医科歯科連携診療普及協会 宮澤 賢史先生

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分子栄養学による根本治療を提案

医科歯科連携診療普及協会 会長 宮澤 賢史先生

経歴

東京医科大学卒業、東京医科大学大学院卒、医学博士、高濃度ビタミンC点滴療法学会 理事
分子栄養学実践講座主催
医科歯科連携診療普及協会 会長
2004年より分子整合栄養医学を医療に取り入れる。2007年度に高濃度ビタミンC研究会を設立。現在は宮澤医院などで分子栄養学医療を行う傍ら、分子栄養学実践講座、分子栄養学指導・セミナー・学術集会・勉強会などを多数開催し、その実践と普及に務めている。

インタビュー

先生のもとにはなかなか治らない不調や原因不明の慢性疾患などでお悩みの方が足を運ぶ。分子栄養学による治療とは体内にもともと存在する自然の物質を使用するだけでなく、摂取した栄養素が体内で効果的に働く理由、あるいは働かない理由をきちんと学ぶことでもあるという。対処治療で終わらせない「根本治療」を目指すスペシャリストだ。

先生は分子栄養学を実践されていますが
それはどういう手法で、どのような症状に有効なのですか?

私が診る症状は多岐に渡りますが、一番多く遭遇するのは「ミトコンドリア病」です。私たちの細胞内ではミトコンドリアが働いていますが、正常に働かせるために必要な栄養素が足りていない人が多く、それがいわゆる「疲労」の原因です。脳が疲労すれば鬱症状、膵臓が疲労すれば糖尿病、臓器別に病院に行けば精神科・内科と分けられますが、細胞レベルでは「ミトコンドリア病」と一括りにできます。細胞の働きはミトコンドリアを中心とした分子構造に依存しています。分子栄養学では、体内に存在している栄養素を最適量にすることで細胞の分子構造を変化させるのです。

分子栄養学と通常の栄養学の違いを教えてください。
また実際の治療はどのように進められるのでしょうか。

普段の食生活や生活習慣から足りていない栄養素を補うというのが一般的なサプリメントの考え方であり栄養学の考え方です。分子栄養学の考え方はそれとは異なり、栄養素やサプリメントを有効な治療手段の一つとして捉えています。生活習慣や遺伝的要素で正常に働かなくなった細胞分子を整合させるために栄養素やサプリメントを薬同等に使用するのです。

患者さんにはまず検査で自分の健康状態を正確に把握してもらいます。血液検査だけでなく体内に蓄積した重金属の量や腸内環境、ホルモンバランス等も調べます。しかしその結果で足りないとわかった栄養素やサプリメントをいきなり処方することはほとんどありません。それよりも栄養を摂っても体内で吸収されない、あるいは消化を阻害する原因を見つけることが大切なのです。

必要な栄養素だから摂ればいいという簡単な話ではないのですね。

食事や生活習慣にも気遣い、例えば医師から薦められたサプリメントも摂っているのになかなか改善されないという人が多いですが、その原因は「栄養の吸収と利用を阻害する要因」を掴めていないことがほとんどです。例えば日本人の多くは腸が長いことや胃酸の分泌が弱いこと、あるいは肉類の食べ過ぎにより腸内環境が悪化していることなどが原因で、タンパク質やミネラルの吸収が低下しています。腸内環境、つまり消化吸収のメカニズムを整え、栄養吸収を阻害する原因を取り去ることで体調が改善し、最終的にサプリメントが不要になる患者さんも少なくありません。

患者さんが栄養療法をする場合、何に気をつければよいでしょう?

統合医療や補完代替医療が普及し、栄養療法やサプリメント外来を行う医療機関は増えていますが、治療の場合、患者さんはゴールを頭に入れておく必要があります。

つまり「これをいつまで飲む必要があるのですか?」と医師に確認することです。治療の場合、消化吸収のメカニズムを整え、最終的にサプリメントも不要になることが理想ですが、ゴールを見据えなければ、栄養療法やサプリメントという有効な手段も結局薬と同じように「飲み続けなければいけない」という状況になりかねません。

最後に患者さんと読者へメッセージをお願いします。

健康状態や消化吸収のメカニズムには個人差があります。流行の食事療法や健康法を真似しても自分に合わなければ無意味ですし、間違った健康法や食事療法をしている人が多いのです。特に検査で足りないと指摘された栄養素=摂るべき栄養素とは限りません。足りない栄養素を補えばいいという簡単な話ではありませんし、「何を食べるべきか」よりも「何を食べないようにするか」という引き算で健康になることも多いのです。簡単な話ではないからこそ、一人でも多くの人にきちんと勉強をしてもらいたいと考え勉強会を開催しています。サプリメントという効率のいい道具を有効に活用するためには消化吸収の土壌を整え、遺伝的要素も含めて自分の状態を把握することが非常に重要です。

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