臨床栄養実践協会 足立 香代子先生

健康情報を提供する専門家一覧

管理栄養士は人を救う

一般社団法人臨床栄養実践協会 理事長 足立香代子先生

経歴

1968年中京短期大学家政科食物栄養専攻卒業後、医療法人病院を経て、1985年からせんぽ東京高輪病院に勤務し、2014年退職。現在、一般社団法人臨床栄養実践協会理事を務める。理事日本臨床栄養学会・日本肥満治療学会・NPO法人PEGドクターズネットワーク・NPO法人創傷治癒センターの理事を兼任。

インタビュー

長年に渡り医療現場にて"食"の面から患者をサポートしてきた管理栄養士の第一人者。不味いと思われることの多い病院食のイメージを覆したそのレシピは入院患者の口コミで評判になるほど。現在、臨床・福祉現場で栄養・食事管理を行う上での実践的技術を習得するための教育に従事し、後進の育成に当たっている。

管理栄養士という道に進まれたきっかけは何でしょうか。

きっかけは単純に料理が好きという理由でしたが、実際に栄養士の世界に飛び込んでみると献立を作って終わりという状況に失望しやる気を失いかけていました。そんな時、ある留学生ドクターに「栄養士の仕事ってカッコイイね。人を救える仕事だ。」という言葉掛けられたのです。しかし、当時の自分にはその実感も無く、現場にも人を救うという気持ちで働いている栄養士は皆無で、その言葉とのギャップに苦悩しておりました。そんな折に研修で行ったアメリカの現場の栄養士の姿に衝撃を受けたのです。そこで働いている栄養士は皆、自信を持って医師や看護師と渡り合っている。そして自信を持って働いている姿がとにかく美しかった。留学中のドクターに掛けられた言葉とアメリカの栄養士のようになりたいという目標を胸に当時の挫折を乗り越えて今があります。

医療現場で患者の食事を管理されてきた先生が
意識されていたことはどのようなことでしょうか。

食事とは決して栄養素を食べる訳ではありません。誰もがレストランに入って栄養素が詰まった宇宙食を食べたいとは思わないですよね。見た目に美しいもの食べることは文化です。これはすごく大事なことで、見た目が良いことで食欲が促され結果として栄養素が満たせるのです。また、食事には治療という効果もありますので、当然ここも意識する必要があります。

そして、何より食事は人が作るものです。その為、食に対する意識を持った人を繋いでいく必要があります。具合が悪くて食べられない患者がいたらどうするのか?それには知恵が必要です。患者ひとりひとりの状態に合わせて対応する為の知恵です。そして、そのベースには「人を救いたい」という想いがなければなりません。この想いを人を通じて繋いでいくことが私の使命だと考えておりました。

現代人が食事を気にする動機にダイエットがありますが、
ダイエットをする際に先生が気を付けた方が良いと考えられていることはありますか。

ダイエットは肥満の域にあるのであればすべきですが、痩せすぎると骨粗しょう症などの原因となってしまいます。最近耳にする炭水化物を制限は理にかなっていますが、全く主食をとらないなどと極端なことをすると脳が働きにくくなります。油はオリーブ油や脂肪の多い魚などの質に配慮すれば、腹持ちが良いので、むしろダイエットしやすいのです。コツは、主食を今より減らし、「主菜」「副菜」を揃えたバランスの良い食事です。

"食"のプロから見て、サプリメントとはどのようなものと考えますか。

文科省から出ている食品成分表は食品が加工されていない状態の数値を示しています。しかし、ほとんどの食品は煮たり焼いたりという加工をすると栄養価が落ちます。さらに野菜などは昔に比べて含有される栄養量自体が少なくなっていることもあり、食品成分表を元に厚労省の食事摂取基準を満たそうと栄養計算された食事から、その数値の栄養が取れることはありません。

つまり、栄養計算された食事と言ってもその根本は昔ながらの栄養をたっぷり含んだ素材を全て加工されていない生の状態で食べるという前提で栄養量が算出されているのです。そうすると、計算されていると思われている食事でさえ実際には充分な栄養が取れていないので、一般の方々の食事は圧倒的に栄養が不足していると考えられます。それを補う為にサプリメントを利用することは必要だと思います。

先生は今後どのような活動をされていくのでしょうか。

留学生ドクターから掛けられた言葉、「人を救う」が管理栄養士としての永遠のテーマです。この想いを後進に繋いでいくことが一番の使命だと考えており、2014年の1月に一般社団法人臨床栄養実践協会を設立しました。ここでは、臨床・福祉現場で栄養・食事管理を行う上での実践的技術を習得するための教育を目的とし活動をしております。座学で得た知識だけでは現場では通用しません。状況に応じてその知識を基に思考し伝えることが必要です。プロの管理栄養士として医師や看護師を説得できるのか。出来ないのは本人の実力不足です。しかし、「人を救う」という想いがあれば人は努力します。それに気付いてもらえるように人を集めて、出来るようにしてあげる。想いを繋いで人を育てていくことが私のライフワークです。

基本情報

著書