトールがくっついたクロロフィルは、体内に入ると分解。マグネシウム以外が腸を通って排出されます。

排出の際に老廃物と鉛やカドミウムなどの有害な金属を吸着し、一緒に体外へ[※2]。そのため、デトックス効果が得られます。加えて体内に溜まっているダイオキシンを排出する効果が期待できるとの研究結果も報告されています[※8]

また、活性酸素を除去する抗酸化作用で、細胞を傷つけることなく保つ効果を得られます[※6]。クロロフィルが活性酸素を除去することで細胞へのダメージを防ぎ、遺伝子を守ってくれるのです。

細胞に傷が付くとDNAが変質し、免疫不全やがんなどさまざまな問題を引き起こします。クロロフィルを摂ることでダメージが抑えられ、発がんリスクも下げることが可能です。

クロロフィルだけでなく、分解物も有効作用を持っています。クロロフィルは通常胃の中で分解されてマグネシウムが取れたフェオホルビドとなります。

このフェオホルビドはクロロフィルの誘導体で、事前にアルカリで加水分解することで消臭効果を持ったクロロフィリンに変換。

口臭や腸内体臭などを抑え、ニオイの元となるイオン成分を無害化してくれます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

クロロフィルはデトックス効果や抗酸化作用がある成分なので、だるさや疲れなどが溜まっている方は摂るべき成分といえます。

デトックス効果で老廃物を排出し、抗酸化作用で活性酸素を除去することによって、生活習慣病などのリスクが下がる可能性があります。

活性酸素はシミやたるみの原因にもなるため、美容に気を遣っている方も、摂取する価値はありそうです。

また、クロロフィルの分解物は口臭・体臭改善に役立つので、ニオイのコンプレックスで悩んでいる方はぜひ使ってみてください。

クロロフィルの摂取目安量・上限摂取量

クロロフィルの摂取目安量は、主元素であるマグネシウムの量で決まります。

食品摂取基準では通常の食品から摂取する際の上限量は定められていませんが、医薬品やサプリメントとして多量に摂取すると下痢や軟便を起こす可能性があります。

そのため、食事以外の摂取は1日350mgが耐容上限量となっています。

クロロフィルのエビデンス(科学的根拠)

クロロフィルの研究は多くの学会や研究者によって行われており、動物実験や臨床試験のデータも報告されています。この研究により、クロロフィルの効果・効能にも期待が高まってきているようです。

de Vogel Jらは、ラットに結腸がんを発生しやすくなるヘム鉄が多い赤身肉を食べさせ、症状の進行を確認する実験を行いました。

エサは赤身肉だけのものと、赤身肉の他にクロロフィル1.2mmol/kgまたはほうれん草(葉緑素 1.2mmol/kg 含有)を入れたものを用意。2種類のエサを別のラットにそれぞれ与え、2週間摂取させました。

その結果、クロロフィルを与えたラットには、与えていないラットに比べ、結腸細胞の傷が少なかったことが分かっています。このことから、結腸がんのリスク低減効果が示されました。[※7]

山下かなへらの行った実験では、高脂肪食を与えたラットにクロロフィル0.2%配合のエサを3週間摂取させ、血中コレステロールの推移を観察。終了時にはコレステロールの増加が抑えられたという結果が得られました。

同時に、肝臓中のコレステロールが増えにくくなったとの報告もあり、高コレステロール血症と生活習慣病の予防効果が期待されている成分です。[※8]

さらにクロロフィルの持つダイオキシン除去効果に関してのエビデンスも報告されています。

妊娠中の女性44名から採取した脂肪組織や母乳、臍帯血、胎盤から体内に存在するダイオキシン同族体の濃度を調査しました。

そのうち23名にクロロフィルを含むクロレラを摂取させ、効果を確認。その結果、母体からダイオキシン類が排出され、デトックス効果が得られたことがわかりました。

実験から、クロロフィルを多く含むクロレラには胎盤を通じたダイオキシン類の移行が抑制される可能性が示されています。[※9]

クロロフィルはさまざまな効果を持つことから、現在も研究が進められている成分です。今後も研究報告が増えることで、新たな効果が示唆される可能性があります。

研究のきっかけ(歴史・背景)

17世紀末にLeeuwenhoekが葉肉細胞に緑の物質を発見したことが、クロロフィル研究の始まりと考えられています。

1864年にはStokesが緑葉のクロロフィルが分光学的に2種類あることを発見[※1][※3]。この時見つかったクロロフィルが、現在クロロフィルa、クロロフィルbと呼ばれる物質です。

