漢方薬局+C 小岩井 慎哉先生

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「漢方は治療術」効果を実感してもらえる漢方家でありたい

漢方薬局+C 小岩井 慎哉先生

漢方薬局+C 小岩井 慎哉先生

経歴

1980年生まれ。東京薬科大学薬学部卒業後、大手保険調剤薬局へ入社。6年半西洋医学の勉強と経験も積んだ後、学生の頃から志していた漢方家に転向すべく、埼玉県飯能市にある「漢方専門薬局 博濟」へ入社し、漢方家としての修行を重ねる。2013年10月、練馬にて独立し「漢方薬局+C」代表となる。現在は自らの漢方薬局で相談を受けるだけでなく、学生のための漢方講座で講師を務め、薬剤師対象の漢方スクールも運営している。

インタビュー

生まれつきのアトピーや喘息といった症状を漢方によって克服した経験から、漢方家を志したという小岩井先生。「漢方は治療術であり、適切な診断に基づく処方であれば効果が実感できるもの」と力強く断言します。先生のもとには「なんとなく不調」から「現在病院で治療中」の方までさまざまな相談者が訪れ、膨大な知識に基づいた的確なアドバイスと処方により健康を取り戻される方が後を絶ちません。

先生は大変お若いですが、先生がそもそも漢方家を志したきっかけを教えてください

私自身が生まれつきアトピー性皮膚炎や喘息を患っていました。子供の頃は特に喘息がひどく、西洋薬にお世話になっていました。しかし高校生になるとアトピーのことがとても気になるようになり、薬学部に入った後に、それまでずっと使用していたステロイドを一気にやめるいわゆる「脱ステ」を試みたのです。もちろんリバウンドが大変でした。サプリメントや温泉療法を始めとするあらゆる健康法を試みたのですが、なかなか良くなりませんでした。しかし漢方薬で明らかな改善が見られたのです。これがきっかけとなり、薬学部生の時にはすでに「漢方家になる」と決意していました。しかし薬学部は西洋医学が主体で、漢方を学ぶ機会は多くありません。少ないながらも学外の漢方ゼミに参加し、薬剤師になってからも本を買い勉強を続けました。もちろん今でも師匠の元で勉強を続けていますし永遠に続けます。今の私が使う補中益気湯と20年後の私が使う補中益気湯は違うものでなければならないと思うからです。また漢方の世界は実は漢方薬だけではありません。「湯液」「鍼灸」「導引」「食治」と4つの分野から成り立ち、この漢方薬局でやっていることは主に「湯液」ですので、まだまだ勉強することが尽きないのです。

漢方薬とは長く飲まないと効かない、というイメージがありますが、先生は効果を実感してもらうことを大切にしているのですね

漢方とは治療術です。江戸時代に蘭学(蘭方)が入ってくるまではこの治療術のみであらゆる症状疾病に対応していました。ですから基本的にはどんな症状にも対応できると私は思っています。もちろん現代において、西洋医学や西洋薬の得意なことはあります。急性心筋梗塞を起こしている患者さんに薬を煎じながら「ちょっと待ってくださいねー」なんて言ってられません。すぐ119番。救急車です。しかし漢方も治療術である以上、効果もあれば副作用も当然あるものです。外科的なアプローチが必要な症状は西洋医学の方が適していますが、病名のつきにくい症状や、原因が特定しづらいアレルギー性疾患や婦人科疾患、不定愁訴などは漢方の得意分野で、漢方で西洋医学の穴を埋めることができます。また、例えばがんや開腹の施術をした後、症状は落ち着いているのに感染症にかかりやすいとか、食欲が戻らないといった場合にも漢方で補填することができます。ですから健康な人がなんとなく漢方薬を飲む必要はありません。カラダに良い美味しいごはんを食べてください。主訴(一番辛い症状)のある人が適切な漢方薬の診断と処方を受けることができれば、効果は実感できるはずです。

他にも漢方が得意とすることとして、どんなものがあるのでしょうか

最近ですと整形外科の分野でも漢方で役に立てる症例が多くなっています。脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、坐骨神経痛は、西洋医学の場合痛み止めや注射での治療が主ですが、漢方薬を加えることで痛みが格段に減るという事例を多く経験しています。その他メニエール病や、女性の方に多いむくみ、頭痛など低気圧の接近で起こる症状は漢方が得意としています。

先生が相談を受ける上で大切にされていることは何でしょうか

処方をするときも相談を受けるときも、できるだけシンプルに、引き算で考えるようにしています。ファッションや建築などのデザインも人を本当に魅了する仕事はシンプルですよね。食事や睡眠といった基本的な部分を疎かにしていなければ、本来何かを特別に加える必要はありません。むしろ食事に関して言えば現代人は食べ過ぎですから、必要最低限だけにしたほうがいいくらいです。漢方も必要のある人に必要な分だけ処方する、極力シンプルに処方したほうが効果も現れやすいのです。また、新規の相談者が「頭痛」を主訴として相談に来た場合、いきなり漢方だけで引き受けることはしません。頭痛の原因が梗塞や腫瘍である場合もあります。やはりきちんと病院で検査を受けて、異常がないかは確認します。患者さんのため重大な疾患の発見を遅らせることだけは避けたいですから。検査で異常が見つからないのに頭痛の問題がある、という場合に漢方は効力を発揮します。両方を上手に使ってもらえるといいですね。

最後に読者にメッセージをお願いします

先日、大学生の男の子がニキビの相談にやってきました。漢方でできることもありますが、気になったのは彼から笑顔が消えていたことでした。ニキビがあるから笑顔が消えるのか、笑顔が消えるからニキビになりやすいのか、どちらもあると思いますが、現代人の不調の原因の一つに「笑えない」「笑わない」「笑が少ない」問題があると思います。笑いがいかに健康に有効かはよく知られていると思いますが、精神疾患が増えている現実も含め、笑いが生活から消えてしまっている人が少なくありません。健康の基本は食事と睡眠、そして楽しむことにあります。その上で漢方も上手に取り入れていただければと思います。

基本情報

  • 所属漢方薬局+C
  • 所在地東京都練馬区練馬1丁目33−4
  • 最寄り駅練馬駅
  • TEL03-6915-8352
  • ホームページhttp://www.kampo-plusc.com/