その後も研究は進み、1880年にHoppe-Seylerがクロロフィルの構造を解明。マグネシウムを核としており、基本骨格が血色素(ヘモグロビン)と酷似していることが示されました。

1915年にはWillstatterがクロロフィルの環状構造を明らかにし、ノーベル化学賞を受賞。1965年までにはクロロフィルのフィトール構造決定やクロロフィルaの全合成など多くの研究が進められました[※1][※3]

クロロフィルの物質研究は分子種の発見から化学的な全合成へと進化し、近年では光合成や光線力学療法などの研究も進んでいます[※1][※3]

多くの応用技術や加工物質などが開発され、現在は生活に役立つ成分として利用されるようになりました。

専門家の見解(監修者のコメント)

多様な研究で証明されていることから、医師や研究者もクロロフィルの効果を前向きに検討しているようです。

体臭の治療を行っている五味クリニックの五味院長は、体臭の改善にクロロフィルの分解物「クロロフィリン」が有効だとコメントしています。

「刺激臭にクロロフィリンが有効なのは、クロロフィリンがちょうど酸素を運搬する赤血球に含まれるポルフィリンという血色素に類似していることを利用したものです。
クロロフィリンはいわば「造血剤」として働き、酸素の供給を促進してくれるのです。抹消の組織に十分酸素が行き渡れば乳酸の発生が抑えられて、結果的にアルデヒド系の刺激臭の発生も減少するのです。」
(五味クリニック「クロロフィリンの腸内体臭への効果」より引用)[※10]

「クロロフィリンが、アミン類のような窒素化合物やメチルメルカプタンのような含硫化合物の消臭に有効であることが分かってきました。」
(五味クリニック「クロロフィリンの腸内体臭への効果」より引用)[※10]

クロロフィリンは脂溶性で吸収されにくいクロロフィルをアルカリで加水分解した成分で、水に溶けやすく吸収されやすいという特徴があります。

クロロフィリンを摂取することでアルデヒド系の臭いを減らせるほか、腸内のアミン類、メチルメルカプタンのようなにおい物質を無害化できるとのこと。また、五味院長のコメントでは口臭の改善についても触れられています。

「とくに「銅クロロフィリン」は、緑色が新鮮なため、ガム、あめ、キャンデーや野菜や果物の貯蔵品によく使用されます。ガムをかめば口臭が防げるのは、この銅クロロフィリンの消臭効果のためです。

最近では食用色素としてだけではなく、消臭効果を目的として歯磨きや口中清涼剤として使用されることもあります。」
(五味クリニック「クロロフィリンの腸内体臭への効果」より引用)[※10]

クロロフィリンの核であるマグネシウムを銅に置き換えた成分が「銅クロロフィリン」です。ガムやアメに含まれており、口内の消臭を助けてくれるのが特徴。

消臭効果以外にも殺菌効果を持つ[※10]ため、口内を清潔に保つためにも欠かせない成分と言えるでしょう。

クロロフィルを多く含む食べ物

クロロフィルは特に青菜や緑黄色野菜、海藻などに多く入っています。植物の葉が緑色に見えるのは、クロロフィルを多く含んでいるからです。

太陽光に当たるほど緑色が濃くなるため、緑色が濃い食べ物ほどクロロフィルを含んでいることが分かります。

クロロフィルは脂溶性の物質なので、油で炒めるとより体に吸収しやすくなります。摂取するときは調理方法に注意して、できるだけ効果を得られるようにしましょう。

相乗効果を発揮する成分

細胞の酸化を防ぐ効果があるクロロフィルは、同じ抗酸化作用を持つ成分と合わせて摂ることで、より高い効果を得られます[※11]。

活性酸素を除去しやすくなるため、細胞に加わるダメージを抑えることが可能。特にビタミンCはクロロフィルが多く含まれる野菜にも入っているので、野菜をしっかり摂ることでどちらも必要な量を補えます。

クロロフィルに副作用はあるのか

クロロフィルは抗酸化作用や脱臭作用を持つ優れた成分ですが、多量に摂取すると光過敏症を引き起こすことがあります[※9]

クロロフィルが体内で分解されて光を感じる器官を過敏に反応させると、日焼けや水疱、発疹が現れやすくなるのです。摂取して1~2日で顔や手に赤みが現れ、腫れたり痛みが出たりする[※9]のが特徴。

光過敏症を引き起こさないためにも、摂取量は適度に抑える必要があります。クロロフィルを摂りすぎてしまった場合は、日焼け止めや長袖の服など日光への対策を怠らないようにしましょう。